宅配ボックスと消防設備
正直、この文言を読んでますます悩ましくなってしまったのは筆者だけだろうか?
筆者はライターとして、様々な製品を取り寄せてレビュー記事を書いている。中にはそれなりに大きな製品もあるのだが、そうしたものを入れられるだけの宅配ボックスとなるとやはり共用部分に設置できる大きさではなくなる。
なお、筆者は公営団地住まいである。
結局は団地を管理する組合や静岡市と会談の場を設けなければならないのだが、それ以外にも筆者がやるべきことはある。消防設備の位置の把握だ。
繰り返しの話になってしまうが、人命に関わることだから敢えてしつこく書かなければならない。
上述の資料『置き配の現状と実施に向けたポイント』にも、こう書かれている。
※消防法との関連では、「(略)廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が存置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。」(消防法第8条の2の4)ことを踏まえ、適切に管理する必要がある。なお、共用部分に、宅配物・生協配送・牛乳配達など、避難の支障とならない少量または小規模の私物を暫定的に置く場合は、長期放置や大量・乱雑な放置等を除き、社会通念上、法的問題にはならないと考えられる。
(置き配の現状と実施に向けたポイント-国土交通省)
宅配ボックスのせいで非常時の避難を妨げることがあってはならないというわけで、それを考慮すると「筆者はガジェットライターだから大きく重い宅配ボックスを共用部分に設置したい」というわけにはいかない。宅配ボックスのせいで消火器を取り出せない、ということになれば一大事である。
政府の動き
10月6日、岸田文雄首相は物流の人手不足問題に対応するための「物流革新緊急パッケージ」を了承した。
これも内閣官房がPDF資料を公開しているから、早速読んでみよう。
「宅配の再配達率の半減に向けた緊急的な取組」として、荷物のコンビニ受け取りや「ゆとりある配送日時の指定等」を選んだ利用者に対してポイントを還元するという実証実験を行うとしている。この中に置き配も含まれているのは確実だろう。
しかし、ここまで書いたような「集合住宅の共用部分の利活用」についてもっと踏み込んだ話をするべきだったのでは……というのが筆者の私見である。
このあたりで管理側や他の住人との摩擦(と、それに起因するトラブル)が絶対に発生するからだ。
配送業者の負担を軽減し、利用者にとっても利便性をもたらす置き配だが、その実現にはいくつかの問題も立ちはだかっているようだ。
【参考】
マンション標準管理規約(単棟型)-国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001417735.pdf
置き配の現状と実施に向けたポイント-国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001335985.pdf
物流革新緊急パッケージ(案)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/dai3/siryou.pdf
取材・文/澤田真一