「えびす講」は、商家や農家にとって欠かせない行事の一つ。御神像の「えびす」は、ビールのロゴマークとしても広く知られているものの、えびす様を祀る「えびす講」については知らない方も多いはず。
そこで本記事では、えびす講の由来や習わし、十日戎や二十日戎との違いを詳しく解説する。えびす講に関連する地域の行事もこの機会にチェックしておこう。
えびす講とは?
まずは、そもそもえびす講とは何か、行事の由来について解説する。
■商売繁盛の神「えびす」を祀る民間行事
「えびす講」の読み方は「えびすこう」。漢字で「恵比寿講」「恵比須講」「戎講」「夷講」などと表記されることもある。商売繁盛や五穀豊穣のご利益があるとされる神「えびす」を祀る民間行事だ。古くから、旧暦の10月20日に開催されており、現在も10~11月にかけて行事を開催する地域が多い。
元々、えびす様は、室町時代頃から豊漁や航海安全を祈願する守護神として祀られていたという。しかし、時代の流れとともに信仰に変化が見られ、現在は福の神として親しまれている。
■えびす講の由来は?
えびす講の開催時期である旧暦10月の呼称は「神無月(かみなづき、かんなづき)」。日本各地から、七福神をはじめとする八百万(やおよろず)の神が島根県出雲市の「出雲大社」に集まるという神話から、10月が神無月と呼ばれるようになったことはご存じの方も多いだろう。
多くの神が地域を離れる一方で、えびす様は出雲大社に行かず留守神(るすがみ)を担っていた。こうした背景からえびす講は、地域に残り人々を護るえびす様へ感謝の気持を伝える日として、現在に至るまで受け継がれている。
えびす講の習わし
次に、古くから日本に伝わるえびす講の習わしを見ていこう。
■えびす様を祀る神社を参拝する
えびす講が開催される期間中は、えびす様を祀る神社や寺院を参拝し、ご利益を授けてもらう習わしがある。また、露店で熊手や福笹(ふくざさ)、えびす様をモチーフにした餅や饅頭などが販売される場合もある。
■神棚に縁起物をお供えする
神棚を祀っている家庭では、縁起物である旬の食材や料理、酒などをお供えすることもある。供え物の種類は地域ごとに異なり、鯛を抱えたえびす様にちなんで鮮魚を用意したり、地元でとれた野菜を用いて郷土料理が作られたりする。他にも、商売に関連する財布や金銭などがお供えされるケースもあるようだ。
「十日戎」や「二十日戎」との違い
次に、混同されがちな「十日戎」や「二十日戎」との違いを確認していこう。
■関西地方の「十日戎(とおかえびす)」
「十日戎(とおかえびす)」は、関西地方で毎年1月10日頃に行われることの多いえびす講。「えべっさん」の愛称で幅広い世代の人から親しまれている。商売繁盛を願った祭りは3日間を通して開催され、1月9日の夜を「宵戎(よいえびす)」、1月10日を「本戎(ほんえびす)」、1月11日を「残り福」と呼ぶ。
神社によって商売繁盛のご祈願を受けられる場合もあり、祈祷料の目安は5,000円~10,000円ほど。
■関東地方の「二十日戎(はつかえびす)」
「二十日夷(はつかえびす)」は、関東・東北地方で毎年10月20日、または1月20日頃に行われることが多い。
行事の由来については、豊漁を願う神のえびす様が海に帰るとされる「十日戎」とは反対に、海から陸へ帰ってくる日を祝して「二十日戎」が行われるという説が有力。関東地方は関西地方よりもご縁日が10日遅いことから、祭りの名称に違いがあると見られる。
ちなみに、地域によって二十日戎を「廿日戎」「二十日ゑびす」「二十日恵比寿」と表記する場合もある。
えびす講に関連する行事
最後に、えびす講に関連する地域の行事を2つ紹介する。
■長野えびす講煙火大会
「長野えびす講煙火大会」は、長野商工会議所の主催により毎年11月23日(勤労感謝の日)に開催される花火大会だ。1916年から続く伝統的な行事で、近年では、ドローンを用いた躍動感のあるショーを取り入れるなど、進化を続けている。花火会場の入場料金は無料。有料観覧席は指定するエリアによって料金が異なる。
■恵美須神社「十日ゑびす大祭り(初ゑびす)」
京都市東山区にある恵美須神社で毎年1月8日~1月12日の5日間にわたって開催される「十日ゑびす大祭り(初ゑびす)」。期間中、境内では「商売繁盛で笹もってこい」の掛け声とともに吉兆笹が授与される。また、1月9日の「宵えびす祭」、えびす様の誕生日である1月10日には神社が夜通し開門される。
※データは2023年10月下旬時点のもの。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
※製品およびサービスのご利用はあくまで自己責任にてお願いします。
文/編集部