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抗うつ薬、睡眠薬、鎮痛薬など広く使用されている薬剤の一部は高齢者の運転能力を低下させる可能性、セントルイス・ワシントン大学研究報告

2023.10.27

高齢者の運転能力に影響を及ぼす薬剤とは?

抗うつ薬や睡眠薬、鎮痛薬など広く使用されている薬剤の一部は、高齢者の運転能力を低下させる可能性のあることが、米セントルイス・ワシントン大学医学部のDavid Carr氏らによる研究で示された。研究結果は、「JAMA Network Open」に2023年9月29日掲載された。

さまざまなクラスの薬剤が運転能力低下リスクに関連付けられている。Carr氏らは今回、追跡開始時に認知機能に問題のなかった65歳以上の男女198人(平均年齢72.6歳、女性43.9%)を対象に、特定のクラスの薬剤と運転能力の低下との関連を検討した。

検討した薬剤のクラスは、抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)/SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、鎮静薬/睡眠薬、抗コリン薬/抗ヒスタミン薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)/アセトアミノフェンだった。研究参加者は最長で10.24年間(平均5.70年間)にわたって運転教官による路上テストを含む検査を年1回のペースで受けた。

その結果、追跡期間中のどこかの時点で路上テストが不合格となるか、下限ぎりぎりの点数を取った人の割合は35%(70人)であり、抗うつ薬、SSRI/SNRI、鎮静薬/睡眠薬、NSAIDs/アセトアミノフェンの使用者ではそのリスクの高いことが明らかになった。

最もリスクが高かったのは抗うつ薬(ハザード比2.82、95%信頼区間1.69〜4.71)であり、鎮静薬/睡眠薬(同2.72、1.41〜5.22)、NSAIDs/アセトアミノフェン(同2.72、1.31〜5.63)、SSRI/SNRI(同2.68、1.54〜4.64)がそれに続いた。

1年ごとの路上テストで不合格となるか下限ぎりぎりの点数を取った人の割合(100人年当たり)は非使用者と使用者の順に、抗うつ薬で6.3%と15.8%、SSRI/SNRIで6.7%と17.6%、鎮静薬/睡眠薬で7.4%と16.7%、NSAIDs/アセトアミノフェンで4.4%と9.3%であった。

この研究結果についてCarr氏は、「これらの薬剤が運転能力の低下の原因であることを証明するものではない」と述べ、その原因が薬剤そのものなのか、その薬剤による治療を必要とする疾患なのか、あるいは対象者が服用している他の薬剤なのかを明らかにするのは困難だとしている。

ただ、今回の研究では、患者の医学的状態や記憶力および思考力、視覚障害、居住地域(裕福な地域か貧困な地域か)などのさまざまな要因を考慮して分析を行ったが、それでも、特定のクラスの薬剤が運転能力の低下に関連していることが示された点を強調している。

さらにCarr氏によると、これらの薬剤の多くは中枢神経系に作用するため、眠気やめまいなどの副作用が生じ、それが運転に悪影響を及ぼす可能性があるという。

同氏は、「重要なのは、この点に注意を払い、患者に助言することだ」と話し、「残念ながら、多忙で時間の限られた医師の診察時には、薬剤の副作用に関する話は後回しにされやすい」と指摘する。

このことを踏まえた上でCarr氏は、患者が積極的になる必要性を説き、「新しい処方箋をもらったら、副作用の可能性について質問すること。そして、だるさなどの症状が出て、それが薬剤のせいだと感じられるのであれば、医療従事者に相談する必要がある」と助言している。

この点については非営利団体AAA交通安全啓発・研究部門長のJake Nelson氏も同じ意見だ。同氏は、相談することで医師は別の薬剤に変更したり、特定の薬剤について用量や服用のタイミングを調節したりするなど、何らかの対応を取る可能性があると話す。

「こうした質問をすることが医師の負担になると感じる必要はない。自分の健康と安全が第一だ」と同氏は言う。

Nelson氏はまた、この問題に関しては製薬業界の取り組みも重要であることを強調。薬剤の服用による運転能力低下のリスクについては、通常、製品の添付文書やラベルに記された小さな文字の中に埋もれてしまって目立たないが、注意を喚起するために表示方法を改善できるはずだと指摘している。(HealthDay News 2023年10月3日)

Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

(参考情報)
Abstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2809967

構成/DIME編集部

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