■チャーハンも、本物と全く遜色なし!
続いて、チャーハンに挑戦。チャーハンにおける卵は、ご飯を一粒ずつコーティングしてパラパラに仕上げる役目を担っている。果たしてプラントベースでそれができるのか…。
ご飯と卵を混ぜながら炒め合わせると、たちまち米粒をコーティングして、パラパラに!
ハムと葱を入れ、味つけをして完了。いつもは卵の黄身と白身がムラになるのだが、均一なので、これもプロのような仕上がりになった。味はオムレツよりもさらに本物に近く、ブラインドテストをしても判別できる人の方が少ないのではと感じた。
キユーピーの広報担当者によると、「HOBOTAMA 加熱用液卵風」の技術的な特徴は大きく2つ。
(1)卵を使わずに、卵のように加熱調理して固まる特性を持たせた点
…この技術により、溶き卵のような感覚で、オムレツや炒飯など様々なお料理に使える。
(2)植物特有の青臭さを抑え、より卵に近い風味を再現した点
…植物原料としてアーモンドを使用することで実現した。
「スクランブルエッグ風」は、卵を熱愛する開発担当者が139回試作して、誕生
前述したようにHOBOTAMAは2商品があるが、最初にできたのは「HOBOTAMA スクランブルエッグ風」。研究が始まったのは2019年夏頃で、卵が大好きな開発担当者が、京都の飲食店で食べた「湯葉丼」がヒントだったそう。「丼の上に卵黄がのっていて湯葉と一緒に口に運んだ時の食感がスクランブルエッグに近かったことをきっかけに豆乳加工品を原料にスクランブルエッグ風を開発しました」(キユーピー)。
開発担当者の“卵愛”ゆえに、納得する食感に仕上げるまでには時間がかかり、「スクランブルエッグ風」の試作回数は139回にもおよんだ。やっと納得できるものが完成し、2021年6月に業務用で発売を開始。プラントベースフードを提供しているホテルや飲食店を始め、食物アレルギー配慮の観点から、保育園や幼稚園の給食などでも採用され、「市販して欲しい」という消費者の声にこたえて2022年3月に加熱調理用のアイテムを追加し、発売した。
▲京都の湯葉丼にヒントを得て、豆乳加工品を主成分として開発された「HOBOTAMA スクランブルエッグ風」
▲半熟のスクランブルエッグ状に加工されているため、解凍後、そのまま食べられる
「『スクランブルエッグ風』では、やわらかすぎず、パサパサにならず、納得のいく食感にすることに、また『加熱用液卵風』では、卵の機能の1つである加熱すると固まるという特性を実現することにとても苦労したと聞いています。『加熱用液卵風』はアーモンドパウダー、『スクランブルエッグ風』は豆乳加工品が主な原料という違いはありますが、です。どちらも今までキユーピーグループで培ってきた卵の加工技術を活かしております」(キユーピー)
発売後半年間の出荷数は2アイテムで約4,000袋だったが、翌年の同時期ではその約9倍となる3万6000袋強を出荷した。「卵アレルギーの子どもが食べたことがなかったオムライスを初めて食べることができた」といった内容の声が多く届いており、飲食店経営されている人からの賞賛の声も。「食の選択肢を広げられて喜んでいただけることは私たちメーカーにとってもうれしい限りです」(キユーピー)。
取材・文/桑原恵美子
取材協力/キユーピー株式会社