新しいものや新しい体験がいち早く手に入るクラファンサービス「Makuake」の家電ジャンルが活況な理由
2023.10.27■連載/阿部純子のトレンド探検隊
スタートアップだけでなく大手企業もクラウドファンディングの利用が増加
クラウドファンディングが日本でスタートしたのは2011年で、この年は東日本大震災もあり、当初のクラウドファンディングは社会貢献の役割が強く、寄附のために必要な資金を集めるために使っていくことが中心だった。
会員数200万人以上の応援購入サービス「Makuake」が創業したのは2013年。先行していた社会貢献型のクラウドファンディングと異なり、新商品のプラットフォームとして、受注を見越した商品づくりの仕組みとして先行販売型サービスを打ち出した。
新商品を発売前に発表し、新しいものにいち早く興味を示すアーリーアダプターや、こんな商品が欲しかったと感じていた人たちに先行購入してもらうことで、メーカー側は受注量の見通しや、販売ターゲットのテスト、カラーリング、サイズのバリエーションといったユーザーの反応やニーズを確かめ、本販売につなげることができる。
「Makuakeでは毎日20~30商品ほどが出ていますが、当社はクラウドファンディングではなくて『応援購入サービス』と称していました。商品はまだ手元になくても、先にお金を出すという行為が応援につながるということで、応援購入っていう概念を提唱させていただいています。
今年の7月から購入したサポーターが実際の商品(リターン)やプロジェクトを評価することのできる『プロジェクトレビュー』機能の実行者への提供を開始しました。従来は弊社で集約した情報を実行者に伝えて、改善や販売方法などの参考にしていただいていましたが、サポーターの声が直接メーカーさんのところで届くようになりました。
新商品のニーズが捉えにくいと考えている量販店もMakuakeを活用しており、先行購入で購買層を把握、購入者のレビューをシェアすることで販売促進につながります。
Makuakeはオンラインで期間限定での実施ですので、影響力が限られている面もあります。そこで今年の5月からヨドバシカメラと業務提携をして、店舗でのマーケティングショップの展開と、ヨドバシカメラのECサイトにMakuakeの特設コーナーを設置しました。
商品を購入したユーザーから、商品化するためのチャレンジや、商品が生まれるストーリーに共感したという声がとても多く、小売業界において“共感”が可視化されて付加価値になるような世界観を作っていくことができたら、メーカーにとっては世の中を変えるようなイノベーティブな商品への挑戦がしやすくなります。
メーカーが新商品を作っていく上での悩みや懸念を先行購入で払拭し、ユーザーはいち早く体験を購入できて作り手を応援できる。応援購入がもっと広がれば、世の中は変わっていのではないかと考えています」(株式会社マクアケ 執行役員 プロジェクト推進本部 松岡宏治氏)
2023年の家電ジャンルで人気プロジェクトは以下の通り(10月現在)
・Makuake初日売上歴代1位を獲得した、吸引、水拭き、スチームと1台3役のアンカー・ジャパンのスティッククリーナー「マッハV1シリーズ」。
・さくらドームの累計16万台突破の自動ゴミ箱「ZitA」シリーズの最新機種「ZitA SQUARE」。
・Makuakeの創業期から応援購入を活用しているCIOのコンパクトでありながら大容量のモバイルバッテリー「SMARTCOBY TRIO」。
・現在もプロジェクト実施中の、エスプレッソを抽出しながら自動的にフォームミルク作れて、ラテアートが簡単にできるNano Foamer Japanの「ナノフォーマーPRO」。
・自宅でコーヒー豆の焙煎ができる、weroastの小型焙煎機「HOME ROASTER」、6位はシリウスのスティック型コードレスクリーナー「switle stick <スイトル スティック>」。
Makuake最新家電プロジェクト
〇ワンタッチ布団乾燥機「FOEHN001」
空気清浄機や加湿器の開発・販売を手掛けるcado(カドー)の「FOEHN001(フェーン001)」は、世界最小級のスティック型ふとん乾燥機。11月5日までMakuakeにて実施中で、10月19日時点で応援購入金額が1億円を突破。11月下旬から販売予定(想定価格2万4200円)。
あたため・乾燥・消臭・ダニ対策の機能が付いたふとん乾燥機で、ワンタッチで簡単に操作ができ、55℃の温風でシングルからダブルサイズのふとんまであたためることができる。
ふとん乾燥機として初のオゾン消臭機能を搭載し、夏場の寝汗のニオイの除去にも便利。梅雨時期の湿気、花粉、ダニ対策にも対応し、オールシーズン使える。吸い込み口に付着したホコリや髪の毛などを乾いた布で拭き取るだけなのでお手入れも簡単。
運転時間はあたため10分、ダニ対策80分、乾燥60分、送風モードが120分。自動的にタイマーでオフするので、ふとんが冷たい冬には寝る直前にあたためモードを運転、その他のモードは朝起きたときにふとんの中に入れておけば夜は快適な状態に。
〇IoTスマートコーヒーマシン「Hikaru V60 Smart Brewer」
1921年創業の耐熱ガラスメーカーHARIOと、グループ会社であるHIROIAコミュニケーションズと共同開発した「Hikaru V60 Smart Brewer」のプロジェクトが、10月24日から12月25日まで実施される。Makuake限定割引価格は5万7000円~。
HARIOの「V60ドリッパー」は円すい型で、従来の扇形ドリッパーに比べ、コーヒー粉の層ができ、注がれたお湯が中心に向かって流れることによりコーヒー粉に長く触れ、成分をより多く抽出できるのが特長。
大きなひとつ穴は、注がれたお湯がドリッパーの制限を受けることなくネルドリップのように抽出ができ、お湯を注ぐ速度でコーヒーの味を変えることができるので、淹れる人の好みで楽しめるが、抽出方法で味が大きく変わるため、どちらかというとプロ向けの商品だ。
テクニックを要するV60ドリッパーを、アプリと連動することで、お湯の温度、量、注ぐ速度、時間を細かく設定、豆のおいしさを最大限引き出したスペシャリティコーヒーが自宅で手軽に楽しめるのが「Hikaru V60 Smart Brewer」。焙煎方法に合わせた最適なレシピや、カスタムレシピ、トップバリスタのレシピも再現できる。
同社のスマートコーヒーマシンは初ではないが、今回は視覚と味覚の連動性にフォーカスしたユニークなデザインが特徴で、バリスタが目の前で抽出したコーヒーはよりおいしく感じるように、視覚的に楽しむことで、味の体験も向上できるというコンセプトでデザインされている。
〇アラジンストーブ専用「ストーブファン」
効率的に空間をあたためるサーキュレーターの役割を果たす、アラジンストーブ専用の「ストーブファン」。好評につき予定数量に達したため、ファン単体、煮炊きができる暖房用石油コンロ「アラジン ブルーフレームクッカー」とのセット販売も含め終了している。
ペルチェ素子という電子部品により、ファン本体の上部と下部の温度差を利用しストーブの熱エネルギーを電気エネルギーに変換、モーターを回して風を起こすという仕組みで電源が不要。アラジンストーブ専用に設計しているので、効率よく熱を吸収して、より強い風を送ることができ、ストーブ本体にも安定して設置できる。
〇27型&31.5型 IPSパネル/フルHD「LGスマートモニター」
モニターにwebOSを搭載することで、今までPCの外付けディスプレイの役割だったモニターから、テレビとモニターのメリットを併せ持ったデバイスに進化したのが「「LGスマートモニター」。
LGのテレビでも使われている独自OS「webOS」を搭載し、YouTube、TVer、Netflix、Prime Video、TikTokなど世界の600以上のVODアプリをPCなしで楽しめる。Bluetooth機能を使ってスマホの音楽をスマートモニターのスピーカーから流すことも可能。
低反射パネルを採用して反射、映り込みを抑えたり、ブルーライトを抑えて目の負担を軽減する「アイケアモード」も搭載。PC作業する際のモニターとしても快適さを追求している。
昨年実施した第一弾では、31.5型の4K モデルをスタンドとアームタイプの2種類で実施。前回のプロジェクトでのユーザーの声を反映して、今回はフルHDを採用し、同シリーズの4Kハイエンドモデルより価格を約4万円ダウンした。
既存の31.5型に加えて、日本の住環境にマッチした一回り小さい27型も登場。Makuakeでは11月5日までプロジェクトを実施中(27型:3万1500円~3万2800円前後、31.5型:3万4900円~3万7000円前後)。一般販売は12月上旬予定(想定価格は27型:4万2000円前後、31.5型:4万8000円前後)。
【AJの読み】テストマーケティングやファン獲得などのメリットが多い
クラウドファンディングには購入型、寄付型、融資・投資型などがあるが、Makuakeは購入型で、応援したい商品・サービスのプロジェクトを先行購入し、リターンとして一般販売よりもお得な価格で購入することができる。ただし、実際にはまだ市場に流通していない商品・サービスであるため、仕様が変更されることもある。
また、プロジェクトには目標金額に達成しないときも成立するAll In型と、目標金額に達しなかった場合はプロジェクトが成立しないAll or Nothing型があるため、応援購入しても商品が手に入らず返金されるケースもある。
Makuakeも当初は資金調達の利点からスタートアップ企業のプロジェクトが多かったが、現在はテストマーケティングやブランドのファン獲得などのメリットから、企業の規模やジャンルを問わず、一般販売に先立ちクラウドファンディングを活用するケースが非常に多くみられるようになった。
大企業も含めクラウドファンディングを利用することで、ユーザーもとがった商品や斜め上目線の商品などに出合える機会も増えてきた。企業と消費者のニーズをマッチングさせる仕組みとして今後ますます発展していくと思われる。
文/阿部純子