地方自治体のキャッシュレス対応。
「日本はキャッシュレス後進国」と呼ばれ、地方では未だキャッシュレス決済に対応していない店舗も確かに存在する。が、一方で地方自治体のキャッシュレス対応は急速に進んでいる。
最も先鋭的な取り組みを実行しているのは、埼玉県だ。県収入証紙の廃止に伴い、来年を目処に窓口の現金対応を終了する。即ち、埼玉県は完全キャッシュレス対応に移行するということだ。
「ユニバーサルサービス」を基本とする日本の行政において、これはまさに「大英断」ではないか。
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「理想と現実」の狭間のユニバーサルサービス
まず、「ユニバーサルサービスとは何か?」をおさらいしていこう。
民主主義国家では、その国に市民権があれば誰しもが等しく享受できるサービスを常時設けなければならない。住んでいる地域や出身、年齢等の理由で明確なサービス格差があってはまずい、ということだ。
郵便はその代表例である。「山間部だから郵便物を届けられない」ということは、本来ならあってはならない。「本来なら」とわざわざ付け加えるのは、やはり採算の取れない局もあるからだ。
このように、ユニバーサルは「理想と現実」の狭間にはまりやすいものでもある。
今回の話題の場合、行政としては収入証紙即ち現金決済の窓口を残しておくべきという声もあるだろう。「スマホもクレカも交通系ICカードを持っていない人はどうするのか?」という考えがあり、さらに言えば日本という国では「できない人」に合わせる仕組みを考える者が「より冷静で中立的」ということで一目置かれやすい。
が、それでも収入印紙・地方収入証紙の歴史的役割はもはや終わろうとしている。
収入印紙の「歴史的役割」
収入印紙は「突然の課税」に対応できる唯一の手段だった。
たとえば、イギリス植民地時代のアメリカは宗主国から巨大な課税を強いられていた。様々な出版物、公文書、果てはトランプにまで印紙を貼ることを強要され、それがアメリカ独立戦争へとつながっていく。
市民の感情はともかく、徴税に関する仕組みを単純化する上で印紙の右に出るものはなかった。しかし、それも今や昔話。現代ではキャッシュレス決済が普及し、「印紙を買う手間」が問題視されるようになったのだ。
印紙は基本的に現金でしか購入できない。これは単に「面倒くさい」という感情を突き抜け、曜日や間近にあるATMによっては手数料を払ってでも現金を引き出さなければならない事態を招いてしまう。
が、手数料を印紙ではなくキャッシュレス決済で支払えるのなら、そのような苦悩をせずに済む。