ChatGPTが注目を集めるのに伴い、昨今耳にする機会が増えた『プロンプト』ですが、意味を正しく理解できていない人もいるのではないでしょうか?プロンプトの意味や種類とともに、プロンプトを作成する上で重要なポイントや主な活用法も見ていきましょう。
ChatGPTのプロンプトの意味と種類
プロンプトとは、どのような意味なのでしょうか?ChatGPTにおけるプロンプトの意味を紹介します。また、プロンプトは複数のパターンに分かれるため、それぞれの種類についても確認しましょう。
ChatGPTに送信するテキスト
ChatGPTにおけるプロンプトは、ChatGPTに送信するテキストを指します。文章の作成や翻訳の依頼、質問などをしたい場合、ユーザーはChatGPTにテキストで指示や質問を入力する仕組みです。そのテキストをプロンプトと呼びます。
例えば、「フランス語でありがとうは何と言いますか」と質問する場合は、この質問のテキストがプロンプトです。
なお、プロンプトは『促し』『指示』という意味を持つ英語『prompt』が元になっています。ChatGPTにおけるプロンプトとは逆ですが、コンピューターのプログラムがユーザーに対して入力を促すという意味もあります。
ChatGPTのプロンプトの主なパターン
ChatGPTプロンプトには、大きく分けると三つのパターンがあります。『命令(Instruction)』は、ChatGPTにやってほしいことを具体的に指示するプロンプトです。例えば、「アメリカの首都を教えてください」などが該当します。
『補完(Completion)』は、後に続くテキストを補い文章を完成させてほしい場合に使うプロンプトです。例えば「日本における英語教育は、」と入力すると、その続きのテキストが自動的に作成・表示されます。
『実演(Demonstration)』は、入力したテキストの例を基に何らかの憶測をしてもらうプロンプトです。例えば、「リピーターが多い=強み、新規の顧客が少ない=弱み、資金が多い=強み、人材が不足している=」のように入力すると「弱み」と回答した上で、それぞれの要素に対して解説を提示します。
プロンプトはなぜ重要?
ChatGPTを使う上でプロンプトが重要であると聞いたことがあっても、その理由が分からないという人もいるでしょう。なぜ重要だとされるのか解説します。
回答の質を上げるため
プロンプトが重要な理由は、入力するプロンプトの精度によって、引き出される回答の質が大きく異なるためです。自分が必要としている的確な回答を得るためには、適切なプロンプトを作成する必要があります。
多くのAIチャットツールには、使用する状況に合わせた文章のトーンや回答形式の調整など、複数の機能メニューが備わっています。一方でChatGPTには、機能メニューがありません。
シンプルで使いやすいのがメリットですが、機能メニューがない分、表現方法や回答形式などの条件を具体的に設定するプロンプトを作成することが、質の高い回答を引き出す上で重要なのです。
効果的なプロンプトを作成するには
ChatGPTから質の高い回答を得るためには、具体的にどのような点に気を付けてプロンプトを作成すればよいのでしょうか?効果的なプロンプトを作成する上で大切なポイントを紹介します。実際に作成する際の参考にしましょう。
具体的な指示・条件を出す
ChatGPTから満足できる的確な回答を得るためには、プロンプト内に具体的かつ明確な指示や条件を含めることが大切なポイントです。
例えば、「楽曲がヒットしたシンガーを教えてください」では具体性に欠けるため、的確な回答が得られない可能性が高いでしょう。「1980年代にアメリカで楽曲がヒットした女性シンガーを5人教えてください」のように、年代・場所・条件などを絞り具体的に伝えることで、知りたい情報を得られます。
文章を作成してもらう場合にも、単に「○○についての文章を作成してください」とするのではなく、「○○について××の話題を含めて説明する文章を300字以内で作成してください」とすることで、自分の望む回答を引き出しやすくなるでしょう。
ChatGPTに特定の役割を与える
ChatGPTに特定の役割を設定するのも、プロンプトを作成する上で効果的です。専門家・教師・医師・弁護士など、与えられた役割の立場から分かりやすく説明をしてもらえます。
例えば、「相対性理論について教えてください」とすると、専門用語が並び理解するのが難しい回答が返ってくるケースも珍しくありません。一方、「あなたは分かりやすいと評判の物理の先生です」のように特定の役割を与えることで、分かりやすい表現を用いた回答が得られる可能性を高められます。
表現方法・回答形式も指定する
自分の望む回答を得るために、表現方法を指定するのも効果的な方法の一つです。例えば、専門性が高く難しい質問の場合は、「小学生の子どもでも理解できるように」と指示することで、分かりやすく理解しやすい表現を使った回答が得られます。
また、対話形式・表形式・箇条書きなど、回答形式を指定するのも、回答の質を上げるために効果的です。例えば、ある物事に対する強みと弱みを知りたい場合は、箇条書きや表形式を指定することで、読みやすさや理解のしやすさが高まるでしょう。
欲しい回答に近づくまで質問を繰り返す
具体的に指示や条件を出しても、満足のいく十分な回答が得られないケースもあります。そういった場合は、欲しい回答に近づくまで何度も質問を繰り返しましょう。
欲しい回答に早く近づくためには、それまでの経緯を含めることが大切です。すでに得た回答に新たな条件などを付け加え質問を重ねることで、より高い精度の回答に近づきます。
例えば、まず「2022年にヒットした楽曲名を教えてください」と質問し、回答を得ます。次に「上記の結果の中で、女性シンガーの楽曲だけを教えてください」と質問するといった方法です。
このように、すでに得た回答を踏まえて質問を繰り返すことで、欲しい情報により早く近づけるでしょう。
プロンプトデザインの利用もおすすめ
効果的なプロンプトを作成するポイントを踏まえた『プロンプトデザイン』というものがあります。効率的にChatGPTに対するプロンプトを作成できるため、利用してみるのもよいでしょう。代表的な二つのプロンプトデザインを、基本的なフレームワークの具体例とともに紹介します。
深津式プロンプト
『深津式プロンプト』は、深津貴之氏(note株式会社CXO、株式会社THE GUILD代表取締役)によって考案されたフレームワークです。質問のたびに立場や条件を変更することでChatGPTへの指示を明確にでき、質の高い回答を得られる特徴があります。
例えば、文章の要約や作成に効果的な基本のフレームワークは、『命令書・制約条件・入力文・出力文』という4項目に分けて入力します。
【例】
#命令書
あなたは優れたライターです。
以下の制約条件と入力文を基に文章を作成してください。
#制約条件
・500字以内
・中学生にも分かりやすい簡潔な文章で
#入力文
温暖化について
#出力
タイトル:
文章:
ReActプロンプト
『ReActプロンプト』は、ユーザーの質問に対し『推論(Thought)→行動(Action)→観察(Observation)』の3ステップで回答を導き出すのが特徴です。推論を踏まえた行動を経て最終的な観察につながっているため、このプロセスを繰り返すことで、より質の高い回答が得られます。
【例】
温暖化を解決する方法を教えてください。
Thought:
Action:
Observation:
最初に得た回答を踏まえて、さらに質問を繰り返すことも可能です。例えば、「上記の内容を踏まえて、日本国内でできる解決策を教えてください」といったフィードバックを返すことで、回答の精度を高めていけるでしょう。
ChatGPTのプロンプトの活用例
ChatGPTはさまざまな分野で活用できますが、具体的にどのような場面が考えられるのでしょうか?主な活用例を四つ紹介します。うまく使いこなせれば、仕事の効率化などに役立つでしょう。
議事録の作成
OpenAI社が開発した音声認識モデルである『Whisper』をChatGPTと併用することで、議事録作成の自動化が可能です。Whisperは音声データを文字データに変換できるツールで、精度の高さに定評があります。
音声から文字にしたデータをChatGPTに入力して議事録の作成を依頼すれば、簡単に作成できます。音声データがあれば可能なので、対面での会議だけでなく、オンラインや電話を用いた会議などでも活用できて便利です。
誰かが時間と手間をかけて議事録を作成する必要がなく、仕事の効率化につながるため、職場で重宝されるでしょう。
文章の要約
文章の要約は、ChatGPTの得意分野の一つです。一から文章を作成するのとは違い、すでにある文章の要約のため、高い精度の仕上がりが期待できます。文字数や表現方式など目的に合った条件を指定することで、満足のいく仕上がりに近づけられるでしょう。
文章の要約は、ニュースの概要を知りたい場合などに便利です。長文の記事をじっくり読む時間がなく、概要や重要なポイントだけを知りたいときにChatGPTに要約してもらうことで、手間をかけずに記事の概要を把握できます。書類や参考文献の内容を要約して、誰かに伝える必要がある場合にも役立つでしょう。
文章の翻訳
ChatGPTは、文章の翻訳にも活用できます。自然言語処理技術により高い精度の翻訳が可能です。英語‐日本語間の翻訳だけではなく、イタリア語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・中国語など、多言語に対応しています。
例えば、職場で海外とビジネスメールのやり取りをしたり、外国語の書類を読んだりする機会が多いのであれば、ChatGPTを用いて翻訳することで、自分で翻訳する手間が省けます。知らない単語があっても辞書で確認する必要がないため、読解にかかる時間を大幅に削減できるでしょう。
プログラムのバグの発見
ChatGPTのプロンプトを使ってプログラミングコードを入力すれば、バグを見つけることも可能です。実際にプログラムコードをチェックしてバグを見つける必要がため、時間や手間がかかりません。
またバグを見つけるだけでなく、改善点や修正案の提示を指示することも可能です。改善を行いコードに反映するように依頼すれば、実際に改善された新しいコードが出力されます。メンテナンスしやすいコードや初心者でも扱いやすいコードなど条件を指定すると、状況や目的に合ったコードを手に入れられるでしょう。
ChatGPTを活用することで、自分では思い付かないコードに遭遇でき、新しい発見や学習につながるというメリットもあります。
構成/編集部