Project Kuiper(プロジェクト カイパー)
通信ができない地域とは、一般的に「光回線が敷設されていない」「携帯電話の電波が届かない」などの理由で生まれる。そのようなことをふまえ、基地局を宇宙に配置し、圏外をなくそうという計画が進行中だ。アマゾンの「Project Kuiper」もそのひとつ。
地球から比較的近い低軌道(地上から590〜630km)に多数の通信用衛星を打ち上げ、世界中を覆うようにエリアをカバーする構想だ。初期計画では3236基の衛星が軌道に配置されるという。
固定回線の代わりとして家や企業などに据え付ける専用アンテナのほか、18cm角の小型アンテナも開発中。キャンプなどアウトドアの利用も想定されている。
通信速度は下りで最大100Mbpsから1Gbpsの想定で、サービスの種別やアンテナによって変わる模様。2024年末までの開始を目指して準備が進む。
同様のサービスとして「Starlink」があり「Project Kuiper」は後追いだ。「Starlink」は2023年6月の段階で4595基の衛星を軌道投入済み。アマゾンは、自社利用も含めて提供の準備を進めていく中で「Project Kuiper」を、ビジネス的にはどう「Starlink」へ対抗させるのかが重要。そこはまだ不明確だ。
衛星通信は基本的に業務向けだが、キャンプやクルージングにおける通信環境の改善につながる可能性は大。「Starlink」の1強からようやく競争が生まれ、価格面などで変化も出そう。
地球低軌道に衛星を配置して通信網を確保
アマゾンによって打ち上げられる3236基の衛星が配置されるのは、GPSに使われるMEO(中高度軌道)よりも地上に近い低軌道エリア。現在は、米国フロリダ州にあるケネディ宇宙センターに、同プロジェクトの衛星に関連する施設の建設が、着々と進められている。
サイズ違いの通信端末を展開予定
受信端末は、最大1Gbpsの大型(482.6×762mm)、最大400Mbpsの一般家庭および中小企業向け(279.4×279.4mm)、持ち運んで野外で使用可能な小型(177.8×177.8mm)という3種類を展開予定。
取材・文/西田宗千佳