タブレットPCは持ち運び性に優れており、スマートフォンよりも大きいディスプレイと性能を持つ。ネットサーフィンはもちろん、ゲームや動画視聴、絵描きといった作業などを場所や姿勢を選ばずに楽しめるのが魅力だ。スペック面では流石にノートPCやデスクトップPCには及ばない……というのが一般的なイメージだが、2023年3月にASUSより発売された『ROG Flow Z13』は、厚さ1.5cmの本体にCore i9-13900H プロセッサーとGeForce RTX 4060を搭載している、まさにモンスター級のスペックを持つタブレットPCだ。その実力を実際に使って試してみた。
見た目の期待感を裏切らない性能の高さ
ROGとは「Republic of Gamers」の略で、その名の通りASUSのゲーミングデバイスに特化したブランドだ。『ROG Flow Z13』は2022年2月に初めて発売されており、当時としては高スペックとなるCore i5-12500H プロセッサーとGeForce RTX 3050 Laptop GPUを搭載していた。それが今年3月のリニューアルで、Core i9-13900H プロセッサーとGeForce RTX 4060Laptop GPUへと性能が刷新されたことで、更に高性能なタブレットPCが誕生したのだ。
ROGの特徴として、近未来的でサイバーチックなデザインが挙げられる。昨今のデザインとして、無駄を削ぎ落としたシンプルなものが好まれつつあるが、ROGは宇宙船を思わせるような幾何学的模様がふんだんに盛り込まれていつつも、しつこさを感じさせないバランス感覚が魅力的。SF好きにはたまらない見た目だ。
本体上部のデザインもクール。CNCアルミニウム合金シャーシは高級感を漂わせており、中央右部のシースルーウィンドウは起動中に光るデザインになっている。
タブレット本体の背面にはスタンドがついており自立可能だ。165度まで開閉可能なので、ペンタブレットのような使い方もできる。また、スタンド裏にはmicroSDカードのスロットが備え付けられている。
付属品の取り外し可能なキーボードは磁石で本体と接続する形式だが、強度がかなり高く、横に引っ張っても中々外れない。斜めにはがすようにしないと取り外せないほどなので、操作時に誤って外れたりする心配はなさそうだ。キーボードやタッチパッドの操作感は申し分なく、タブレット状態でソフトウェアキーボードを使用している最中にキーボードを装着すると、自動でハードウェアキーボードへ切り替わるのも便利だ。
右側面には電源ボタンとUSB Type-A端子、音量調節ボタンなどがあり、左側面にはUSB Type-C端子とThunderbolt4(Type-C)端子を搭載している。Thunderbolt端子はUSB-C端子として利用できる他、別売のGPUボックス『ROG XG Mobile』が接続可能。さらに高精細なグラフィックでゲームなどを楽しめるようになる。実質Type-C端子が2つにType-A端子1つなので、外部拡張性はかなり高いといえる。充電しながらUSBハブ経由でHDMI出力したり、キャプチャボード経由で家庭用ゲーム機を配信したりできそうだ。
試しに昨年発売のゲーム『エルデンリング』を起動してみたが、画質を最高設定にしてもカクつきが全くなかったのには驚いた。画面も美麗で、解像度2560×1600、輝度500ニトという高画質でありながら、リフレッシュレート165Hzでの滑らかな映像美を楽しめる。ゲームはもちろん、映画など動画鑑賞にもおすすめだ。
本体にプリセットされている管理ソフト『Armoury Crate』を使えば、PCのパフォーマンス管理ができる。大きく「Turbo」「パフォーマンス」「サイレント」の3パターンへ変更が可能で、高負荷のゲームプレイ時にはTurbo、ネットサーフィンや作業時にはサイレント、のように使い分けることでPCへの負荷を減らすことができる。サイレント時はファンの音が気にならなくなるので、カフェなど外出先での作業時に役立ちそうだ。
ゲームプレイに最適な性能ではあるが、動画視聴やクリエイティブな作業、外出先でのビジネス用など、幅広い用途で活用できる『ROG Flow Z13』。ハイスペックなノートPCやデスクトップPC並のスペックでありながら、キーボード込みで厚さ約2センチ、重さ約1.5キログラムという携帯性の高さも兼ね備えている。
PCゲームは腰を据えてデスクでプレイしたいけど、ソファでくつろぎながらタブレットで映画も観たいし、外出先でも作業したい……という欲張りな使い方もこの1台なら実現できてしまう。自宅用にデスクトップPC、外出先用にノートPCをそれぞれ購入しようと考えている人にはまさにうってつけな1台だろう。
取材・文/桑元康平(すいのこ)
1990年、鹿児島県生まれ。プロゲーマー。鹿児島大学大学院で焼酎製造学を専攻。卒業後、大手焼酎メーカー勤務などを経て、2019年5月から2022年8月まで、eスポーツのイベント運営等を行うウェルプレイド・ライゼストに所属。現在はフリーエージェントの「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズのプロ選手として活動中。代表作に『eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか』(小学館新書)。