アップサイクルで多くの企業が連携する仕組みづくり
今年2月、一般社団法人アップサイクルが設立された。廃棄される資源の利活用を推進する企業連携のプラットフォームという位置づけで、設立の音頭をとったのはネスレ日本(株)。
同社は以前から、リサイクル可能な製品パッケージの開発や、プラスチック使用量の削減など、環境負荷の低減とサーキュラーエコノミーの構築に取り組んでいた。例えば、「キットカット」のプラスチック製の外袋は、2019~2020年にかけて紙パッケージへと転換している。そこで、使用済みの紙パッケージをどうするかという課題が生まれ、これを解決すべく、日清紡グループと協働の末、生地素材となる紙糸の開発にたどり着く。
ネスレ日本は、空きパッケージを回収するボックスを全国 10 箇所に設置。そこから集まった素材をもとに紙糸を作り、Tシャツやエプロンにアッププサイクルした。これらの衣類は、直営店の従業員のユニフォームとして使用するという小さな出発であった。
この試みによって、コストと持続性という新たな課題が出てきた。2社だけでは、その課題の解決は困難であると、多くの企業が連携したプラットフォームづくりという構想が生まれ、一般社団法人アップサイクルの設立へとつながった。これには2023年10月時点で28社が参画し、広がりを見せている。
同法人の最初の成果は「TSUMUGI」。これは、工場の廃紙や六甲山で間伐して放置されていた樹木から作られた紙糸となる。軽くて柔らかく、吸湿性に優れており、衣服の素材としての活用が見込まれている。アパレル業界は、衣類の化学繊維に含まれるマイクロプラスチックによる海洋汚染といった問題を抱えており、「TSUMUGI」は、こうした環境負荷を軽減できるという効果も期待されている。
一般社団法人アップサイクルの最初の成果となった「TSUMUGI」
近現代の資本主義の必然として、大量生産、大量消費、そして大量廃棄を生み出す社会が形成されたが、もはや限界に近いことは多くの人が認識している。持続可能な世界への転換の一方策として、アップサイクルのトレンドは加速していくことが期待される。
取材・文/鈴木拓