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幹細胞治療で1型糖尿病が寛解する可能性、トロント大学研究報告

2023.10.18

幹細胞治療で1型糖尿病が寛解する可能性

1型糖尿病患者に対して、幹細胞由来のインスリン産生細胞を移植するという新たな治療法の可能性を示した、トロント大学アジメラ移植センター(カナダ)のTrevor Reichman氏らの研究結果が、第59回欧州糖尿病学会(EASD2023、2023年10月2~6日、ドイツ・ハンブルク)で発表された。

1型糖尿病は、膵臓内のランゲルハンス島にあるインスリン産生細胞(膵島細胞)の機能が失われることで発症し、発症後には1日数回のインスリン注射、またはインスリンポンプによる治療が必須とされる。

しかし、今回報告された新たな研究が実を結べば、1型糖尿病患者の一部はそのようなインスリン療法が不要になるかもしれない。

この研究は、同種幹細胞由来の細胞療法として開発中の「VX-880」を用いて行われた。幹細胞とは、さまざまな種類の細胞に変化して、指数関数的に増殖する能力を備えた細胞のこと。

VX-880の場合、幹細胞由来の膵島細胞を研究室内で数週間かけて増殖させた後、点滴によって患者へ移植する。投与後には完全に分化した機能的膵島細胞として、インスリンの分泌を開始する。

「この手法は1型糖尿病の完治につながる可能性があり、今回の研究成果はその目標への大きな前進だと信じている」とReichman氏は語っている。

発表によると、この研究は1型糖尿病患者6人に対して行われ、全員がインスリンの必要量が減り、かつ重度の低血糖を起こさなくなる一方、HbA1cは低下して推奨される範囲内のコントロールが達成された。

さらに、一部の患者はインスリン注射が不要になった。Reichman氏は、「研究に参加した患者は全員、血糖コントロールの困難な状態が長年続いており、重度の低血糖を来すリスクや生命にかかわる合併症を抱えていた。示された結果は、患者の人生を変える衝撃的なものと言える」と強調している。

これらの有効性が、投与後どれくらいの期間続くのかはまだ不明だ。ただし、Reichman氏によると、「追跡期間が最も長い患者は現在約2年経過したが、いまだインスリン非依存状態(生存のためのインスリン療法は不要な状態)を維持している」という。研究は現在も引き続き進行中だ。

VX-880の安全性に関しては、これまでのところ重篤な副作用は報告されていない。しかし拒絶反応を防ぐために、免疫抑制薬の服用が必要とされる。

Reichman氏はその点について「潜在的なリスクが存在する」とし、「免疫抑制薬を必要としない治療法を開発することも、今後の目標だ」と述べている。

なお、これまでにこの研究の対象とされたのは18~65歳の成人だが、将来的には子どもを対象とする研究も行う可能性があるという。

米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の糖尿病ケアセンター長であるJohn Buse氏は、報告されたこの治療法について「かなりうまくいくようだ」と論評。

また、「この治療法の重要なポイントは、移植に用いるインスリン産生細胞の供給源を得るための臓器提供者を必要としないという点にある」と解説する。

そして、「治療後の患者は免疫抑制療法を継続しなければならないが、重度の低血糖のリスクを抱えながらインスリン療法を続けなければならない状態の患者にとって、それは合理的なトレードオフと言えよう」と付け加えている。

なお、本研究は、VX-880の開発企業であるVertex Pharmaceuticals社の援助を受けて行われた。また、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2023年10月4日)

Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

(参考情報)
Abstract/Full Text
https://cattendee.abstractsonline.com/meeting/10899/presentation/1140

構成/DIME編集部

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