「スイッチング」という言葉をご存じだろうか。スイッチングとは、投資信託等の金融商品を売却し、商品を乗り換えることを指す言葉だ。メリットがわかりづらく、使い方によってはデメリットも生じてしまうため、特徴を把握してから判断することが求められる。
そこで本記事では、スイッチングの概要やNISAにおける利用について紹介する。特徴をしっかり把握したうえで、スイッチングの利用を検討してほしい。
スイッチングとは
スイッチングとは現在保有している金融商品を売却し、他の商品に買い替えることを指す言葉。投資の目的や傾向に応じて金融商品の切り替えができる点がスイッチングのメリットと言える。
スイッチングは無料で利用できる場合が多いが、手数料が発生するケースもあるため事前に取り決めを確認しておきたい。保有している金融商品で不利益が生じると予想した際に利用されるケースが多いスイッチングだが、現状のNISAにおいてはあまり使い勝手が良いとはいえない制度となっている。
NISAにおけるスイッチングのデメリット
なぜNISAにおけるスイッチングの使い勝手が良くないのだろうか。ここからは、NISAでスイッチングを利用する際のデメリットを解説していく。
非課税投資枠を消費してしまう
NISAでスイッチングを行う場合、非課税投資枠を余分に消費してしまう点は明確なデメリットだ。複数年かけて投資を行うNISAでは、年ごとに課税なしで投資ができる非課税投資枠が設けられている。つみたてNISAでは年間40万円、一般NISAでは年間120万円が非課税投資枠の上限だ。
スイッチングを利用する場合も、新規で金融商品を購入する場合と同様に非課税投資枠を消費することになる。一方、商品の売却・購入を行わず、今後積み立てていく銘柄を変更するだけであれば非課税投資枠を余分に消費することはない。
元本割れの可能性が高まる
元本割れの可能性が高まる点もNISAでスイッチングを行うデメリットの一つ。NISAを利用するメリットとして、同じ金融商品を長期的に運用することで、安定した利益を見込めるというものがある。これはドルコスト平均法と呼ばれる投資手法や複利を利用したものであり、同じ金融商品を継続して購入することを前提とした運用方法となっている。 そのため、スイッチングを行って銘柄の変更を行うとNISAの恩恵を受けづらくなり、元本割れの可能性も高まる。
NISA枠でスイッチングができない会社もある
金融商品を購入する会社によっては、そもそもNISA枠を利用したスイッチングができない会社も存在する。ここまで解説してきた通り、NISAにおけるスイッチングはおすすめできるものではないが、もしスイッチングを視野にいれている場合には事前にスイッチングの可否を確認しておこう。細かな規定は会社によって異なり、すべてスイッチング可能、一般NISA・つみたてNISAともに不可、一般NISAのみスイッチング可能といった会社も存在する。
新NISAでのスイッチングは可能?
NISAは2024年1月から新NISAとして生まれ変わり、制度の大幅な改正が行われる。非課税保有期間の無期限化や年間投資枠の増加など、現行NISAを改善した内容となっており、これまでNISAを利用していた方は自動で新NISA口座が開設される。
新NISAにおいては、制度としてのスイッチングは盛り込まれていない。ただし、新NISAでは金融商品を売却した場合、翌年から非課税投資枠を再利用することが可能になる。スイッチングとは異なり商品の即時変更はできないものの、商品の変更を行う際には疑似的なスイッチングとして利用できるだろう。
iDeCoにおけるスイッチングの活用方法
NISAでは使い勝手のよくないスイッチングだが、iDeCoではその強みを発揮しやすい。ここからは、iDeCoにおけるスイッチングの活用方法を見ていこう。
投資の方針変更に対応できる
iDeCo利用中に投資の方針を変えたいときなどは、スイッチングが有効な手段となる。iDeCoは、原則60歳になるまで資産の引き出しや売却を行うことができない。投資に慣れてきて積極的な運用をしたくなったという場合には、スイッチングで商品の切り替えを行うのがよいだろう。
利益確定ができる
iDeCoにおけるスイッチングは、利益確定ができる点もメリット。先述の通り、iDeCoは原則60歳になるまで解約ができないため、価格変動がある金融商品は暴落や元本割れといったリスクがある。スイッチングを行えばその時点での資産価値で利益を確定できるため、資産を引き出せる時期が近くなった場合には、スイッチングによる利益確定を検討してみよう。
※データは2023年10月下旬時点のもの。
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文/編集部