三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、同社チーフマーケットストラテジストの市川雅浩氏がその時々の市場動向を解説する「市川レポート」の最新版として、「シナリオ別に考える当面のドル円相場の方向性」と題したマーケットレポートを公開した。レポートの詳細は以下の通り。
米雇用統計発表後、FRB高官のハト派発言が相次ぎ、米長期金利低下とドル安・円高が進行
このところ、米連邦準備制度理事会(FRB)の高官からハト派的な発言が相次ぎ、米長期金利が大幅に低下している。
米10年国債利回りは10月6日、9月の米雇用統計の発表を受け、一時4.88%台まで上昇したが、その後、ジェファーソン副議長らが国債利回りの上昇を通じた金融環境の引き締まりについて言及し、追加利上げの必要性の低下を示唆したことなどから(図表1)、10月10日には4.61%台まで低下する場面もみられた。
一方、ドル円は10月6日、9月の米雇用統計発表後、1ドル=149円53銭水準をつけたが、その後のFRB高官のハト派発言と米長期金利の低下を背景に、ドル安・円高が進行し、日本時間の10月10日の朝方、一時148円16銭水準に達している。
このように、足元では米金融政策を巡る思惑で、米長期金利とドル円の振れ幅が大きくなっていることから、以下、米景気と金融政策に関するシナリオ別に当面のドル円相場の方向性を考える。
12月に米利上げとその後の据え置きでソフトランディング実現なら来年3月末のドル円は148円に
三井住友DSアセットマネジメントは米金融政策について、これまで、10月31日、11月1日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の追加利上げが行われると予想していたが、前述のFRB高官発言を踏まえ、追加利上げはいったん見送りとの見方に変更した。
ただ、米雇用情勢は依然底堅いことから、12月12日、13日開催のFOMCでは、25bpの追加利上げが行われるとみている。
その後、政策金利は相当な期間、据え置かれ、物価と雇用の伸びが緩やかに鈍化することで、米経済の軟着陸(ソフトランディング)が実現すると考えている。
このシナリオのもと、米10年国債利回りは今年の年末時点で4.7%、来年3月末時点で4.6%を予想している(図表2)。ドル円については、来年3月末まで日銀の金融政策に変更はないと想定しており、今年の年末は149円、来年3月末は148円の着地を見込んでいる。