複雑な調味と構成で選ばれ続ける
1978年の創業のOGGI(オッジ)は、洋菓子の概念にとらわれず「食材がもつ力を最大限に引き出す」を原点に独自の味を追求し、さまざまなレシピで独自の商品を生み出してきたブランドだ。
ロングセラーの「ショコラ デ ショコラ」や「オレンジピール」は、贈答用菓子としても定番となっている。
オレンジピールの原料を使用した、大人向けのチーズケーキ「オレンジピールチーズケーキ」が今年8月に復刻した。過去に販売していたが、技術的な面で困難があり販売を断念。復活の声もあり、このたび新たに発売するに至った。
運営元のオールハーツ・カンパニー社パティスリー本部 オッジ事業部部長の夕下武明氏は、「オレンジピールチーズケーキ」のこだわりについて、次のように話す。
「数年前に人気があった商品のリバイバルとして、OGGIのメイン顧客層に即した商品設計にしました。テイストの部分では『食べ疲れしない後味』を実現するために、ブランドの主力商品でもあるオレンジピールの原料を使い、甘味の中にも切れのある後味を表現しました」
●手土産菓子としての工夫
全商品について、手土産菓子として選ばれるための工夫はどのように行っているのか。
「渡すシーンに向け、個数の設計をしています。お渡しする先で複数名に配られるような場合には小ポーションで配りやすい仕様に。持ち運びやすい利便性も追求しています。手土産である以上、基本は渡す本人や渡された人が運ぶこともありますので、機会に応じた設計にしています」
●「ショコラ デ ショコラ」の開発秘話
ロングセラーの一つ「ショコラ デ ショコラ」は、ねっとりと濃厚な食感から「チョコレート界のフォアグラ」とも称される。開発秘話を聞いた。
「ショコラ デ ショコラは “チョコレートの中のチョコレート” という意味のフランス語。創業者は召し上がった方が、“チョコレートそのもの” を食べていると錯覚するような口溶けと味わいを求め、試作を重ねました。重厚感がありながら、なめらかな、その口どけや食感は、チョコレートとバターの絶妙な配合、そして、職人による繊細かつ丁寧な火入れによるものです。
また、材料の大半を占めるチョコレートは、ゆっくりとローラーにかけられた香り高く口溶けの良いクーベルチュールチョコレート。他にバター、卵、砂糖、ごく微量の小麦粉、さらに隠し味として独自ブレンドのスパイスを絶妙に配合し、力強く奥深い味わいをつくり出しています。
昨今人気の“チョコレートテリーヌ”と大きく違う点は、多くの“チョコレートテリーヌ”がとてもシンプル素材で構成されているのに対し、とても複雑な調味・構成になっているところです」
手土産としてふさわしい高級感や特別感は、選定時に重要なポイントとなる。それを存分に感じさせてくれる理由は、その独創性と綿密な調味や構成にあるのかもしれない。
3つのブランドから、手土産に選ばれる条件として、ストーリー、チャレンジングな斬新さ、細かに作り込まれた調味や構成が浮かび上がってきた。各ブランドいずれも、さらなる新しい取り組みにより、さらに選定条件を増やしてくれそうだ。
文/石原亜香利