「置き配」は、配送業者の負担を軽減する上でも重要な手段である。
つまりこれは「再配達の削減」という意味合いが非常に強く、配送業界の人手不足に対応するものでもある。が、置き配は結果として利用者にとっての利便性を向上させる効果も持ち合わせている。筆者自身も含めて、すぐにでも置き配に対応したいところ。
ただし、まったく問題がないわけでもない。特に、住まいがデフォルトの宅配ボックスがないアパートやマンション、公営団地等の集合住宅だったら……?
集合住宅の共用部分は広くない!
アパートやマンションの廊下、即ち「共用部分」には基本的に物を置いてはいけない。
それは単に他の住人にとって邪魔になるということと、消火器や火災報知設備が共用部分に置かれた物のために使えなくなることを避けるためだ。決して疎かにはできず、「逃げ道が物で塞がれていた」せいで火災に巻き込まれて落命した……ということすらある。
が、だからといって集合住宅の共用部分は宅配ボックスを設置できるほどスペースに恵まれているというわけでもない。いや、高級マンションであれば十分に対応できるだろうが、ごくごく庶民的なレベルのアパートであれば他の住民に叱られてしまう可能性も。
さぁ、どうする!?
宅配ボックスは「例外的」
実はこのあたりは国土交通省で数年前から議論されている。
2021年に改正されたマンション標準管理規約(単棟型)の新旧対照表があるので、それを見てみよう。ここにリンクのPDF資料の12ページ目である。
④専用使用部分でない共用部分に物品を置くことは原則として認められないが、宅配ボックスが無い場合等、例外的に共用部分への置き配を認める場合には、長期間の放置や大量・乱雑な放置等により避難の支障とならないよう留意する必要がある。
(マンション標準管理規約(単棟型)-国土交通省)
個々のマンションにもよるが、管理規約の雛形となるものに以上の文章が加えられたのだ。
「宅配ボックスが無い場合等、例外的に共用部分への置き配を認める場合には」という部分がいささか不安でもある。つまり、宅配ボックスの設置はあくまでデフォルトのボックスがない場合の「例外的」な措置なのだ。このあたりの解釈で揉めそうな感じすら漂う。
国交省が公開している別のPDF資料『置き配の現状と実施に向けたポイント』によると、
玄関前などマンション共用部分の利用において紛争を回避するため、買主たる住民は、管理組合により決定するマンション共用部分に関する使用細則等における置き配の運用方法(置き配の実施場所、一定期間放置されたものの扱い、オートロックマンションに運送人が入るためのオートロック解錠システムの活用等。以下同じ)について事前に確認することが望ましい。
(置き配の現状と実施に向けたポイント-国土交通省)
と、ある。要は集合住宅の住民が宅配ボックスを共用部分に設置する場合、まずは管理組合と話し合うようにという意味だろう。