■連載/阿部純子のトレンド探検隊
科学館だけでなくMICE施設や集会所、コワーキングスペースとしても使える
2020年に閉校した杉並区立杉並第四小学校の跡地を活用した、杉並サイエンスラボ「IMAGINUS(イマジナス)」が10月にオープンした。
杉並区では閉校した第四小の跡地活用として、2016年に閉鎖された区立科学館に替わる、新たな科学学習拠点を運営する事業者を公募し、「コングレ」が選定された。
コングレは国際会議や展示・イベント事業、MICE(多くの集客や交流が見込まれるビジネスイベント)施設をはじめ、美術館、コンサートホール、科学館、⽔族館、展望台などの⽂化施設、観光施設など全国約90の施設を運営。公共施設として6館の科学館を運営しているが、IMAGINUSは同社にとって科学館として初の民営施設となり、年間30万人の来場者を目指している。
10月7日のオープニングイベントでは、杉並区の岸本聡子区長も出席。岸本区長は「施設を見学して、子どもから大人まで1日中いても飽きない施設だと思いました。施設名『IMAGINUS』の文字を入れ替えると『SUGINAMI』になり、そこまで考えて作っていただいたと嬉しくなりました。子どもたちに科学の楽しさを伝える施設として発展していくことを願っています」と話した。
「昨今、日本では子どもの科学離れと言われていますが、科学を好きになる一番のきっかけは不思議だと思う感覚を大切にすることです。IMAGINUSでは科学は面白い、楽しいということを伝えることができるプログラムを提供しています。
民営の自由度を活かし、勉強を感じさせる要素をできるだけ少なくして、サイエンスショーなどエンターテインメントや遊びを軸とした、科学は面白いと感じてもらえる入り口にしたいと考えています。
サイエンスショーは、世界55 か国以上で年間1000 万⼈以上が参加している体験型科学プログラム『Nutty Scientists (ナッティ サイエンティスト)』を日本で初めて採用し、1日8回開催します。シナリオはコングレで作成していますが、演者はオーディションで選ばれたプロを起用しています。子ども向けのショーだけでなく、シニアや主婦が多い平日の昼には、大人向けの内容にするなど大人の方も楽しめるショーも行います。
学校を再利用した施設ですが、小学校時代に勉強が苦手だったという人にも、エンタメが楽しめる場所に生まれ変わったというギャップを楽しんでもらい、科学を見直すきっかけになって欲しいですね」(IMAGINUS館長 小林直樹氏)
サイエンスショーやラボ、展示といった科学館としてのコンテンツを提供するだけでなく、コンベンション、展示会、イベントなど様々なMICE事業を展開してきたコングレの強みを活かし、政府や自治体、国際機関、学会などMICEの主催者や、施設利用者など多種多様なステークホルダーにサービスを提供していきたいと同社は意気込む。
「科学館としてスタートしますが、多目的施設やシアターなど集会やイベントでも利用できますので、ユニークベニューとして、体験型ツアーの開催や、企業や団体のエンゲージメント、モチベーションに関するイベントに使っていただくにも面白い施設だと感じています。今後はMICEに関するプログラムもオープンにしていくことを予定しています。
『ものづくりラボ』では実際に使用できる3Dプリンターやレーザーカッターといった機器が揃っており、電源があるカフェではワーキングスペースとしても機能しているので、スタートアップ企業の方が使っていただくことも可能です。また、オープニング展示として、ものづくりに関する展示会も開催されており、科学館という枠を超えて、幅広いジャンルで、さまざまな形での利用が可能な施設です」(コングレ 代表取締役社長 武内紀子氏)