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中国では使用禁止報道、フランスでは電磁波問題、衛星通信への対応、騒がしくなってきたiPhoneを巡る問題の行方

2023.10.18

日本でも衛星と直接通信できるようになる?

房野氏:話は変わりますが、KDDIが、2024年内を目途に、スペースXが開発したStarlinkとauスマホが直接通信できるようになると発表しました。日本でiPhoneが衛星と通信できるようになるのはいつになりますか。

石野氏:スペースXの話とは関係なく、衛星通信という意味だとiPhone 14から対応していています。日本でサービスを提供するにはiPhoneが対応するかどうかじゃなくて……

石川氏:法律を変えなきゃいけない。今、変えようとしている。

法林氏:アップルの発表会のオープニングで、衛星通信で緊急通報できたから救われたっていう映像があったね。

石川氏:ただ、災害時に事業者間ローミングを提供するという検討がされているじゃないですか。その中で、緊急通報も受理機関から折り返しができなきゃいけないって話になった。そういうことを考えると、例えばiPhoneで衛星経由で「助けてください」って送っても、どこが受理するの? っていう話があるし、折り返しをどうするのかという話もある。もしかすると、何か1つ間を挟んで、いきなりつながるんじゃなくて、セコムみたいなところが対応してくれれば、できなくはないのかな。

石野氏:今、アメリカで行われているのも、そういう感じですよね。それを日本で作らないといけない。

石川氏:それをどこがやるのか。

房野氏:KDDIはスペースXと組んでいますが、iPhoneは……

KDDI 代表取締役社長 CEO 高橋誠氏(左)とSpace Exploration Technologies Tom Ochinero氏(右)

石川氏:auが扱っているスマートフォンは、iPhoneを含めて全部Starlinkとの直接通信に対応できます。1.7GHz帯を使うらしいという話が……

法林氏:いや、2GHz帯だよ。ほぼ、2GHz帯しか考えられない。なぜなら、衛星が世界の上を飛んでいて、「日本上空は2GHz帯です、グアム上空に来たので1.7GHz帯に切り替えます、アメリカ上空なので○GHz帯です」ってことはできないし、効率悪いから。全世界共通で使えるのは、3Gを規格化した時に共通バンドにした2GHz帯しかない。2GHz帯だったら、ほぼ全世界で使える。

石川氏:でも、KDDIは1.7GHz帯をあんまり使っていなかったんじゃなかったでしたっけ。持て余しているような気がする。

石野氏:ドコモとか楽天ほどは使っていないですね。

法林氏:後から割当てられたからね。

石川氏:2GHz帯だったら干渉するんじゃないかな。

房野氏:干渉はどうやって防ぐのでしょう。

法林氏:たぶんチャンネルを分けるんでしょう。昔、3Gから4Gに移行するとき、チャンネルを分けて制御する方法をソフトバンクに聞いたことがあるけど、同じような工夫をするんじゃないかな。1.7GHz帯を使っている国は、そんなに多くないですよ。比較的多いバンドではあるけど。

石川氏:いずれにしろ共通のバンドを使う。

法林氏:それをどのバンドにするかは、Starlink側が調整する。

石野氏:バンド3(1.7GHz帯)かバンド1(2GHz帯)じゃないと国際的に使えないですよね。

石川氏:楽天モバイルは1.7GHz帯でやるんですよね。

法林氏:それは楽天モバイルだから。割当てられている周波数帯を使う。

房野氏:楽天モバイルはAST SpaceMobileと取り組んでいますね。ちなみに、ドコモは衛星との通信はどうするのでしょうか。

石野氏:ドコモは自分たちでやろうとして、スカパーJSATと会社を作っています。色々やろうとしているんだけど、いかんせん、これからやろうとしているので、すでにやっているところとの差が大きい。

法林氏:3年前からやっているところと、もっと前からやっているところと、これから作るところがあれば、それは比較にならない。

石川氏:NTTとスカパーJSATがやろうとすると、結局日本にしかビジネス相手がいない。その反面、Starlinkはばんばん衛星を打ち上げていて、世界中でビジネスをしている。日本の上を通った時にauユーザーに対してサービスを提供するし、アメリカ大陸上空だったらTモバイルに提供するってことができる。

法林氏:Starlinkの場合、日本のユーザーがアメリカに行って、どこかで遭難した時に、auのスマホを出して、ローミングで「助けて」とメッセージを送ることができるかもしれない。ローミングでの緊急通報ができるかもしれない。

 500キロ上空の衛星に、とりあえずメッセージぐらいだったら送れるってことはわかってきた。あとは衛星側の受け口の大きさとかが関係してくる。

石野氏:音声通話や高速データ通信をできるようにするには、相当大きい衛星を上げなきゃいけなくないので、イーロン・マスク氏次第なところもある。衛星が小さいと携帯電話からの電波を受信できない。つまり携帯電話から電波を500キロ飛ばさないといけないわけで、そうすると、よほど衛星を大きくして弱い電波をキャッチできるようにしないと、上りの通信ができなくなる。ただ、大きな衛星、Starlink V2はまだ飛ばしていないです。それより少し小さいV2 miniは上げている。これは、本来打ち上げたい大きい衛星よりは小さい。大きいV2を上げようとすると、スターシップという大きなロケットが必要なんですが、それはこの間、打ち上げに失敗している。本当にKDDIが言ったようにサービスインできるかどうかは、マスク氏次第というところがある。X(旧Twitter)にお金を注ぎ込んでいる場合じゃないぞって感じですね(笑)

……続く!

次回は、ソフトバンクの新料金プランについて会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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