2024年からNISAの新制度が始まることを受け、新たにNISAを始める人も増えています。これまで制度を利用してきた人は、ロールオーバーの扱いが変わっているので注意が必要です。NISAのロールオーバーの概要と今後の扱いについて解説します。
目次
NISAのロールオーバーとは何か?
現行のNISA制度において、購入した金融商品は運用益が5年間非課税となりますが、期間満了後もロールオーバーによって非課税での運用を続けられます。まずは、ロールオーバーとはどういう仕組みか、基本的なところを理解しておきましょう。
保有金融商品を非課税投資枠に移管すること
NISAのロールオーバーとは、NISAの非課税枠で購入・保有している金融商品を、翌年の非課税投資枠に移管することです。
NISA制度を利用して株式や投資信託などを購入すると、運用で得た配当金や売却益などが5年間非課税となります。5年を経過すると課税対象となるルールではありますが、非課税枠を移管(ロールオーバー)することで、非課税期間の終了後も、引き続き課税されることなく金融商品を運用できます。
特に長期で資産運用を考えている人にとっては、非常にメリットのある仕組みです。
NISAの基本知識
NISAでは、専用口座において毎年一定額の限度内で、株式や投資信託などの金融商品を購入できます。そして、それらから得られた運用益が非課税となる制度です。『一般NISA』をはじめ、『つみたてNISA』や『ジュニアNISA』があり、それぞれ年間の購入限度額が決まっています。
同制度は2024年から、新たな仕組みでスタートする予定になっており、今後さらに細かい部分が変更される可能性もあります。すでに制度を利用している人や、これから利用する予定の人は、NISA制度の概要と変更に関して、今後の流れに注意しましょう。
ロールオーバーの対象
現行のNISA制度でロールオーバーが認められているのは、『一般NISA』と『ジュニアNISA』のみです。投資期間が最長20年に設定されている『つみたてNISA』は対象にはなりません。
しかし、ジュニアNISAは2023年で終了するため、2024年以降は新規の購入ができません。ただし2024年以降でも、対象者が18歳になるまでは、そのまま非課税での保有が可能です。
また、詳しくは後述しますが、2024年からスタートする新NISAでは、ロールオーバーの仕組み自体がなくなります。2023年末までに投資した分に関しては、新制度とは別に現行制度が適用されることになるので、違いをしっかりと押さえておきましょう。
非課税期間終了後に取り得る選択肢
現行のNISA制度において、非課税期間終了後に取り得る選択肢は次の通りです。
- ロールオーバー(翌年の非課税枠に移管)
- 課税口座に移管
- 金融商品を売却
非課税期間終了後は、所定の手続きを行ってロールオーバーする方法と、課税口座へと移管する方法、購入していた金融商品を売却する方法の三択から選びます。
何も手続きをしなければ課税口座に移管され、運用益が課税対象となるので注意しましょう。
ロールオーバーができる条件と手続き
NISAでロールオーバーをするための条件と手続きを解説します。必要な条件は、現状のNISA口座を開設した金融機関で、新たに口座開設と手続きをすることです。
同じ金融機関で口座開設と手続きをする
NISAの非課税枠を移管するには、それまで運用してきたNISA口座のある金融機関に、翌年分のNISA口座を開設している必要があります。さらに、所定の期限までに手続きをしなければいけません。
前述の通り、期限までに手続きを完了しなければ、自動的に課税口座に移管されてしまいます。ロールオーバーによって運用資産を移管したいならば、期限を忘れないように注意しましょう。
期限や手続きは金融機関によって異なる
ロールオーバーの具体的な手続きや期間に関しては、口座を開設している金融機関によって異なるので注意しましょう。手続きのプロセスや期限に関しては、現行制度を利用している人ならば、すでに何らかの形で通知が来ているはずです。
ただし、金融機関によっては連絡が来ない可能性もあります。自分から積極的に情報を収集し、必要に応じて問い合わせをするなどして、確実に手続きできるようにしておくことが大事です。
NISAでロールオーバーするメリット
NISAのロールオーバーには、以下のメリットがあります。非課税枠の利用を続けたい人はもちろん、将来の資産価値の値上がりに期待して、売り時を見定めたい人にもおすすめです。
非課税を維持したまま資産運用ができる
ロールオーバーによって、さらに追加で5年間にわたり非課税での運用ができるので、節税しつつ資産運用が可能です。投資による運用益に課される税率は約20%と高いので、効率よくお金を増やしたい人にとっては、非課税のまま運用を続けられるのはメリットが大きいでしょう。
また、NISA枠で保有している金融資産の値上がりが将来的に期待できる場合には、ひとまず非課税枠で保有を続けておき、タイミングを見極めて売ることも可能です。
120万円以上でも全額ロールオーバーが可能
前述の通り、ロールオーバーを行えば、それまでNISA口座で運用してきた全額を移管できます。一般NISAの年間投資可能額は120万円ですが、NISAの非課税枠で購入した金融商品の時価が運用益を含め120万円を超えていたとしても、新たな非課税口座に全額を移せるので、節税効果は大きいといえるでしょう。
ただし上記のように、120万円を超えた額を移管すると、翌年の新規買い付けはできません。一方で、120万円を超えていない場合は、残額分で新たに金融商品の購入が可能です。(※現行の一般NISAでの新規購入は2023年末まで)
ロールオーバーの注意点
ロールオーバーは多くのNISA利用者にとってメリットが大きいですが、いかなる条件においても有利というわけではありません。どういった条件なら実行すべきか、自分なりの基準を持っておくことが大事です。
ロールオーバーしない方が有利なケースも
すでに運用益が出ており、今後もさらに購入した株式や投資信託などの値上がりが期待できる場合は、ロールオーバーで資産を移管した方が有利です。あるいは現状では含み損が出ているものの、今後回復が予想できる場合は、そのまま運用を続けた方が得になる可能性が高いでしょう。
一方、将来的に金融商品の値下がりが予想できる場合や、非課税枠を使って新たな金融商品を購入・運用したい場合は、現状の資産を課税口座に移したり、そのまま売却したりする方がよい場合もあります。
金融商品の値動きを予想するのは困難ですが、できる限りリスクを回避しつつ節税する工夫が必要です。
一般口座との損益通算ができない
NISA口座は運用している金融商品が値下がりした結果、損失が出てしまっても、一般口座や特定口座との損益通算ができません。
つまり、NISA口座と一般口座の両方で金融商品を運用しており、前者で損失が出る一方で、後者で利益が出た場合、一般口座で出た利益がそのまま課税対象となります。
NISA口座での損失は税金の計算上は存在しないものとされるので、運用状況によっては、非課税の恩恵をまったく受けられない可能性がある点に注意しましょう。
新NISAにおけるロールオーバー
2024年から新たなNISA制度がスタートします。非課税保有期間の無期限化により、新制度ではロールオーバーの仕組みそのものがなくなるので、現行制度との違いをよく理解しておきましょう。
2024年に「新NISA」がスタート
現行のNISA制度は2023年までとなっており、2024年からは新制度のNISAがスタートします。新制度においては、非課税投資枠や投資できる期間、非課税で保有できる期間などが見直されました。2023年末まで購入した金融商品については、新制度とは別枠で現行の非課税措置が適用されます。
また、『一般NISA』や『つみたてNISA』の名称もなくなり、新たに『成長投資枠』と『つみたて投資枠』が設けられ、併用も可能になります。
成長投資枠は年間で240万円まで投資でき、つみたて投資枠は年間120万円を上限に投資が可能です。両者を合わせると、年間で360万円まで非課税で投資ができることになります。
参考:新しいNISA|金融庁
参考:一般NISAの概要「非課税投資枠の扱い」|金融庁
生涯非課税限度額の新設と非課税保有期間の無期限化
新制度のNISAで特に注目すべきポイントは、『生涯非課税限度額の新設』と『非課税保有期間の無期限化』です。新NISAでは、合計で1,800万円まで金融商品の買い付けが可能で、購入した金融商品を売却した場合、その金額分だけ新たに買い付けができるようになります。
つまり、生涯にわたって1,800万円の非課税枠を使い続けられるわけです。なお、現行のNISA制度を利用している人も、1,800万円の枠をゼロから使えるので、現行制度のもとですでに投資をしている人は、1,800万円以上の非課税枠を利用できることになります。
また新NISAでは、成長投資枠とつみたて投資枠、いずれの非課税保有期間も無期限です。現行制度のような5年間や20年間という保有期間がなくなるため、ロールオーバーで非課税枠を移管する必要がありません。限度額までは、常に非課税で金融資産を運用できるのです。
このように、投資家にとってかなりプラスとなる変更点が多く、長期での資産運用を考えている人にもメリットが多い制度です。積極的に活用していきましょう。
現行制度から新制度へのロールーオーバーは不可
新制度のNISAでは、上記のように非課税保有期間が無期限となるため、ロールオーバーという仕組み自体が不要となります。
また、2023年末までに購入した金融商品については別枠で運用となり、現行制度から新制度のNISAへのロールオーバーはできないので注意しましょう。
ただし、ロールオーバーの仕組みを含め、今後さらに制度が変更される可能性もあります。金融庁のWebサイトを中心に、情報収集を欠かさないことが大事です。
参考:新しいNISA|金融庁
構成/編集部
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いよいよ、2024年1月から新しいNISAがスタートします。新しいNISAは、利用しないともったいないと言われる、資産運用をサポートする魅力的な制度。新NISAでは、年間の投資枠が大幅に増え、投資商品の非課税期間が無期限となります。
また、非課税保有期間や口座開設期間の制限が緩和され、より柔軟な運用が期待できます。とはいえ、投資初心者にとっては、不安も多いはず。そこでDIME編集部では、10月14日(※関西・東海地区の一部書店は10月13日)に発売されるDIME12月号にて、新NISAが気になっている方、本気で資産運用を始めたい方のために、無理なく資産を運用できる方法を、第一線で活躍している投資のスペシャリストたちに解説していただきました。また、特集では資産80億円を稼いでいる注目の投資家・テスタさんも登場。初心者のための「投資の鉄則5か条」を指南しています。
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