「アシストスーツ」活用
東京理科大学発ベンチャー企業の株式会社イノフィスが手がけるアシストスーツ「マッスルスーツEvery」は、中腰姿勢を保つ、人を抱え上げる、重い物を持ち上げるといった作業時に腰の負担を低減する。
2022年には農林水産省スマート農業実証プロジェクト「新しい時代を切り開く直売型スマートイチゴ生産・経営モデル実証コンソーシアム」の実証実験に参加し、イチゴ農家へのマッスルスーツ導入による時間削減効果と労働費削減効果を実証した。
「マッスルスーツEvery」の最大の特徴は、アクチュエータに、空気を駆動源とする人工筋肉を使用していることにある。これにより、なめらかで自然な動きでありながら、最大で25.5kgf(重量キログラム)という強い補助力で動作をパワフルにアシストする。
例えば収穫物の入ったコンテナやお米の運搬作業、中腰で行う収穫作業など、腰にかかる負担を大幅に軽減することができる。また電力不使用・防水・防塵仕様のため、屋外の作業や水に濡れる現場でも問題なく作業できる。
同社はマッスルスーツシリーズとして他にもアシストスーツを製造しているが、マッスルスーツEveryは初の量産品で、従来品と比べ3分の1以下の136,000円(税抜)という価格を実現しており、個人でも購入が可能という。
●イチゴ農家のメリット
実証実験において、イチゴ農家はどのようなメリットが得られたのか。同社の国内営業部 シニアマネージャー 塩野谷実氏は次のように話す。
「中腰作業で行うことの多い、育苗管理(追肥)、定植、マルチ張り、収穫作業など腰に負担のかかる作業時に装着をすることにより、腰の負担が大幅に軽減することが可能です。マッスルスーツ Everyを装着することで、中腰作業の頻度が多い作業においては、作業中の腰伸ばし動作の時間が減少し、作業時間の削減効果につながります」
農林水産省スマート農業実証プロジェクトでは、10a(アール)(※3)換算で年間約130時間の時間削減効果を実証したという。マッスルスーツ導入により機械導入費は発生するが、労働費が作業時間削減分、低減するため、年間10a換算で13万円の労働費低減につながる試算だ。
※3 1 アール = 100 平方メートル
●今後の展望
「今年の4月以降、サポーター型のアシストスーツを2種類発売しました。中腰姿勢での作業時間が長い方や重量物の運搬の頻度が多い方向けの補助力の強いモデル、腰に負担はかかるが連続作業が多く、軽トラックやトラクターなどの乗り降りも多い方向けのモデルです。
将来的には当社製品を含むアシストスーツの着用がより一般的になり、生産者の皆様の労働環境の改善や負担軽減に寄与できるように活動を推進していきたいです」
サポーター型のアシストスーツ「マッスルスーツ Soft-Power」
アシストスーツなどのテクノロジー導入の効果により、若者の農業参入の増加も期待したいところだ。