世界に衝撃を与えている、イスラム武装組織ハマスとイスラエルの武力衝突。これにより、金融市場はどのような影響を受けるのだろうか?
三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、同社チーフマーケットストラテジストの市川雅浩氏がその時々の市場動向を解説する「市川レポート」の最新版として、「イスラエルとハマスの衝突が金融市場に与える影響について」と題したマーケットレポートを公開した。レポートの詳細は以下の通り。
10月7日にイスラエルとハマスが衝突したが中東の歴史的な対立の根幹にあるのはパレスチナ問題
パレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは10月7日、イスラエルに対して多数のロケット弾を発射し、攻撃を開始した。
これに対し、イスラエル軍はガザ地区への報復空爆を行い、ネタニヤフ首相は「われわれは戦争状態にある」とする声明を発表した。今回のレポートでは、イスラエルとハマスの衝突の背景と、金融市場への影響について考える。
中東の歴史的な対立の根幹にあるのは「パレスチナ問題」だ(図表1)。パレスチナは、地中海の一番東の沿岸に位置し、この地にあるエルサレムには、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、それぞれの聖地があり、宗教上とても重要な地域だ。
第2次世界大戦後、移住したユダヤ人によりイスラエルが1948年に建国されると、アラブ側は強硬に反対し、同年以降、4度の中東戦争が勃発した。
ハマスはイスラエル打倒を目指す武闘派で、今回は第4次中東戦争勃発から50年の節目で攻撃
イスラエルと、アラブ側の組織であるパレスチナ解放機構(PLO)は1993年、一定の地域でアラブ系パレスチナ人によるパレスチナの自治を認める約束をし(オスロ合意)、翌年ガザ地区とヨルダン川西岸地区がパレスチナ自治区となり、1995年にパレスチナ自治政府が設立された。
ただ、ハマスが2007年にガザ地区を武力制圧したことで、パレスチナは自治政府が統治するヨルダン川西岸地区とガザ地区に分裂した。
ハマスは、武力によるイスラエル打倒とパレスチナでのイスラム国家樹立を目指しており、イスラエルはハマスが実効支配するガザ地区に対し軍事封鎖を続けるなど、すでにオスロ合意は事実上崩壊している。
なお、ハマスがイスラエルに攻撃を行った10月7日は、第4次中東戦争勃発(1973年10月6日)から50年の節目となる日で、ハマスはイスラエルとサウジアラビアの国交正常化阻止を狙ったとの見方もある。