■連載/阿部純子のトレンド探検隊
アパレル・雑貨の通販事業のベルーナがプロパティ事業を手掛ける理由とは
通販事業をメインとした「ベルーナ」は、通信販売とそれに付随する多種なサービスで培ってきた膨大なデータベースを中心に、経営資源を駆使した多角的に事業を展開することで成長してきた。
第五次経営計画(2023年3月期~2025年3月期)の3本柱のひとつである「プロパティ事業」では、オフィスビル、商業施設などの賃貸、バリューアップ型の不動産再生・開発を手がける不動産事業、ホテル事業を展開している。2023年3月期のプロパティ事業の連結売上高は2123億円。収益力の高い国内賃貸事業の安定成長と、アフターコロナにおけるホテル事業の大幅成長を見通して、2025年3月期には売上高220億円、営業利益31億円を目指している。
ホテル事業のひとつとして、銀座7丁目の銀座コリドー街に、4月から順次開業した複合商業施設「GRANBELL SQUARE(グランベルスクエア)」が10月に全館開業となった。
グルメ・温浴・宿泊・エンターテインメントをカバーする「滞在型感動創出拠点」として、ホテル、レストラン、サウナ施設のほか、シンガポールのナイトライフブランド「Zouk」の日本初進出となる「Zouk Tokyo」がオープンした。
通販事業、コスメ、健康食品、ナース関連、呉服関連、そしてホテル展開と様々な事業を手掛けるベルーナ代表取締役社長・安野清氏が、「GRANBELL SQUARE」の狙いや展望などについて語った。
――「GRANBELL SQUARE」オープンまでの経緯
「ホテルを中心にしたエンターテインメント施設を作る計画で、10年ほど前に土地を取得。高さ40m、10階までの高さ制限があったことから、土地を有効活用するため地下25m、6階ビルに相当する高さを確保し地下3階にしました。元あったビル3棟をすべて解体、地下の構築、周辺整備する時間などで工期は合計3年半を要しました。
投資額は250億円で、おおよそで土地が150億円、建物が100億円です。10年前で取得額が安かったということもありますし、また建築費も契約したのが7年前ですので、今作るよりはだいぶ抑えられたと思います」
――ナイトクラブを作った理由は
「六本木で『ZEUS』(現在は閉館)というナイトクラブを運営していたことがあり、ある意味、予行練習的にここでノウハウを築きまして、銀座という場所柄インバウンドも多いことから、シンガポールのZouk社とグランベルホテルとの合弁で、日本一のナイトライフにしようと取り組むことになりました。GMやビットマネージャーはZoukが入る予定です。
GRANBELL SQUAREはあくまでもホテルが中心で、ナイトクラブは付随施設としての位置づけですが、複合商業施設はハードだけでなくソフトをいかに充実させるかということが非常に重要ポイントですから、ナイトクラブや温浴施設、レストランなどソフトを充実させる
“館に魂を入れる”ことで、活力のある施設に作り上げたいと考えています」
――ホテル事業が通販事業に及ぼすシナジー効果は
「本業の通販のほか、サプリ、コスメ、ナース関連、グルメといろいろな事業をやっていますが、今までの経験だとあまりシナジーは関係ないというのが正直なところです。サプリやコスメはそれを目的としたお客様がいて、通販のお客様がついでに買うということはあまり多くはありません。シナジーを期待してしまってもうまくいかないので、各事業は互いに別物だと考えています。
私はビジネスの上では80点ならば良いと考えていまして、100点までは望んでいません。80点レベルのビジネスでどのように安定的に続けられるかということ重視しており、80点のレベルでしっかりと利益が上がれば良いと考えています」
――通販の会社がプロパティ事業に取り組む理由は
「ベルーナがホテル事業を初めて30年ほどになります。現在は海外も含めて展開しています。もともとホテル経営なんてまったく経験や知見のない素人でしたが、最初からうまくいってしまったことで今も続いています(笑)。
様々な事業を展開していますが、新しい事業を展開する時は経験がないと難しいのではないか?と考えずに、誰でもできるんじゃないかという発想がいつもスタート台にあります。専門的な知識を持つプロはコンサルとなど外部に入れるだけで、実質の運営は自分たちですべてをやっていくというのが一番良い形だと今までの経験で学びました。今後の新規事業もこのような形で進めていきたいと思っています」