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交通空白地帯でもドアtoドアで誰もがスムーズに移動できるラストワンマイルの課題解決「シェア乗り構想」

2023.10.26

連載/阿部純子のトレンド探検隊

「シェア乗り構想」に基づき様々な実証実験を実施

AIを活用したタクシーの相乗りサービスを提供する「NearMe」(以下、ニアミー)は、空港送迎、タウン送迎、ゴルフ送迎など、手頃な価格でドアツードアのスマートシャトルを運用し、サービスローンチから4年後に利用者数が50万人を突破、リピート率は50%以上と成長を続けている。

ニアミーでは、交通課題に対応する「シェア乗り構想」を基にした取り組みを、様々な企業や自治体と共に進めている。

バスやタクシーの運転手不足から地方、都心部を問わず、生活に欠かせない身近な交通手段が失われる問題がメディアでも取り上げられている。タクシー運転手の場合、過去15年間で40%以上減少していることに加え、急激な旅行需要の回復により需給のバランスが崩壊。さらに乗車人数が1台に約1.3人と非常に効率が悪いという要因もあり、交通・移動の喫緊の課題となっている。

そんな状況下で注目されているのが「ライドシェア」だが、ライドシェアには「ライドヘイリング」と「ライドプーリング」という二つの考え方がある。ライドヘイリングは配車アプリでタクシーを呼ぶ方法や、最近解禁されつつある一般車によるいわゆる「白タク」がある。一方、ニアミーが提案しているのがライドプーリングで、一つの車両を複数組でシェア(相乗り)するというものだ。

「問題解決に必要な輸送量を増やす方法として、ドライバーを増やす量の問題と、アセットを有効活用して効率化する質の問題の二つがあると考えます。

過疎地など、もともとドライバーが少ない地域では量を増やすことが必要になりますが、重視したいのはエリア別、時間帯で見た状況です。乗りたいときに乗れないといった不足の状態を解決していくことが重要ではないかと思っています。

来るべき自動運転といった方向性や、人口減、脱炭素が求められる中、モビリティの将来は既存資源を有効活用するライドプーリングという質の実装が重要だと我々は考えており、それがニアミーの『シェア乗り構想』なのです」(NearMe 代表取締役社長 髙原幸一郎氏)

〇シェアード・シャトル「&MOVE 日本橋」

昨年に続き、現在2度目の実証実験が行われているのが、ニアミー、三井不動産、ShareTomorrowの3社共同プロジェクト「&MOVE 日本橋」。

「&MOVE 日本橋」はLINE公式アカウントを利用し、乗りたいときにLINEから乗車の依頼をかけて利用するシステムで、事前予約にも対応するオンデマンド型の相乗り交通サービス。一人1ライド400円(乗車人数や発着場所によって料金は変動)で、指定の場所でシャトルに乗車して料金を支払う。

「日本橋エリアは移動の利便性が高いところですが、局所的には乗り換えが発生するなど、高齢者や小さいお子さんがいる世帯には移動が面倒な場所もあります。『&MOVE 日本橋』は浜町をはじめとした日本橋のEASTエリアと、室町、東京駅などのWESTエリアとの往来をしやすくし、同エリアの地域情報を発信してエリアの活性化につなげていくことを目標にしています」(三井不動産 ロジスティクス運営部運営グループ統括/前ShareTomorrow MaaS事業部プロジェクトリーダー 門川正徳氏)

第1回の実証実験の総乗車回数は約5000回。ユーザーの反応では「ライフラインとして欠かせない」「便利な移動手段として重宝」という回答が合わせて56%に上り、サービスの継続を望む声が多く寄せられた。

課題として挙げられたのが乗車率のアップと、利用に至るまでの障壁を極力減らすということ。課題を踏まえた2回目の実証実験を実施中で、多くの要望があった佃や丸の内、銀座発着のサービスも開始。乗車システムもLINE公式アカウント上で簡易にできるようにするだけでなく、高齢者にも使いやすくするために電話予約の導入も検討している。

〇秋田県「秋田エアポートライナー」「ミズモシャトル」

秋田県がニアミーと共同で進めているのが、秋田空港から秋田市内や主要観光地への移動手段として定着している秋田エアボートライナーのスマートシャトル化に向けた取り組みで、2022年には秋田空港と秋田市内を結ぶ路線で、ニアミーのシステムの導入による実証事業を実施。

2つ目の事業が、オリジナル品種のホワイトラベンダー「美郷雪華」や、全国名水百選に選ばれた「六郷湧水群」をはじめ、多くの観光資源を有する美郷町と、秋田新幹線の最寄り駅であるJR大曲駅から町内の観光地・観光施設への新たな二次交通の確保を目指した実証事業「ミズモシャトル」。

主要交通ターミナルであるJR大曲駅から二次アクセス整備が必要と考えていた美郷町では、2022年度に県が実施したオープンイノベーション活用事業に応募し、ニアミーとのマッチングが成立。町内3タクシー会社による乗り換えタクシーの実証事業を、今年の6月から約3ヶ月実施した。

運賃はルートにより980円~1980円で、同エリアを単独でタクシー利用する場合と比較してかなりお得な移動手段となる。

「秋田は日本で一番人口減少と少子高齢化が進んでいる県であり、過疎化に伴い産業等の担い手の確保が大きな課題となっています。観光により交流人口を拡大し地域活性化を図ることが急務ですが、旅行の形態はニーズの多様化と個人・小グループ化が進み、コロナ禍後は特に顕著になっています。移動サービスに対する要求もおのずと高くなり、車の利用が難しい旅行者によって、移動手段の有無が地方における旅行実施の判断材料となる場合もあります。

秋田県では、路線バスの廃止、縮小が進み観光客の足として機能していない地域が多く、これまでもタクシーによる観光ニーズアクセスの確保に取り組んできました。秋田県内の観光アクセスのほとんどが乗り合いタクシーで、過疎化の裏返しとも言えますが、全国的に取り組みが進んでいる地域であると思います。

一方、こうした取り組みを支えるタクシー事業者にも、運転手の高齢化やデジタル技術導入の遅れといった課題があり、事業継続に不安を抱えているところも多くあります。

ニアミーと行った2つの事業を通じて、地方においてシェア乗りを普及させるためには、都市部とは異なるアプローチが必要であり、自治体職員をはじめとした関係者がタクシー事業者の理解を深める努力が必要だとわかりました。

タクシー事業者に対しては、人手不足の解消や新たな需要の確保につながるといったメリットを伝え、ニアミーの理念とテクノロジーが加わり大きな変革につながることを理解していただくが最も重要だと感じています」(秋田県 観光文化スポーツ部インバウンド推進統括監 益子和秀氏)

〇横浜ビー・コルセアーズ シェアタクシー

トヨタ・コニック・プロとニアミーが共同で、10月21日に横浜国際プールにて開催されるプロバスケットボールチーム「横浜ビー・コルセアーズ」のBリーグホーム開幕戦にて、「横浜ビー・コルセアーズシェアタクシー」の実証実験を実施した。

横浜ビー・コルセアーズのホームである横浜国際プールは、最寄り駅の北山駅から徒歩6分~8分だが、会場に向かうには急な階段があり、障がい者や足に不安がある人、シニア層にはアクセスしにくい場所にある。自家用車での来場は駐車場が少ないことから非推奨で、新横浜駅、横浜駅からタクシー、またはバスでアクセスすることも可能だが、試合が始まるのは昼の時間帯が多く、タクシーの数、バスのダイヤが少ない谷間の時間帯になることがネックだった。

ニアミーのプラットフォームを活用し、サービス利用希望者同士がタクシーをシェアすることによって、割安で快適に直行することを実現するサービスを目指し、実証実験として、横浜市内および会場周辺の主要な3エリアから横浜国際プールまでの区間で運行する「横浜ビー・コルセアーズ シェアタクシー」を実施した。

「今回の実証実験は、自分にぴったりのアクセス手段で横浜ビー・コルセアーズの観戦に来てくださいというメッセージです。元気な方は最寄り駅から歩いて来場していただいて結構ですし、シェアタクシーではワンコインのルート、主要駅からタクシーで来られるルートなど複数用意して、横浜の観光を楽しみながら観戦に来ることもできます。

また、10台の常設の駐輪場と30台の特別な臨時駐輪場を設置して、シェアサイクリングも同時に提供しました。これによって乗り捨て型の自転車が大量に来ることをカバーする仕組みを作ります。

多様なモビリティの選択肢を提供することによって、負担のない形でアクセスしたい、お散歩やサイクリングをしながら健康的にアクセスしたいなど、すべての方々のアクセスビリティを保全することも可能になります。

日本のスポーツ産業界においてスタジアムの環境整備が盛んに行われていますが、財務的な余裕がないところでは大型のインフラ投資は難しい現状があります。多様なモビリティの選択肢を提供し、地域内外のステークホルダーの皆様と一緒に解決するという、今できることでスポーツ観戦を誰でも楽しめる環境にしていきたいと考えています」(ウエインズトヨタ神奈川 まちいちばん支援部部長 横浜ビー・コルセアーズ担当 宮石真希子氏)

タクシー業界の現状と課題

東京と神奈川を中心に運行するタクシー会社「日の丸交通」は、年内にニアミーのシェア乗りサービスに参画することを発表。代表取締役の富田和孝氏が、タクシー業界における現状や課題、解決策ついて語った。

〇白タク解禁に伴う課題

ライドシェア(白タク解禁)に関しては様々な意見が展開されているが、私は2002年の総量規制撤廃によるタクシーの規制緩和と同じメカニズムだと感じている。ライドシェアの最大の問題点はタクシードライバーの流出で、公共性が保てなくなるということ。

2002年の総量規制撤廃で、都内ではタクシーが6000台増加。供給過剰によって、タクシードライバーの一人当たりの収入が落ち、安全性、サービス水準の低下が見られるようになり、2014年に政府は議員立法を通して再規制に踏み切った経緯がある。

現在の都内のタクシー乗務員の年収は一般産業よりも約200万円低いにもかかわらず、月間の労働時間は約30時間多い。そんな状況でライドシェアが解禁されると、ピークの時間帯はカバーできるかもしれないが、谷の部分は供給過剰になってくることは明白で、タクシー乗務員は稼げないことから業界から流出してしまう。そうなると公共性が保てなくなり、最終的には利用者にしわ寄せが来ることになる。

〇課題解決に向けてタクシー業界でできること

空車で走る距離と、お客様を乗せて走る実車の距離の比率を実車率というが、今東京では実車率は50%前後で、ほぼ半分は空車で走っている状況。ちなみにバブル時の実車率は約55%なので、空車の部分はAIなどテクノロジーを活用して埋めていける余地が十分あり、都内のタクシーはまだ余力があるということを知っていただきたい。

アプリを使う方も非常に増加している。配車アプリは東京の事業者では1プラットフォーマーとの契約が大半だが、弊社はGOとUberの2社を使っている。当初は1社だけだったが、さらに1社を追加することで、実車率が約6%上がった。

複数のアプリを使うことで実車率を上げることは可能だが、問題は1社だけに縛るプラットフォーマーの排他的契約があるということ。内向きではなくしっかり現状を捉えて、タクシー業界で何をすべきかを考えるべきタイミングにあるのではないか。

弊社は外国人ドライバーを積極的に採用しているが、10人応募が来ても採用できるのは1人くらい。ネックになっているのが在留資格の問題で、日本で働きたい外国籍のドライバーは多く、そういった人材を積極的に全国レベルで採用していくためにも、法的な緩和をしていく必要もある。

需要に応じて料金を変えられる「ダイナミックプライシング」については、一社だけで取り組んでも、需給の調整にはならないと考えている。タクシー業界全体としてダイナミックプライシングを投入していき、需給をしっかりと調整していくことも提案したい。

需給の波である、午前中8~10時の出勤時間帯と、会食後に帰宅する時間帯21~22時のピークをどうやってカバーしていくかについては、ニアミーのシェア乗りサービスが有効だと考えている。

今のタクシーは1台に1人しか乗らないことが多いが、シェア乗りなら1台で2~3人のお客様に対応できる。相乗りサービスをタクシー会社が1社でも多く展開していくことにより、需要をしっかりとカバーすることができると考えている。

【AJの読み】日本にもシェア乗りタクシーが根付くか?

運転手不足の問題が浮上する中で「ライドシェア」がクローズアップされているが、日本ではライドシェアは白タク解禁のことを指すことが多い。ライドシェアのくくりでも、配車アプリでタクシーや白タクを呼ぶライドヘイリングと、ニアミーのような一つの車両で複数組がシェアするライドプーリングは異なるものだ。

アメリカや韓国など海外ではよく見られる相乗りタクシーだが、日本では2018年にニアミーが2組をマッチングさせる相乗りサービスをスタート、2019年に開始した空港送迎型のエアポートシャトルで独自AIをさらに発展させ、少人数でも活用できる街中相乗りサービスを展開している。

相乗りは単独で利用するより最大で約半額と割安で乗れるのが大きな魅力だが、知らない人と同乗することで、住所を知られたくない、酔客との同乗などトラブルが怖いといった不安感や抵抗感を覚える人も多い。また事前予約や、乗車する時間幅を長く取る必要があるため、急遽、移動しなくてはいけない時には使えないといった課題もあり、こうした不安払拭や、利便性の確保など課題もある。

文/阿部純子

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