犬の老化パターンは体のサイズにより異なる
加齢に伴い生じる犬の行動面や認知面の機能低下のパターンは、体のサイズにより異なるようだ。犬の行動に関わる機能が低下し始める年齢は、体重が30kg以上の大型犬では7〜8歳であるのに対し、より小型の犬では10〜11歳であるが、低下速度は後者の方が前者よりも速いことが、ハンガリーの研究で明らかにされた。
エトヴェシュ・ロラーンド大学(ハンガリー)でシニア・ファミリードッグ・プロジェクトに関わっているBorbála Turcsán氏とEnikő Kubinyi氏によるこの研究の詳細は、「GeroScience」に2023年9月23日掲載された。
犬の平均寿命は、犬種によって最大で2倍以上の開きがある。また一般に、純血種の犬の方が雑種犬よりも短命なことも知られている。
しかし、平均寿命と、行動や認知に関わる機能の加齢による低下との関連について判明していることはほとんどない。
Turcsán氏らは、1万5,000匹以上の犬のデータを収集し、さまざまな行動上の特徴と認知機能障害の有病率が、時間の経過に伴いどのように変化するかの評価を行った。
具体的には、行動や認知に関わる機能に変化が現れ始める年齢、それらの変化の進行速度、さらには犬の体のサイズ、頭部の形状、純血種/雑種などを調べ、これらの因子と加齢に伴う変化との関連について検討した。
犬の体のサイズは、トイ< 6.5kg、ミニチュア6.5〜< 9kg、中型犬(小)9〜<15kg、中型犬(大)15〜<30kg、大型犬30〜<40kg、超大型犬>40kgの6群に分類した。
その結果、犬では10歳半頃から行動に関わるさまざまな機能が低下し始めるものの、低下が始まる年齢や低下速度は体のサイズにより異なることが明らかになった。
例えば、体重が30kg以上の大型犬では、行動に関わる機能低下がより小型の犬よりも2〜3歳早く現れ始めるが、低下速度は小型の犬よりも緩徐であった。
この点についてTurcsán氏は、「大型犬ではより小型の犬に比べ、比較的若い年齢で肉体的な衰えが現れ、健康問題が蓄積し、感覚機能も低下するため、認知機能に低下が見られるはるか前に、老犬らしい行動を見せるようになる」と説明する。
一方、体重が6.5kg未満の最も小型の犬(トイ)では、老齢期の認知機能障害の有病率が、体重が40kgを超える超大型犬の4倍以上高かった。
研究グループは、「この結果は、大型犬の平均寿命は相対的に短いが、認知機能低下の程度も小さいとの説を裏付けるものだ」との見方を示している。さらに、グレイハウンドのような長頭種(鼻が長い)の犬は中頭種や短頭種の犬よりも、さらに純血種の犬は雑種犬よりも、老齢期に認知機能障害を発症するリスクが高いことも明らかになった。
このほか、興味深いことに、飼い主は犬の体のサイズや純血種/雑種に関係なく、6歳頃になると自分の犬が「歳を取った」と感じ始めることも示された。
Turcsán氏は、「6歳という年齢は、行動に関わるデータから機能が低下し始めると考えられている年齢よりも4〜5歳も若い。これは、犬の毛が白くなったり、一般には気付きにくい変化を飼い主が捉えているせいかもしれない」と述べている。
Turcsán氏は、「小型犬を飼いたいが、シニア犬になったときに精神面に深刻な問題が生じるリスク、あるいは大型犬を飼いたいが7~8歳になったときに身体的健康に問題が生じるリスクを避けたい人は、10~30kgサイズの犬を飼うのが良いだろう。このサイズの犬は、これより小型や大型の犬に比べて、予想される寿命に対する健康寿命が長いことが、われわれの研究で示されている」とアドバイスしている。(HealthDay News 2023年10月16日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://link.springer.com/article/10.1007/s11357-023-00945-9
Press Release
https://biologia.elte.hu/en/content/size-matters-how-body-size-shapes-dogs-aging-patterns.t.36629
構成/DIME編集部