現時点の対応カードは1枚だけだが…
それを考慮しながら『ETCGO』を観察すると、このサービスが極めて広大な可能性と退治していることがよく分かる。
『ETCGO』が現在対応しているETCカードは、三井住友トラストクラブ株式会社発行のダイナースクラブカードのみ。つまり、11月の三郷流山橋有料道路開通と共にどの車でも『ETCGO』を利用できるというわけではないが、これはやむを得ない。キャッシュレス決済サービスの話題には、いつも「最初はこのカードしか対応していない」という現象がつきまとう。
言い換えれば、『ETCGO』はまだ「早期アクセス」の段階なのだ。
仮にこの『ETCGO』がほぼ全てのETCカードに対応した場合、我々は歴史的転換点を目の当たりにする可能性が高い。
ETCさえあれば現金など一切持たずとも日本各地へドライブまたはツーリングができ、駐車場利用もETC決済で完結できる近未来。逆に言えば、なぜ今までETCという技術をもっと柔軟に活用しなかったのか?
「キャッシュレス後進国」と呼ばれ続けてきた日本だが、我々はもっと「ETCの普及率の高さ」に目を向けるべきだったのだ。
ETCはあらゆるところで大活躍!
もっともそれは、ETCを活用したキャッシュレス決済システムの整備が全く行われていなかったという意味ではない。
2020年8月から11月にかけて、ケンタッキーフライドチキン相模原中央店で「ドライブスルーでのETC決済」の実証実験が行われていた。この時期、COVID-19によるパンデミックで誰もが外出すらできなくなってしまった頃ということを思い出す必要がある。
「店舗に入らず飲食物を購入できるドライブスルー」に大きな需要が集まった時期で、さらに「外にあるものに極力手を触れないようにする」行動様式が求められていた。そのような環境下でのETC決済は、パンデミック期の公衆衛生に適った理想のシステムだったのだ。
しかし、「ETCを活用した買い物」の利便性自体はパンデミック終焉後も変わらないはず。人間はもはや「取り出す」という動作すら必要なくなるのだから、実はETCが「最強の決済手段」ではないかとも思えてしまう。
缶詰とETC
ETC自体は、新発明の技術というわけでは全くない。
これは缶詰が発明されてから半世紀後に缶切りが発明されたことと似ているかもしれない。食料を長期保存できるようになったはいいが、いざそれを開封する手段が50年の間に確立されていなかったのだ(銃を発砲して開ける猛者もいたらしい)。
「食料をどう保存するか」に重点を置き過ぎてしまったが故の現象である。
「ETCは高速道路をスムーズに通過するシステム」ということに重点を置き過ぎると、やはり缶詰のような流れになってしまう。ETCの本当の真価は、高速道路以外での使い道にあるのだ。
【参考】
ETCGO
https://www.amano.co.jp/etcgo/
ETCGO利用方法-埼玉県道路公社
https://www.tollroad-saitama.or.jp/tollroad/traffic/etcgo/
取材・文/澤田真一