小容量の採血管への切り替えでICU患者の輸血回数が減少
集中治療室(ICU)に入室中の患者では、状態把握のために毎日、複数回の血液検査が行われる。この際、多くの病院で採血に用いられている標準的なサイズの採血管を小容量のものに変更することで患者に対する輸血の必要性が減り、赤血球製剤の大幅な節約につながり得ることが、大規模臨床試験で示された。
オタワ病院(カナダ)のDeborah Siegal氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に2023年10月12日掲載された。
Siegal氏は、「採血管1本当たりの採血量は比較的少ないが、ICU入室患者は通常、毎日、複数回の採血を必要とする。これにより大量の血液が失われ、貧血や赤血球数の減少がもたらされる可能性がある。しかし、ICU入室患者には、このような失血に対処できるような造血機能がないため、たいていの場合、赤血球製剤の輸血が必要になる」と説明する。
ほとんどの病院で用いられている標準的な採血管の場合、1本当たり4〜6mLの血液が自動的に採取される。しかし、通常の臨床検査で必要とされる血液量は0.5mL以下である。
つまり、標準的な採血管を使っての採血では、採取した血液の90%以上が無駄になるということだ。これに対して、小容量(1.8〜3.5mL)の採血管は内部の真空度が低いため、自動的に採取される血液の量が標準的な採血管の半分程度になる。
この試験では、カナダの25カ所のICUを対象に、標準的な採血管から小容量の採血管に切り替えることで、血液検査に影響を与えることなく患者への輸血頻度を減らせるのかが評価された。
試験は、コンピューターが生成したランダム化スケジュールに則り、クラスター(ICU)単位で介入時期をランダム化するStepped-wedgeクラスターランダム化比較試験のデザインで実施された。
対象は、ICU入室が48時間未満の患者を除外した2万7,411人で、主要評価項目は、患者ごとのICU入室当たりの赤血球製剤輸血の単位(1回の献血で作成される製剤が1単位)であった。
その結果、赤血球製剤輸血の単位の最小二乗平均は、小容量の採血管への切り替え前で0.80(95%信頼区間0.61〜1.06)、切り替え後で0.71(同0.53〜0.93)であり、相対リスクは0.88(95%信頼区間0.77〜1.00、P=0.04)と切り替え前後で有意な差が認められた。
切り替え前後でのICU入室患者100人当たりでの赤血球製剤輸血の単位の絶対差は9.84(95%信頼区間0.24〜20.76)単位であった。切り替え前後で、採血量が不十分で検査に支障が生じた例はまれだった(0.03%以下)。
こうした結果を受けてSiegal氏は、「この研究により、標準的な採血管から小容量の採血管に切り替えるだけで、血液検査に支障を来すことなく、ICU入室患者に対する赤血球製剤の輸血頻度を減らすことができる可能性のあることが明らかになった」と結論付けている。
その上で、「誰もが、医療をより持続可能なものにし、赤血球製剤の供給を維持するための方法を模索している今の時代において、この研究は、悪影響を及ぼすこともコストを増加させることもなく簡単に実施できる解決策を提供するものだ」と述べている。(HealthDay News 2023年10月13日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2810758
構成/DIME編集部