安藤忠雄氏だけでなく日本の建築についても深く学べる企画
Google Arts & Culture は、日本人建築家の安藤忠雄氏を特集するページ「The Self Taught Architect」を10月2日に公開した。
現役の建築家としても日本人建築家としても初の特集ページとなる本ページは安藤忠雄氏、及び安藤忠雄建築研究所の協力の元、数年の歳月をかけ作り上げたものだという。
本特集では、安藤氏のこれまでの経歴や建築を志したきっかけはもちろんのこと、その建築における哲学と功績、与えた影響について触れながら、長きにわたって同氏が取り組んできた社会活動にも焦点をあて、安藤忠雄という人物を包括的に紹介。
Googleでは「初期作品である住吉の長屋から、世界各地の美術館、住宅プロジェクトの3Dイメージなどをストーリーや高解像度の画像、ストリートビューなどを通して、安藤忠雄氏だけでなく日本の建築について深く学ぶことができます」と説明している。
今回の特集ページ公開にあたり、安藤忠雄氏から次のようなコメントが届いている。
今、私たちは極めて変化の激しい不安定な時代を生きています。
そして皆、「この世界がどこに向かおうとしているのか」と、答えを必死で探しています。
しかし、こんな時だからこそ、考えるべきは、変わりゆく世界の中でも変わらない、あるいは、変わるべきではない、人間文化の本質、原点ではないでしょうか。
時代の潮流を読むばかりでなく、ときには自ら流れをつくり、路を切り拓いていく覚悟と勇気が必要です。
若い人たちには、とにかく今を精一杯生きろ!そうして、その緊張感を、人生の最期まで保ち続けるべき、内なる力を養え!とエールを送りたい。未来はあなた達が創るのです。
若くない人もそれを眺めているだけでは駄目ですよ。年を重ねても、心は青いまま、目標をもって、希望の光を追う限り、「青春」を生きられるのですから。
老いも若きも変わりません。
目指すはいつまでも熟することなく、挑戦の日々を生き続ける「青リンゴ」の人生です!
「The Self Taught Architect」 の主な内容
始まり
建築家安藤忠雄の誕生
世界的な建築家でもある安藤忠雄氏だが、彼は建築を学校で学んだわけではない。職人の仕事を見ながら育ち、プロボクサーを経て、世界の建築を巡る旅に出る。このストーリーでは彼がいかにして建築を志したかを紹介する。
住吉の長屋:都市に埋め込まれた個の砦
安藤忠雄氏の実質のデビュー作である住吉の長屋、都市環境の悪化が深刻化する時代にあって、住環境をコンクリートの壁によって都市から切断し、その内部に自己完結した空間をつくり出す、安藤氏がたどり着いた発想の過程を紹介している。
祈りの空間、自然と建築
人々の想いを励まし、寄り添う「祈りの空間」
都市に埋め込まれた小さな住宅から自然の中で伸びやかに展開する公共建築まで、安藤氏が手掛けてきた規模も環境も様々な建築の中から、教会や寺院などの祈りの空間に焦点をあて、近代建築が発展させた幾何学的な空間構成を継承しつつ、自然といかに共生するかという安藤氏の目指す建築観を紹介。
安藤建築に住んでみる
六甲の集合住宅―急斜面に展開する現代の集落
急勾配の山の斜面に沿って建てられた、六甲の集合住宅を例に、どのように地形の特性を読み解き、周囲の自然と一体的な環境を生み出してきたのかを紹介。
世界各地の安藤建築
フォートワース美術館
ガラスに包まれたコンクリートの箱が水庭に面して連続する現代アートのための美術館であるフォートワース美術館をテーマに、20世紀を代表する素材である鉄・ガラス・コンクリートを用いて、いかに現代にふさわしい新たな建築表現を実現したのかを紹介する。
建築を超えて
未来への贈り物
世界的な建築家であると同時に、積極的に社会と接点を持ち、災害によって困難な状況にある子どもたちを支援する震災遺児育英基金の設立や、子ども図書館の建設など、未来に向けた活動を続けてきた安藤氏の活動を紹介する。
なかでも、「建築も森づくりも、同じく環境に働きかけ、新しい価値を場所にもたらす」という本人の言葉にもあるように、植樹をとおした環境づくりはライフワークと呼べるほど長年にわたって各地で進められている。
関連情報
https://artsandculture.google.com/project/tadao-ando
構成/清水眞希