米国では成人の1型糖尿病患者の3分の1以上が30歳過ぎまで病型を診断されていない、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学大学院研究チーム報告
2023.11.13成人の1型糖尿病患者の3分の1以上が30歳過ぎまで病型を診断されていない
米国では、成人の1型糖尿病患者の10人中4人近くが、30歳を過ぎるまで、糖尿病の病型が1型であると診断されていないという実態が報告された。
ただし研究者らは、「明らかになったこの結果は、1型糖尿病の発症パターンが多様であることを意味するものであって、いつまでも診断されずにいる1型患者が多数存在するというわけではない」とも述べている。
米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学大学院のMichael Fang氏らによるこの研究の結果は、「Annals of Internal Medicine」に2023年9月26日、レターとして報告された。同氏は、「この結果は多くの臨床医にとって驚嘆に値するだろう」と述べている。
1型糖尿病は、免疫システムの暴走によって自分自身の体に対して攻撃が生じた結果、発症すると考えられており、このような発症原因は、より一般的な病型である2型糖尿病と大きく異なる。
2型糖尿病の原因には生活習慣関連因子の占める割合が大きく、より具体的には、過体重や肥満によって生じるインスリン抵抗性のために高血糖を呈することが多い。
米疾病対策センター(CDC)は、米国での全糖尿病患者のうち1型糖尿病はわずか約5~10%程度であるとし、また1型糖尿病の明確なリスク因子は特定できていないものの、家族歴の存在は一定のリスクを示していると解説している。
1型糖尿病はどの年齢でも発症する可能性があるが、一般的には小児期や思春期、若年成人期での発症が多いというコンセンサスがある。
しかしFang氏らの今回の研究報告は、そのような理解が誤りである可能性を示している。1型糖尿病患者の半数以上が、20歳以降に発症していると考えられるという。
Fang氏らは、2016~2022年(2018年は除く)の米国国民健康面接調査(NHIS)のデータを用いて、950人近くの成人(18歳以上)1型糖尿病患者の診断時年齢を調べた。
NHIS調査時の平均年齢は49歳で、約4分の3を白人が占めていた。診断時の年齢の中央値は24歳であり、これは全体の半数は24歳以上になってから診断されていたことを意味する。
また、全体の57%は20歳以降に1型糖尿病と診断され、37%は30歳以降、22%は40歳以降に診断されていた。
性別で比較した場合、男性は女性よりも遅く診断されていることが多かった(診断時年齢の中央値が女性は22歳で男性は27歳)。
人種/民族で比較した場合は、非ヒスパニック系白人は診断時年齢の中央値が21歳であるのに対して、マイノリティーでは26~30歳と、やや高齢の範囲に分布していた。
これらの結果からFang氏は、「1型糖尿病は一般的に小児期に発症すると考えられているが、それほど単純なものではなく、発症の時期は幅広い年齢層に分布している可能性がある」と述べている。
1型糖尿病の場合、基本的には生存のためにインスリン療法が必須とされる。ただしCDCによると、そのような1型糖尿病であっても、発症後の初期には症状が軽度なこともあり、数カ月、場合によっては数年間も1型だと気付かれないこともあるとしている。
また現時点では、糖尿病を新規発症した患者全員に対して、糖尿病の病型を診断するための検査を行うような推奨はされていない。
本研究には関与していない、米デューク大学マーゴリス医療政策センターのCaroline Sloan氏は、「多くの臨床医は、成人発症の糖尿病であれば1型糖尿病の可能性は低いと考える。しかし実際はそうとは言えないことが本研究から明確になった」と述べている。
また同氏は、「これは大きな問題である」とし、その理由を「1型糖尿病と2型糖尿病では、治療内容や患者への指導・情報提供内容が異なり、さらに、治療に当たる医師の変更を要することもあるからだ。発症後に行われる治療次第で、患者のその後の血糖コントロールに差が生じてしまうこともあり得る」と解説。
その上で、「成人発症の糖尿病であっても、診断時に糖尿病の病型まで把握可能な検査を行うことが重要ではないか」と提言している。(HealthDay News 2023年9月28日)
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Abstract/Full Text
https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M23-1707
構成/DIME編集部