PBR1倍割れの問題点
(1)会社の存続意義が評価されていない
PBR1倍割れは、その会社の株式を買って資産を全部売ってしまったほうが利益になる、つまり会社が将来利益を生み出すと期待されておらず、株式がそれだけ買われず評価されていないということを意味する。そのような企業は、投資家がその企業の収益性を見込んで買いたくなるようなビジョンを示すべきかもしれない。
(2)日本は突出してPBR1倍割れ企業が多い
日本市場は、50%程度PBR1倍割れの企業がある。他の先進国の株式市場に比べるとその割合が突出している。そして、名だたる企業も1倍割れとなっており、例えば日本郵政は0.43倍、日本製鉄0.75倍、豊田自動織機0.92倍、本田技研工業0.74倍、住友商事0.97倍となっている。
(3)ROEが低いことが原因のことも
ROE(自己資本利益率)とは、自己資本(株主が出資したお金)でどれだけ利益を出しているかを示す指標だ。
株主資本とは、株主が出資した資本金や資本剰余金、これまで積み上げられてきた利益剰余金の合計で、株主の資金ともいえる。ROEは利益をこの自己資本で割って出される数値であるため、数値が高いほど株主からのお金を有効活用して大きな利益を生み出していることになる。ROEが高い企業、つまり利益を効率的に大きく生み出しているということは、利益が利益剰余金に積み立てられることから将来的には自己資本が大きくなり、PBRを低下させることになる。PBRは株価を株主資本含む純資産で割っているため、株価が変わらず、分母の純資産が増えれば自ずと数値が低くなるからだ。
しかしながら、株価は先行指標といって先を見越して変動するものであるため、ROEが高い企業は収益力は高いとみられ株主に高く評価され、分子の株価が高くなりPBRは高くなる傾向にある。そのため、PBRを高くするためにはROEを高くする、つまり収益力の強さが必要である。投資家は自分のお金が効率よく収益を生んでいる企業へ投資するのは当然だ。PBRが1倍割れで、ROEが低い企業は、収益力が低いことから株価が上がらないと考えられるため、収益力を上げる必要があるといえる。
PBRを上げるために
PBRを手っ取り早く上げる方法として、純資産を低くするため、自己株式を市場から購入したり、配当の引上げをしたりすることが考えられる。自己株式は購入後会社が保有していると、株主資本からマイナスするため、純資産を引き下げる。配当も主に利益剰余金から出されるため、株主資本を引き下げ、純資産を引き下げる効果がある。純資産を引き下げることで、PBRの分母が下がり、数値を上げることもできるというわけだ。
株主としては、自己株式の取得は出回る株数が減り株価を引き上げる要因となり、配当が上がれば毎年受け取ることができる配当金が増えるためどちらもうれしいことだ。
しかしながら、東証としてはそのようなにわか仕込みの政策ではなく、中長期で収益力の伸びが期待され、それを投資家が評価して株式を購入するようになることを目指している。2024年からは新NISAで非課税期間が恒久化、前NISAより非課税金額が大幅に大きくなることで、個人投資家の増加も期待される。そのような中で、上場企業は現状分析し、投資家に目を向けてもらえるような将来に向けてのビジョンを示し実現することで、PBR1倍割れを克服できれば、日本市場のさらなる株価上昇や市場活性化も達成できる。
(参考)
2023年3月30日東証 記者会見要旨
20230330JP.pdf (jpx.co.jp)
JPXレポート2023 「Target 2030」
JPXReport2023.pdf
文/大堀貴子
構成/こじへい
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