2024年に向かって相場の潮目が変わりつつある。長引く物価上昇(インフレ)に終了の兆しが見え、各国の金融政策が転換し始めた今、新たな勝ち筋が見えてきた!
長期的な投資戦略を組み立てるため、まずは目先の1年を分析
2024年大注目の「テーマ」と「業界」は?
利上げ、ポストコロナ、中国の景気減速懸念、ロシア・ウクライナ問題を筆頭に、様々な影響要因がある中、製造業や金融業に分があると井出さんは分析する。「テーマや業界を中分類以下まで掘り下げて考えましょう。例えば製造業では自動車は業績回復が一巡して頭打ち感が出る一方、半導体製造装置の需要はまだまだあります」
今後の株価を左右する投資の重要なキーワード
(1)ドル安・円高進行
米国の利上げ終了と日本のマイナス金利解除で、日米間の金利差が縮小し円高に向かうと日経平均株価には逆風になりかねない。
(2)G20 vs BRICS
東西冷戦とまではならないが、溝が深まり世界経済の分断が起こると、企業にとってコスト高や事業成長を阻害する要因になる。
(3)新興国の経済成長
出生率で日本をはるかに上るインドをはじめ新興国は、先進国に比べて成長期待値が高く、至るところにビジネスチャンスが転がっている。
協調から競争へと分断!世界経済が大転換を迎える
2020年3月のコロナ・ショックを発端とした大規模金融緩和政策によるバラマキが残した爪痕である物価上昇(インフレ)は、3年以上たった今でも我々の生活に重くのしかかる。が、それもいよいよ大詰めだ。インフレ退治の主人公・米国が推し進める利上げ策の終了が見えてきたのだ。
具体的には、9月19日・20日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利を5.5%で据え置くと発表。これが〝高止まり〟を示唆し、2024年後半までには利下げに転じるという見方が出ている。
一方で日本では逆の動きが見え始めた。世界とは異なり金融緩和政策を維持する日本は、2016年1月から続けてきたマイナス金利政策の終了、つまり利上げが噂されている。
国内外ともに転換点を迎えるこの局面を、プロはどう見ているのか。
「インフレ対策だった利上げが終了しても、高い金利水準が長期化しそうなため、景気が減速するのか? という懸念はあります。米国の実体経済が減速すればドル安・円高を招くことに加えて、日本がもしマイナス金利を解除すれば円高を加速させかねません。そのため23年末から24年にかけ日米とも、株価は調整(一時的な下落)局面になりそうですが、米国の景気回復は早く、日本もそれに追従する形で24年後半には盛り返すと見ています。個人的には、日経平均株価3万円割れ程度が底だと思うので、そのあたりを目途に買い始めてもよいかもしれません」(井出さん)
世界の経済・社会動向を示す地政学にも投資戦略の論点がある。
「国際的な協力フォーラムである先進国・G20と、中国を中心としたBRICSとの対立構造が深まってきました。グローバル経済活動では、安い原材料を使って、人件費の安い国で製造し、安価な方法で輸送するのがセオリーです。しかし、先端半導体やレアアースの禁輸の応酬といったパワーバランスの変化が生じており、経済成長の阻害要因となりそうです。内外で様々な問題を抱える中国ですが、現状では金融危機に陥るほど深刻な問題ではないと見ているので、この力関係は当面続くかもしれません」(同前)
様々な動きがひしめき合う中、具体的にはどのようなテーマに注目すればよいのか詳しく見ていこう。
ニッセイ基礎研究所
チーフ株式ストラテジスト
井出真吾さん
1993年東京工業大学卒業、日本生命保険入社。99年ニッセイ基礎研究所、2023年より現職。株式市場・株式投資・マクロ経済に詳しく、新聞・テレビなどにも多数出演し、投資経済の解説を行なう。
今後の株価を左右する投資の重要なキーワード
AI社会を形成する〝産業のコメ〟半導体需要は依然続く
米中対立をはじめ様々な思惑が交錯する。「半導体の需要が減る可能性は限りなく低いですが、その中でもメモリー関係は価格が落ちています。日本では半導体製造装置やウエハーの領域が強いので、強みとリンクした半導体業種を選びたいです」(井出さん)
〈注目の業界〉半導体(半導体製造装置、シリコンウエハー素材、ロジック半導体)
米国の利上げが終了、金利のピークはいつまで続く?
金利を左右する米国の実体経済はどうか。「後退するかどうかはインフレとの兼ね合いなので五分五分です。日本では金利が上昇する可能性が高く、金利高が収益増になる金融業に期待が持てますが、不動産業は利上げがコストに響き逆風でしょう」(井出さん)
〈注目の業界〉金融業(銀行・証券・保険)
生成AIの基盤整備は一巡したがソリューションには期待感あり
2023年に大ブームとなった生成AIに今から手を出してもよいのか。「基盤部分については一山越えた感があるため、そうは思いません。これを活用したロボットや自動化・機械化による人手不足解消のテーマについて考えたほうがよいです」(井出さん)
〈注目の業界〉自動精算機や無人警備ロボットの製造業、ITソリューション業
脱炭素&経済成長を同時に実現するGXの変革に注目
GX関連は生まれたてのビジネスではあるが「息が長いテーマで、後戻りする話ではありません。政策が後押しする一方、太陽光や洋上風力などたくさんの種類がありどれがヒットするかわかりません。種類ごとに分散投資をする意識を持ちましょう」(井出さん)。
〈注目の業界〉太陽光、洋上風力、積雪発電などの再生可能エネルギー領域
「未来の業績」を織り込んだ株価と実際の業績との〝ズレ〟を読め
株価の半年先・1年先を予見して行なう投資には、当然「先見性」が必要だ。が、裏を返せば、先を見通して株の売買が行なわれているからこそ「株価と実態のズレ」が生じている。私たちがテレビや新聞で見聞きするニュースのような内容を投資家たちはすでにある程度予測しているため、株価が織り込み済みだったりするのだ。具体的には「インバウンド回復需要などでサービス業の業績回復が堅調ですが、株価には頭打ち感がある」(井出さん)。
ではどのような業種やテーマなら「株価」の伸びしろがあるのだろう。上掲4テーマはいずれも需要が右肩上がりだ。しかし、現状だけを見れば金融政策やエネルギー政策は転換期であり、またAIが台頭し半導体需要への競争が激しい。だからこそこれらの領域に注目するのが〝先見的〟と言える。
また、新興国の人口増加にも注目したい。
「赤ちゃんが1年に2500万人生まれるインドを筆頭に、人口増がある新興国では、紙おむつや炊飯器など、所得水準増に比例して生活品質を求める需要が増え、関連業種に良い効果をもたらすでしょう」(同前)
取材・文/久我吉史
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