『枯れ木も山の賑わい』は、意味を勘違いしやすいことわざです。間違った使い方をすると失礼に当たる場合もあるため、事前に意味や使い方を確認することが大切です。類語や対義語に関する知識も増やすと役立つでしょう。
「枯れ木も山の賑わい」とは
日常的に頻繁に使われることわざではないため、そもそも『枯れ木も山の賑わい』を知らない人もいるのではないでしょうか?意味を勘違いしているケースも多いため、正しい意味を確認しましょう。理解を深めるために、由来も紹介します。
■「つまらないものでもないよりはまし」という意味
枯れ木も山の賑わいは、『つまらないものでもないよりはまし』という意味の表現です。人に対して使うのが一般的で、人数が少ないよりはどのような人でも数の足しになる方がましという意味で使われます。近年は人だけでなく、物事に対しても使われます。
また、誤用が多いことわざの一つで、人が集まれば賑やかになるという意味だと思っている人が多いようです。文化庁が2014年に行った「国語に関する世論調査」によると、約47%の人が意味を勘違いしていたという結果が出ています。
言葉から想像できる意味や受ける印象と実際の意味が大きく異なるため、誤用に注意しましょう。
※参考:平成26年度「国語に関する世論調査」の結果の概要|文化庁
■枯れ木の見た目に由来する言葉
由来は、枯れ木の見た目です。枯れ木は花や葉がついていないため、みすぼらしい見た目に見えるでしょう。しかし、そのような枯れ木であっても、山に何もない殺風景な見た目よりも風情があるというところに由来します。
枯れ木でも山にないよりはましという意味が転じて、つまらないものでもないよりはましという意味になったとされています。
■「枯れ木も山の賑わい」の使い方
枯れ木を人に例えた、へりくだった表現です。自分や身内を謙遜する場合に使う表現のため、使う相手を間違えると失礼になってしまいます。
例えば、『枯れ木も山の賑わいですし、ぜひご参加ください』とすると、相手を枯れ木(つまらないもの)に例えていることになるので、注意しましょう。
【例文】
- ご招待いただきありがとうございます。私ごときが出席すべきか悩みましたが、枯れ木も山の賑わいと思い、出席させていただきます
- 枯れ木も山の賑わいといいますから、家族全員で参加する予定です
- 娘が作った作品で見た目がいびつですが、枯れ木も山の賑わいと思い、玄関に飾っています
「枯れ木も山の賑わい」の類語
枯れ木も山の賑わいと同じような意味を持つ類語があります。代表的な類語を二つ紹介するので、意味と併せて例文で使い方も確認しましょう。
■蟻も軍勢
『蟻も軍勢(ありもぐんぜい)』は、つまらない人でもいないよりまし、大勢いる方がよいといった意味のことわざです。
蟻は1匹では小さく力も弱いですが、たくさんの蟻が集まれば重たいものや大きなものも運べるなど、大きな力を発揮します。たとえ小さな蟻でもいた方がましということから生まれたことわざです。
【例文】
- 個々の力は微力でも、蟻も軍勢という通り、多くの人が集まれば世の中を変えることもできるかもしれない
- 蟻も軍勢といわれるし、より多くの人に出席してもらえるように声を掛けよう
■餓鬼も人数
『餓鬼も人数(がきもにんじゅ)』は、つまらない人でも、時には多少役に立つこともあるという意味です。また、人数が集まれば力を発揮するという意味もあります。
仏教用語で使われる餓鬼ですが、このことわざでは子ども(俗語)を表しており、それが転じて、つまらない人・弱い人という意味で使われています。
【例文】
- たいして役には立てないと思ったが、蟻も軍勢と思い、参加を決意した
- サッカーの試合では、個々の選手のスキルが優れていないとしても、思わぬチームワークを発揮し強豪チームに勝つこともある。蟻も軍勢という言葉通り、油断しない方がいい
「枯れ木も山の賑わい」の対義語
反対の意味を持つ対義語には、どのようなものがあるのでしょうか?対義語を二つ紹介するので、それぞれの意味と使い方を例文で確認しましょう。
■月夜に提灯
『月夜に提灯(つきよにちょうちん)』は、無駄なこと・不要なことの例えです。月が明るい月夜に提灯をともしても意味がないというところから生まれたことわざです。
現代では祭りのときなどに目にする提灯ですが、街路灯がなかった時代は、懐中電灯のように手に持って出歩いていました。当時の人々にとって、提灯は必需品だったのです。
【例文】
- 1泊するだけなのに何着も着替えを持っていくなんて、月夜に提灯だよ
- 忙しくてほとんど自炊する時間がない私が高級鍋を購入するのは月夜に提灯だと分かっているが、セールになっていたので買わずにはいられなかった
■無用の長物
『無用の長物(むようのちょうぶつ)』は、仏教に語源を持つことわざで、あっても役に立たないという意味です。無用・長物どちらも役に立たないという意味があり、役に立つどころか、むしろ邪魔になるものというニュアンスがあります。
【例文】
- 飽きっぽい性格の彼の家には、購入してすぐに使わなくなった無用の長物がたくさんある
- どんなにおすすめの靴でも、履き心地は人それぞれなので、プレゼントしても無用の長物になる可能性が高いだろう
文/編集部