日経平均株価(以下、日経平均)が乱高下している。9月15日には日中の高値で33,634円まで上昇しバブル後の最高値に肉薄したものの、9月19日、20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)をきっかけに急落に転じ、10月4日には30,487円まで売り込まれた。
この間、日経平均は重要なチャートポイントを次々と下抜けし、下げ幅は3,000円超に達した。また、短期の移動平均線が長期の移動平均線を下抜ける「デッドクロス」も生じたため、投機筋からは「もはやこれまで」との弱音も聞かれた。
そんな「崖っぷち」まで追いつめられた日経平均だが、その後は急速に値を戻し、10月10日からの3連騰では一気に32,000円台を回復するなど、激しい値動きが続いている。
こうした状況を受けて、三井住友DSアセットマネジメントは、同社チーフグローバルストラテジストの白木久史氏による「半値戻しは全値戻し? 崖っぷちから生還した日経平均の今後 陰謀論から考えるFRB急旋回のワケ」と題したマーケットレポートを公開した。詳細は以下の通り。
米利上げ終了の思惑で買い戻される日経平均
まさに土俵ぎわから中央まで押し返した格好の日経平均だが、「半値戻しは全値戻し」の相場格言が示す通り、ここもとの値動きは年度後半の反騰を期待させるものと言えそうだ(図表1)。こうした日経平均の乱高下の背景にあるのが、米国の政策金利見通しのゆらぎだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は金融政策を決める9月19日、20日のFOMCで政策金利を据え置く一方、来年と再来年の政策金利の見通しを引き上げ、「利上げ局面が長期化する」とのメッセージを発した。
これをきっかけに市場では、米長期金利が急騰し、日米の株価は一時大きく調整した。しかし、こうしたFRBのタカ派姿勢は、足元で急速にトーンダウンしつつある。
FRBの高官は講演会などでの発言を通じ、市場との対話を試みることが少なくない。そして、ここもとFOMCメンバーの中でもタカ派で知られる複数の高官が相次いで追加利上げに慎重なコメントを出したことで、FOMC後に米国債や株式を売っていた市場参加者は慌てて買戻しに走ることとなった。
三井住友DSアセットマネジメントでは、年内もう1回の追加利上げで米国での利上げが終了するものと想定しているが、市場ではFRBによる政策転換の兆候を受けて、利上げ打ち止めの思惑が広がっている。
市場関係者の間ではFRBの政策転換を「旋回:Pivot(ピボット)、方向・路線転換のこと」と呼ぶが、こうした「FRBの急旋回」が本物であった場合、米長期金利の低下を通じて米ハイテク株を中心としたグロース株に追い風となりそうだ。
そして、日本では半導体などの値がハイテク株の影響を受けやすい日経平均が主導する株式市場の反騰・上昇のシナリオが現実味を帯びそうだ。
なお、足元の反発局面では日経平均の強さが目立つ展開となっており、NT倍率(日経平均をTOPIXで除して算出する指数)も急回復しつつある(図表2)。今後、「FRBの急旋回」をうけて海外投資家のリスクオンが本格化するようなら、日本の株式市場も日経平均主導で再び上昇トレンドが鮮明となってもおかしくないだろう。