キヤノンマーケティングジャパンは、場所や周囲の環境にとらわれず快適な会話を可能にすることをコンセプトにした、今までにない新たなお役立ちガジェットの発売を開始した。
その名も、減音デバイス「Privacy Talk(プライバシートーク)」だ。
現在(10月31日現在)、応援購入サイト「Makuake」で注文を受け付け中で、価格は1万9900円~。決して安くはない金額だが、何とも興味深いガジェット。そもそも「場所や周囲の環境にとらわれず快適な会話を可能にする」とはどういうことなのか。多くの読者がおそらく気になるであろうポイントをレビューしてみたい。
そもそも「減音デバイス」とは何か
「Privacy Talk」は、イヤホン・マイクが一体となったオンラインコミュニケーションシーンでの使用を想定したマスク型のデバイスだ。
このデバイスを装着することで可能にする「減音」効果には次の二種類がある。「自分の声を周囲の人たちに聞こえにくくする」減音と「マイクが周囲の雑音を拾いにくくする」減音だ。
つまり音漏れ対策と雑音対策が同時にできるというわけだ。
それぞれの減音効果は後述するが、二種類の減音を可能にしているのは「Privacy Talk」の独自構造おかげだ。
「Privacy Talk」の付属品一覧。減音のカギは左上の本体に隠されている
本体は斜め後ろから見るとこんな感じ
まず「Privacy Talk」の本体は、装着すると口元を物理的に塞ぎ空気の流れを妨げる構造になっている。肌との接地部分にはシリコン素材が使われており、空気の流れを極力遮断する。音は空気の振動だ。空気の流れが妨げられると音は伝わらない。本体の装着構造により、まず第一段階目の減音が行なわれている。
そして、二段階目の減音が、本体の内部に隠された構造により行なわれている。口元から漏れ出る空気をシャットアウトすることで、声は主に「Privacy Talk」本体を通して外に漏れ出ることになる。そこで生きるのが「音響メタマテリアル技術」である。
空気の移動距離が長くなれば音は小さくなる
内部を迷路のように入り組んだ構造により、物理的に空気の移動距離を長くすることで減音する。
密閉と距離、なんとも物理的な方法による減音効果が得られているとは驚きである。
なお、マスク型のカバーは、あくまで「マスクをしている人」風に見せるためのカバーでありマスクとして使用することは推奨されていない。
装着感、減音効果の検証
1.装着感
「Privacy Talk」の重さは188g。先日発売された「iPhone 15 Pro」の重さが187gなので、口元にiPhone一台分を装着しているのとほぼ同じということになる。
スペックだけ聞いた段階で「絶対に重いに違いない」と予想していたが、装着してみるとあら不思議。重さはそれほど気にならなかった。マスクカバーの耳ひもの長さを調整すると、ずり落ちてくる感じもなく、この点に関してはいい意味で予想外だった。
しかし、気になったのは装着時の密閉感だ。本体にファンが内蔵され空気の流れがあるので息苦しさはなかったが、口元が密閉されている違和感、シリコン素材と肌が蒸れる感じは払拭されるわけではなく、この点は残念なポイントだった。
2.「自分の声を周囲の人たちに聞こえにくくする」減音効果について
装着感はもちろんだが、やはり一番気になるのは減音効果だろう。「自分の声の減音」は、カフェやレストランでのオンライン会議、あるいは会議室が取れず自席でオンライン会議をしないといけないシーンなどが想定される。
公式が想定する「Privacy Talk」使用シーンその1
例えば、カフェの座席であれば隣の席との距離が1mほどしか離れていないことも多く、「自分の声の減音」に求めるハードルは高い。
結論から言うと、「1m隣の人には、会話をしていることには気付かれるが会話内容は聞き取られない」という評価になった。点数にすると70点といったところだろうか。
「自分の声の減音」効果は「ある」。それは間違いない。1m程離れた距離からだと、もごもごとした音が聞こえるのみで、会話内容が悟られることはまずないだろう。
しかし、カフェなどではそもそもオンライン会議や通話を禁止している店舗も多く、そういった店でバレずにオンライン会議ができる程ではなく、また、禁止されていない店でも「周囲の人に迷惑かけたくない」という不安は完全には解消されないレベルだった。「会議内容を周囲に知られたくない」という点のみを求めるなら、及第点だろうか。
この距離で試してみたが会話を聞き取ることはできなかった
3. 「マイクが周囲の音を拾いにくくする」減音効果について
公式が想定する「Privacy Talk」使用シーンその2
一方で、「マイクが周囲の音を拾いにくくする」減音効果についてはほぼ100点。周囲が賑やかな環境でも、オンライン会議の相手に不快感を与えることなく会議を進めることができるだろう。
しかし、オンライン会議用のヘッドセットやマイクなどにはノイズキャンセリング機能が基本搭載されている点を考えると、「自分の声の減音」効果と合わせて、必要かどうか判断するのがいいのではないだろうか。
4.総論
総合評価としては75点といったところだが、最後に一点、どうしても残念に感じる点を述べておく。それは「販売時期」だ。オンライン会議の需要が急増した2020年後半~2021年に発売されていればベストヒット商品になったかもしれないのに…と思わざるを得ない。
デバイスとしての面白さや斬新さ、「減音デバイス」としてのスペックなど悪くはないものがある。もしかしたら個人用としてではなく、企業向けにオンライン会議の備品として訴求した方が、需要があるかもしれない。
Makuakeの「Privacy Talk」販売ページ