AIに関するニュースや検索システムの情報を見ていると、『自然言語処理』という言葉が散見されます。自然言語処理とは、どのような処理を指すのでしょうか?言葉の意味や注目されている理由、活用例を紹介します。処理の仕組みについても確認しましょう。
そもそも自然言語処理とは?
『自然言語処理(Natural Language Processing)』は、英語の頭文字を取って『NLP』とも呼ばれる近年注目を集めている技術です。IT用語としての『自然言語処理』の概要や意味を解説します。
人間の言語をAIが処理・分析する技術
『自然言語』とは、人間が日常的にコミュニケーションに用いている言葉です。日本語だけでなく、世界各地で使われているさまざまな言語が該当します。普段使っている言葉を、コンピューターに処理・分析させる技術や研究分野が『自然言語処理』です。
通常、コンピューターは数列や特定のプログラミング言語を使って処理や分析を行いますが、自然言語処理が可能な『AI(人工知能)』に対しては、人間が普段使っている言葉で命令や指示ができます。
人工言語との違い
一般的に、コンピューターに命令・指示を出すには『人工言語』を使います。人工言語自体の意味は『人間が人為的に作り上げた言語』ですが、IT用語として使う場合には、主にプログラミング言語を指します。
プログラミング言語には数式・数値・アルファベットが含まれ、コンピューターが理解できる形で作られているのが特徴です。人間が使う日本語や英語などとは異なり、ある一定の法則に従って入力します。
プログラミング言語は法則やルールを理解し、使い道を把握している人が活用できる言語です。JavaScriptやPHPといった複数の言語があり、言語によって目的や対応するOSが異なります。
自然言語処理が注目される理由
自然言語処理は、いったいなぜ注目を集めるようになったのでしょうか?AIが活用されるようになった背景や、理由を確認しましょう。今後はさらに、活用の場が広がっていく可能性があります。
テキストデータの増加
インターネット上のテキストには、消費者の動向や希望が含まれています。インターネット上のテキストが増加し、収集・分析によって企業活動に役立てられるようになったのも、自然言語処理が注目を集める理由です。
AIやIT技術がある程度発展するまでは、テキストデータの調査・分析のために人間が内容を精査していました。しかし、膨大なデータを確認するのは骨が折れる作業です。
自然言語処理を活用すれば作業時間を格段に短縮でき、圧倒的に大きなデータを取り扱えます。人工言語であっても、特定の単語の抽出や一定の法則に従ったカテゴリ分けは可能ですが、より複雑な命令・判断が可能となる自然言語処理が注目されているのです。
労働者の不足や技術力の向上
労働者の不足や、人を配置すると採算が取れない業務では、自然言語処理による技術の活用が広まりつつあります。企業は自然言語処理を含むDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めており、今後も需要は高まっていく目算です。
例えばチャットボットの活用では、コールセンターや問い合わせへの対応の負担を軽減できます。顧客からの質問に対する回答や、簡単な判断であればAIでも可能です。
自然言語処理を活用した言語モデルの研究が進み、顧客対応や業務効率化に対するコストパフォーマンスや処理性能が上がったことも、注目が集まっている理由といえるでしょう。
実は身近な自然言語処理技術
『自然言語処理』とだけ聞くと、どのような技術なのか判断しにくいかもしれません。自然言語処理を活用したサービスの中には、普段使っているスマホやパソコンで活用できる身近な技術も存在します。主なサービスを確認しましょう。
大きな注目を集める「ChatGPT」
自然言語処理を活用した大規模言語モデルをサービスとして提供する『ChatGPT』は、アメリカのOpenAI社が開発しました。AIとのチャットを通して、文章の生成・翻訳・要約などが可能となっています。質問への回答、テキストデータの学習を生かした機械翻訳など、さまざまな使い方ができるチャットサービスです。
機能拡張のためのプラグインを使うとさらに活用の幅が広がり、画像や動画の生成も可能になります。ChatGPTには複数のバージョンがあり、機能や料金はそれぞれ異なるため事前に確認が必要です。プラグインの使用や業務への活用を考えている場合は、有料版の利用が適しているでしょう。
自治体や学校でもChatGPTを導入しているケースが増えており、企業の業務効率化にも貢献しています。
Siriなどの「音声対話システム」
近年研究・開発が進んでいる分野に、音声対話システムがあります。iPhoneに搭載されている『Siri』や、音声AIとして販売されている『Alexa』などが、音声対話システムを活用した一例です。
音声対話システムは利用者の話を聞き取り、検索結果の表示・電化製品のオンオフ・質問への回答など多様な動作をします。どこまでの処理ができるかはシステムの設定次第ですが、活用によって生活が便利になるでしょう。
話しかけるだけで応答や処理が可能で、入力ができない場合や手がふさがっている場合も、スムーズに使えるのが特徴です。
Google翻訳などの「機械翻訳」
Google翻訳やDeepL翻訳などの機械翻訳でも、自然言語処理が活用されています。言語を入力または音声入力すると、他の言語に自動で翻訳してくれる便利なサービスです。
別の言語に翻訳するには、入力した言語の意味を理解し、別の言語へ置き換えなければなりません。サービスごとに翻訳の仕組みは異なりますが、自然言語を処理できる性能を備えていなければ、正確な翻訳は成り立たないでしょう。
かつての機械翻訳は限られた言語や短文・単語程度の翻訳に限定されていましたが、技術の向上を受け、近年では自然で正確な翻訳が可能になりつつあります。
Yahoo!などの「検索エンジン」
各社が公開している検索エンジンでも、自然言語処理が活躍しています。
入力した単語だけに反応して検索結果が出ているように見えますが、それだけではありません。誤字脱字やうろ覚えの単語であっても最適な結果が出てくるのは、機械学習によってシステムが文章の意図を推測できるようになっているからです。
単語が一致していなくても共通する話題や類語が表示されるなど、あいまいなワードによる検索にも対応しています。
例えばGoogle検索では、『BERT』と呼ばれる自然言語処理技術が使われています。独自の機械学習によって精度を高め、ユーザーにとって最適な検索結果が表示されるよう考えられているシステムです。