LIFULL HOME’S総研チーフアナリスト 中山登志朗氏 考察
賃貸住宅の賃料は、主に交通利便性(駅までの距離や市街地中心部までの所要時間)と生活利便性(スーパーなど生活利便施設の充実度)、居住快適性(居室の過ごしやすさや通風・日照・騒音)、安全性(防犯と防災の両面)などで決まっています。
なかでも賃貸住宅では時間を効率的に使いたいという意向が強く、職住が近接している交通利便性の高いエリアは賃料が高くなりますが、その次に重視されるのが生活利便性と居住快適性です。いずれも楽しく快適に賃貸ライフを送りたいと考えた時に、負担となる毎日の家事労働を軽減してくれる設備が物件に予め備わっていることは訴求力が高く、賃料へのアドバンテージにもなります。
今回のランキングは、賃貸物件の設備や仕様について、特に水回りでの違いがどの程度賃料に影響を及ぼしているのかを明らかにした調査で、物件のグレード感にも大きな影響を与えることから、賃料も設備や仕様の有無によって格差が発生していることが数字で示される結果となりました。
キッチンでは「ディスポーザー」がトップで、賃料はあれば14万円、条件なし相場は7万円とちょうど2倍です。「ディスポーザー」が設置されている物件は分譲仕様であることが多く、ランキングの2位に登場する「食器洗い乾燥機」も高額物件にはほぼ標準の設備です。
これらは単に便利であるだけでなく、設置されているかどうかで物件のグレード感が容易にイメージできることから、ステータス感を高めていることも差額を拡げる一因です。ただし、IHコンロや備え付け冷蔵庫は不評で、電気とガスを使い分けたい、自分の必要なサイズの冷蔵庫を置きたいという要望と設備がマッチしない代表例です。
また、バス・トイレでは「追焚機能」および「浴室TV」の有無が賃料水準に影響していることがわかりました。いずれも長風呂するには欠かせない設備・機能ですが、充実したバスタイムを過ごすには浴槽も大きくなければなりません。「追焚機能」や「浴室TV」はユニットバスのサイズが1418(1400mm✕1800mm)以上のものに付属することが多いので、物件の間取りもファミリータイプがほとんどです。TVだけでなく音響システムや節水機能付きシャワーヘッドが装備されるケースも増えていますから、これから設備・仕様の違いで家賃の差額はさらに広がる可能性が高いと考えられます。
<調査概要>
対象エリア:一都三県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)
対象物件:LIFULL HOME’Sに掲載された築40年以内、駅徒歩20分以内、15平米以上40平米未満の居住用賃貸物件
対象期間: 2022年10月~2023年9月
家賃:月額賃料の中央値
出典元:LIFULL HOME’S
構成/こじへい