【短期集中連載 Vol.7】 カジノ&ギャンブル カジノゲーミンクの中のアレコレ『VIPプレーヤーはVIPプレーヤーが好き?』
ナマステ。カジノライターのかじのみみです。世界の VIP と呼ばれる人々はカジノの VIP ルームとそこに集まる人が好きなようです。なぜなのでしょう? それを探ってみることにしました。シリーズ⑦のテーマは、『VIPプレーヤーは VIP プレーヤーが好き?』です。
フィルハーモニー、カジノ、クワハウスの旗(ドイツ・バーデンバーデン、2013年撮影)
歴史的偉人にもカジノ好きがたくさん
昔も今も、カジノにはマスプレーヤーの他に「VIP」と呼ばれる人々が一時を楽しむためにやって来る。一般的な歴史書では過去のVIPプレーヤーのギャンブル行為はほぼ取り上げていないが、世界の研究者はそれらを積極的に、ユーモアたっぷりに報告している。
例えば『ROLL THE BONES』の著者デヴィッド・G・シュワルツ氏は同書の中で「ウィーン会議」に参加した VIP がウィーンに向かう道中など繰り返しバーデンバーデンに立ち寄った話や、日本で人気を誇るフランス国王ルイ 16 世の王妃マリー・アントワネットが、連日「パレ・ロワイヤル」でカードギャンブルを行っていたと述べている。
また漫画『ベルサイユのばら』に登場するデュ・バリー伯夫人は「21」に類似したギャンブルに講じていたようだ。
『ザ・カジノ 完全ガイドブック』の著者 黒野十一氏は、歴史的に名を遺したギャンブル好きの人物を同書の中で簡素に紹介している。その中にはシーザー、ネロ、ヘンリー八世、パスカル、エカテリーナ二世、ジョージ・ワシントン、シャルル・ガルニエ、チャーチル、海軍軍人だった山本五十六など多数。驚いたことに、山本元師はポーカー好きで知られていたらしい。
バッドラガッズ 水がおいしい温泉保養地にあるホテルのベランダから(スイス、2014 年撮影)
カジノにおけるVIPとは、カジノに時間もお金も費やすことができる人々
260 年ほど前の欧州のカジノは温泉・spa保養地に設置されることが主流で、富裕層やVIPは飲むにしろ、浸かるにしろ「清らかな水」を求めてspaを訪れた。プロモーターは商機を見てカジノを設置し「エレガンス」とゲーム類を提供したところ著名人やパフォーマーが集まり、クラシック音楽家シューマンらはカジノ施設でコンサートも開催した。
どうやら、カジノと富裕層/VIP は昔から「セット」のようである。
VIP にはどんな人たちが含まれるのだろう? VIP とはデジタル大辞泉によると、「《very important person》国家的に重要な人物。要人。ビップ」とあるようだ。
『現代人のカタカナ語 欧文略語 辞典』の中でも、VIPは「要人」となっていた。要人(ようじん)とは、社会に大きな影響を及ぼす者やそのポジションにある人物である。
カジノにおけるVIPは「高額ベッター」であり、1年の間にリピートで施設を訪れてくれるようなプレーヤーを表す。VIP プレーヤーは、カジノに惜しみなく(?)時間とお金を使える力を持っており、また併設施設のあらゆるシーンを経験することを求める方々でもあるだろう。
パラダイスシティのエントランス&ロビー(韓国・インチョン、2018年撮影)
VIPはVIP同士の空間を楽しむ
世界のカジノはそれぞれ独自の「顧客リスト」を所持している。各カジノの違いは施設のデザイン、スタッフの質・民度、文化の違いが影響していると考えられるが、それらの他に顧客リストの違いも大きいと思われる。なぜなら、「空間」を演出するのは、お客さまも大切な要素であるからだ。
VIP プレーヤーはギャンブルだけをやりにカジノに来ているのではないだろう。その特別な空間で遊ぶことができる他の VIP プレーヤーを見に来ているのだ。
自分に合った雰囲気で心地よいと思える人々の集まるスペースであれば、その VIP はまたその施設を訪れるだろう。
カジノの VIP ルームは通常マスプレーヤーは入れない。カジノプレーの基準があり、審査をクリアした者たちの専用ルームだ。大金を軍資金として預けられる人たちが集う場所である。当然ながら、お互いの「バックグラウンド」(経歴)は知りたい。興味はある。
だが、カジノには暗黙のルールがあり、特に VIP ルームでは他プレーヤーとの身の上話は信頼のおける仲間内でない限りゲームテーブル上ではほとんどしないだろう。カジュアルな話に留めるか、プレーに集中するだけである。
身の上話はしなくてよい。身分を明かさなくてもよい。すり寄ってくる人もいない。
独特な空気に包まれたその空間で VIP 同士はお互いの時間を共有する。ギャンブルが好きにしても、好意的な感情がなければ、限られたスペースの中で人は長い時間を「赤の他人」と過ごすことはできないものである。
パラダイスシティのロビー(韓国・インチョン、2018年撮影)
VIP ルームにはどんな人が来るのか
筆者は過去に、「VIPルームには誰が来るの?」と別のVIPプレーヤーに何度か尋ねられた経緯がある。「良かったら、いらして下さい」とお伝えし、VIPシステムを説明しながら守秘義務をご理解頂いた。
中には邪なことを考えているエセVIPが「見せ金」のフロントマネーを持ってやってくるかもしれない。だが顧客情報が流れたら、その施設の格は一気に下がってしまう。
本物の VIP は偽物 VIP の懐はお見通しかもしれないが、守秘義務などを含む従業員トレーニングは国内IR等でも急務になってくるのではないだろうか。
尚、海外のカジノではジャンケットシステムを採用している場合は、VIPルームは主に2種類ある。カジノの直接顧客(direct用)テーブルがある場所と、ジャンケットが運営する(indirect用)テーブルがある部屋だ。その旨は補足しておこう。
日本が誘致を目指しているIR内のカジノ区画ではジャンケット運営は含まれないようなので、その件については割愛した。
バッドラガッズ併設ホテルのロビー (スイス、2014年撮影)
近未来の日本型カジノには世界のどんなVIPが訪れるのであろうか。「お忍び」だけでなく、公にカジノ施設に立ち寄っていただければ、筆者は大変うれしく思う。
取材・文/かじのみみ
カジノライター/カジノコンサルタント
カジノ、ギャンブル、IR業歴31年。ディーラー歴25年。1992年より全国各地で開催された120件以上の「模擬カジノ」の企画、運営、ディーリング業に携わる。2008年から米系大手カジノ企業のVIPマーケティング・通訳・経理担当。2013年8月に同企業を離れフリーとなり、IRの誘致活動に従事。2020年以降は、カジノとギャンブル関連の執筆、スポットコンサル、通訳業に専念し、現在に至る。大阪生まれ、横浜・インドボンベイ育ち