レイ・ダリオの投資戦略
レイ・ダリオの投資戦略は「最小リスクで最大の利回りを目指す」というシンプルなものです。その運用スタイルは、市場全体の動きとは異なるプラスのリターンを生み出すアルファ戦略を採用しており、市場平均に対して高いリターンを追求しています。
実際、リーマンショックの際もプラスの運用成績で乗り切っています。
どんな状況でも安定した運用を心がけることが定評となり、ブリッジウォーター・アソシエイツは「カルパース(CalPERS)」というカリフォルニア州職員退職年金基金からも資金を集めています。
こうした信頼の積み重ねと継続的な成功により、ブリッジ・ウォーターは現在、世界最大級のヘッジファンドと呼ばれ、その運用総額は約16兆円といわれるほどの巨額な資金を誇ります。
こうしたレイ・ダリオの投資戦略で最も有名なものが「オール・ウェザー戦略」です。
この戦略は、資産価格の変動に4つの異なる季節があるという考え方に基づいて設計されています。春夏秋冬、どんな経済の季節が到来しても対応する金融商品を組み合わせ、リスクを分散させることを目的としているのです。
具体的には、経済成長期、経済停滞期、インフレ期、デフレ期の各季節に合わせて異なる資産クラスに投資することで、どの季節でもリターンを生み出すことを可能としています。
・経済成長期には、株式や社債、コモディティや金
・経済停滞期には、長期米国債、TIPS(米国物価連動国債)
・インフレ期には、コモディティや金、TIPS(米国物価連動国債)
・デフレ期には、株式、長期米国債
これら4つに分類した経済の季節に25%ずつ投資すること、これが「オール・ウェザー戦略」の強みです。とはいえ、この戦略にはまとまった資金が必要です。
そのため、資金の少ない一般個人投資家はレイ・ダリオのもうひとつの戦略である『オール・シーズンズ戦略』が参考になるでしょう。
実際、この戦略は「レイ・ダリオの黄金のポートフォリオ」とも呼ばれています。
このポートフォリオはETFで構成され、それぞれの比率は下記のとおりです。
・米国株にはVTIを約30%
・米国債(7-10年)にはIEFを約15%
・米国債(20-25年)にはTLTを約40%
・金にはGLDを約7.5%
・コモディティにはGSGを約7.5%
このように、それぞれの資産クラスの比率が慎重に調整されています。
なぜこうした構成比率になっているかといえば、株式には債券の3倍のリスクがあるというレイ・ダリオの考え方を基本としています。
つまり、リスクを適切に分散するためのポートフォリオとなってるのです。
このポートフォリオの特徴は、株価下落局面でも資産を増やすことができ、下落幅が小さいため、パニック売りをしなくても冷静に資産運用ができるメリットがあります。
その一方で、S&P500と比較するとトータルリターンはやや小さい傾向がありますが、その代わりにリスクが低く、安定性が高いといえるでしょう。
おわりに 新NISAに向けた投資戦略としても有効
2024年からはじまる新NISAに向けて、どのような投資戦略を選択すべきなのか、検討している方も多い時期ではないでしょうか。
一般的に資産が多くなればなるほど、リスクヘッジとして資産を分散させることが重要になります。その際、レイ・ダリオの投資戦略はとても参考になるのではないでしょうか。
たとえば資産が5000万円以上ある方は「オール・ウェザー戦略」、資産形成期の方であれば「オール・シーズンズ戦略」が有効な目安となるでしょう。
これらの戦略は、長期的な資産運用に興味を持つ投資家にとって価値のあるアプローチであり、リスクとリターンのバランスを考える重要な手法として、レイ・ダリオが提唱しているものです。
新NISAを有効活用し、資産をじっくり増やすために、ぜひ参考になれば嬉しいです。
今回は米国投資家列伝シリーズ「レイ・ダリオの投資戦略」について解説させていただきました。
次回もよろしくお願い致します!
文/鈴木林太郎
<参考資料>
PRINCIPLES(プリンシプルズ) 人生と仕事の原則 (日本経済新聞出版)
世界秩序の変化に対処するための原則 なぜ国家は興亡するのか (日本経済新聞出版)
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