債務者が破産すると、その債務者に対する債権(貸付、売掛金など)は破産手続きの対象となります。実際には、債権をほとんど回収できなくなってしまうケースが多いです。
本記事では、債務者が破産したら債権はどうなるのかについて、債権の優先順位や配当率などをまとめました。
1. 債務者が破産したら債権はどうなるのか?
債務者が破産すると、債権を通常の方法によって回収することはできなくなります。
破産者に対する債権は、原則として破産手続きの対象です。破産法(以下「法」)で定められた債権の優先順位に従い、債権者間での公平を図りながら弁済が行われます。
2. 破産手続きにおける債権の優先順位
破産者に対する債権のうち、別除権については破産手続きによらずに行使できます(法65条1項)。
別除権を有するのは、破産手続開始の時点で、破産財団に属する財産について特別の先取特権・質権・抵当権を有する債権者です(法2条9項)。
別除権を除くと、破産手続きにおける債権の優先順位は、以下のとおりです。
(1)財団債権
(2)優先的破産債権
(3)通常の破産債権
(4)劣後的破産債権
(5)約定劣後破産債権
2-1. 財団債権
債権者の共同の利益のために必要な費用の債権や、特に弁済を確保する必要性が高い債権は「財団債権」として、破産債権に先立って弁済を受けられます(法151条)。
財団債権に当たるもの(法148条、149条)
<財団債権の中でも最優先の債権>
・破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権
・破産財団の管理、換価および配当に関する費用の請求権
<その他の財団債権のうち主なもの>
・租税債権のうち、納期限未到来または納期限から1年を経過していないもの
・破産管財人の行為によって生じた請求権
・破産手続開始時に双方未履行の双務契約について、破産管財人が債務を履行する場合に相手方が有する請求権
・破産者の使用人の給与請求権のうち、破産手続開始前3か月間に発生したもの
・破産手続終了前に退職した破産者の使用人の退職手当請求権のうち、退職前3か月間の給料の総額に相当する額
2-2. 優先的破産債権
破産財団に属する財産について優先権がある破産債権(=優先的破産債権)は、他の破産債権よりも先に弁済を受けることができます(法98条1項)。
優先的破産債権の中では、法律の規定に基づいて優先順位が定められています。
優先的破産債権の間での弁済順位
(1)国税・地方税の請求権
(2)国民年金や国民健康保険料などの請求権
(3)共益費用の請求権
(4)雇用関係の請求権
(5)葬式の費用の請求権
(6)日用品の供給の請求権
2-3. 通常の破産債権
財団債権に該当せず、優先的破産債権・劣後的破産債権・約定劣後破産債権のいずれにも該当しない債権は、通常の破産債権として取り扱われます。
通常の破産債権については、優先的破産債権の次に弁済を受けられます。
2-4. 劣後的破産債権
劣後的破産債権は、通常の破産債権よりもさらに後れて弁済を受けます(法99条1項)。
劣後的破産債権に当たるのは、破産手続開始後に破産財団に対して生じた債権(例外あり)や、罰金・科料・過料の請求権などです。
2-5. 約定劣後破産債権
劣後的破産債権よりも配当順位をさらに劣後させる旨があらかじめ合意された債権は「約定劣後破産債権」として、破産手続きにおける配当順位がもっとも後ろになります(法99条2項)。
実務上は、いわゆるメザニン・ファイナンス(=利回りを高める代わりに、弁済順位を劣後させる金融の仕組み)において約定劣後破産債権の合意がなされることがあります。