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有酸素運動と脳トレのセットで脳の健康維持と運動不足を解消!二刀流ウェルネス施設「カノップ」が東京都内にオープン

2023.10.16

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

コシダカが推進している、楽しみながら健康寿命を延ばすことを目的にウェルネスとエンターテインメントを掛け合わせた「ウェルテインメント」事業を体現した施設が、60代以上のシニアを対象にした「脳トレ×運動プログラム」を提案するスタジオ「カノップ」。昨年オープンした前橋本店に次ぎ、都内初となる「カノップ 雪谷大塚店」が10月10日にオープンした。

脳トレの生みの親・川島隆太氏監修の「脳活×有酸素運動プログラム」

世界の認知症有病数は現在約3560万人に上り、2050年までに3倍の1億1540万に増えると予測されている。太陽生命が行った「認知症の予防に関する意識調査」のアンケートでも、最もなりたくない病気は「認知症」が42.6%とトップで、2位の「がん」(28.7%)を大きく上回っている。

「超高齢化社会にあたり、健康寿命の延伸を考えていくうえでも、高齢者自らが認知症予防のために能動的に行動し、介護の必要なく可能な限り長く自立して暮らすことが望まれます。調査では認知症について関心があるものとして『予防』がトップに挙がっていますが、実際に予防対策を行っている人は少数というのが現状です。

カノップでは楽しく健康寿命を伸ばすための施設として、脳トレと運動プログラム、お客様同士のコミュニケーションの3つを掲げています。

最初に脳健康ステーションの機器を活用し脳年齢や脳健康年齢の計測、下半身の動作など運動機能も計測します。計測結果を基に利用者の課題を見つけてカウンセリングし、ロコモ予防体操、チューブ体操、ストレッチ、脳活と有酸素運動を組み合わせたものなど、利用者の課題に合わせて、月間で約300本のプログラムを提供します。

20分ほどの有酸素運動をすると、神経細胞の発生や成長、維持や再生を促す『BDNF(脳由来神経栄養因子)』という物質が出るといわれ、プログラムも最初に有酸素運動を入れて、その後に脳トレを行うようにしています」(コシダカ ウェルテインメント開発部 熊本嘉一郎氏)

継続的に通って習慣化してもらうことを目指しているため、空き時間や買い物ついでなど、いつでも立ち寄ることができるよう服装は自由。普段運動をしていない人や、新型コロナで運動習慣が途切れてしまった人などに対し、シニア層が気軽に通えるサービスを構築したいと、月会費は1日1プログラム参加可能の「お試しプラン」(7678円)、1日2プログラム参加可能の「カノッププラン」(9878円)、本数制限なしの「カノ放題プラン」(1万2078円)の3タイプを用意している。

「昨年立ち上げた前橋の1号店では、今まであまり外出したことがなく暗い表情だった方が、体験プログラムを経て入会から2週間から1ヶ月が経過すると、あか抜けるというか表情が変わってきたんです。退会者が少なく継続率が高いのも特徴で、楽しんでいただいているのだと感じています。

プログラムを一緒に行うお客様同士のコミュニケーションも促しますので、孤立しがちなシニアの方でもつながりができやすいことが支持された理由の一つだと考えています。

脳トレというと、認知症対策とか介護レクリエーションのようなイメージを持たれる場合も多いですが、我々は脳トレもブティックスタジオのような、かっこよく通える場所にしたいと考えています。

内装もヨガスタジオのようなスタイルで、シニアの方々が『ちょっとスタジオ行ってくるよ』という感じで、20分だけやってくる、2本分40分やってから帰るとか、習慣として生活の中に組み込みやすく、周りの友人にも自信を持って言えるような場所にしたいと思っています」(熊本氏)

〇脳健康ステーション

初めての利用者と、会員が月1回を目安に行う脳健康ステーション。「頭の回転」「注意力」「記憶力」といった認知機能を実際にセンサーで脳を測りながら簡単なゲームをすることで、 現在の「脳年齢」「脳健康年齢」を計測する。

脳健康ステーションの結果や、普段の生活スタイル、目指したい希望をヒアリングし、理想の状態に近づけるよう最適なプログラムをインストラクターが提案。定期的に健康計測を行い、目標を立てることでやる気の継続につなげていく。

筆者が計測した結果は、「脳健康年齢」が実年齢より9歳若い「47歳」。記憶力は高いが、注意力が実年齢より劣っていることがわかった。

〇脳活×有酸素運動プログラム

カノップ雪谷大塚店では、「NeU」取締役CTOで、「脳トレ」の生みの親として知られる医学博士の川島隆太氏監修の「脳活×有酸素運動プログラム」を提供する。脳センサーを活用したプログラムで、脳の活性度合いを可視化することで、より分かりやすく効果が実感できる。

脳には「処理速度」「作動記憶」が備わっており、頭の回転である処理速度はパソコンに例えるとCPUで、作動記憶とはメモリにあたる。

脳活×有酸素運動プログラムでは、処理速度と作動記憶の2つを鍛える「脳活×有酸素運動~処理速度~」「脳活×有酸素運動~作動記憶~」を用意。

処理速度ではいかに速く脳に入ってきた情報を処理できるかを測るもので、簡単な計算を何秒間にどのくらいできるか、決められた時間内にどこまで音読できるかなどのプログラムがある。作動記憶は一時的に記憶できる容量を測るもので、画面に表示される計算問題の答えを覚えながらn個前(Nバック)の数字を答える「Nバックトレーニング」などがある。

「処理速度」と「作動記憶力」の2つをトレーニングすることで、情報を処理するのが速くなったり、作動記憶力が鍛えられたりするだけでなく、そのほかの脳の認知機能にも良い影響をもたらすことがわかっており、注意力や集中力、判断力、想像力、論理的思考など、年齢とともに衰える他の能力も再び開花させることができると言われている。

脳活×有酸素運動プログラム、脳健康ステーションで使われているのが、川島氏が開発に携わった、脳トレ中の脳活動(血流量)を画面上の色の変化でリアルタイムに表示し、自分の脳活動を認識しながら自身にフィードバックする新「ニューロフィードバック型脳トレ」。

川島氏が行ってきた様々な脳トレで、脳年齢が若返るか場合とそうではない場合があり、この差の原因を研究する中で、左頭部にある背外側前頭前野が活性化した状態で脳トレを行うと成果が出やすいとわかった。

背外側前頭前野にあたる左眉の上に小型脳センサーXB-01をバンドで固定して脳トレを行い、脳活動の状態を可視化することで、利用者本人が確認できる。

リラックスしている時はパーセンテージの低い青い状態になり、集中したり、考えたりしている時は活性状態が黄色から赤に変わっていく。

脳活×有酸素運動プログラムの一部を体験した。XB-01を頭に装着し、メーターが表示される端末を首にかけ、プログラムの途中で、利用者自身で脳活動の状況がチェックできるようになっている。安静時の脳活動を基準とする為、プログラムの始めに「キャリブレーション(安静時脳活動時測定)」を行い、以降の脳活性度合いを計測しながらプログラムを体験。

深呼吸でリラックスしてから、簡単な計算、制限時間内での音読、例えば「う」が頭につく言葉を互いに言っていくといった脳トレを行う。

ゲーム感覚でできるので面白さがあり、「珍回答」が出て思わず大爆笑してしまうなど、利用者同士のコミュニケーションも楽しい。

〇各種プログラム

「脳活×有酸素運動」のほか、運動機能障害を予防する「ロコモ予防体操」、チューブを活用した全身の筋力アッププログラム 「チューブde筋肉体操」、ストレッチ運動を中心とした「歪み改善ストレッチ」「血行改善ストレッチ」など10種のプログラムがあり、個々の状態や目的に合わせて選ぶことができる。

「マシンを使った運動だと体に負担がかかるため、自重や、自身で負荷をコントロールできるチューブを使って、シニア層でも無理なく運動できるプログラムを用意しています。どのプログラムでも気軽に参加できるように、1つのプログラムは20分になっています。

脳活×有酸素運動は処理速度、作動記憶の2種類、ストレッチは体の歪みや血行を改善するもので、血行改善ストレッチは終わった後には足の動きが楽になったと感じられます。チューブや椅子を使った筋肉運動は、プログラムを終えると筋肉を使ったと実感できる内容になっています」(熊本氏)

【AJの読み】脳の健康維持と運動不足を解消する二刀流ウェルネス施設

カノップを運営するコシダカは、国内外に展開している「カラオケまねきねこ」の事業で知られているが、温泉&リラクゼーション施設の温浴事業も展開しており、カノップは同社の強みであるエンターテインメントとウェルネスを掛け合わせた「ウェルテインメント」事業となる。

「まねきねこ店舗は、郊外店で利用者が大幅に減った時期がありましたが、シニアの方たちはそんな時期でも一人カラオケなど、継続的に使われていました。シニアは来店頻度が高いリピーターも非常に多く、そうしたシニア層の方々に向けてさらに良いサービスはないかと模索していました。

当初はまねきねこ店舗の中に脳健康ステーションを置いて、カラオケに来た時に脳トレもやっていただくことを試みましたが、シニア層の健康意識の高まりもあり、脳トレと有酸素運動を組み合わせた独立した施設を作ることになりました」(熊本氏)

健康な高齢者でも、外出機会が減り運動不足になったり、一人暮らしで人と話す機会がないという環境が続けば、運動器の衰えで立つ、歩くといった移動動作が低下するロコモティブシンドロームや、運動器、消化器官、脳なども含めた全身の機能低下のフレイルになる可能性もある。ロコモ・フレイルは寝たきりや要介護になりやすく、自覚のないまま認知症が発症、進行する可能性もある。

脳の健康維持と運動不足を解消する二刀流のウェルネス施設であるカノップは、同年代のシニアと交流できるコミュニケーションの場としても機能する。超高齢化社会を迎える中で、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる「健康寿命」を延ばすきっかけを提供する施設として、今後の展開が注目される。

文/阿部純子

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