米国小児科学会が子どもの低炭水化物ダイエットに注意喚起
米国小児科学会(AAP)は、糖尿病患児および糖尿病発症リスクのある小児に対する低炭水化物ダイエットは推奨されないとするレポートを「Pediatrics」に2023年9月18日掲載した。
低炭水化物ダイエットは成人の間で実践者が増えているが、1型または2型糖尿病の患児および十代の若者でのエビデンスはほとんどないためだという。
AAPは小児の場合、加糖飲料や菓子類、加工食品の摂取を減らし、野菜や豆類の摂取を増やして、かつ、食物繊維が豊富な穀物から炭水化物を十分に摂取することが優先されるとしている。
米シンシナティ小児病院のAmy Reed氏は、今回のAAPレポートには関与していないが、「子どもたちの低炭水化物ダイエット実施には、重要な栄養素が不足してしまうという大きな懸念がある。食事制限ではなく、健康的な食事に焦点を当てるべきだ」と、レポートの推奨に同意を示している。なお、同氏は米国栄養士会で広報を担当している。
糖尿病にはいくつかのタイプがある。1型糖尿病は、血糖を調節するホルモンであるインスリンを産生している膵臓内の細胞に対する免疫系の攻撃によって発症し、1日数回のインスリン注射またはインスリンポンプによる治療が必須となる。
一方、2型糖尿病は肥満に伴い発症しやすく、インスリンの作用が相対的に低下して、減量や経口薬による治療が行われることが多い。いずれのタイプも、食事に気を付けることは重要だ。
AAPレポートの共著者の1人で米ライリー・チルドレンズ・ヘルスの小児科医であるTamara Hannon氏は、「近年、減量手段として低炭水化物ダイエットがもてはやされるようになった。成人の糖尿病患者に対して低炭水化物ダイエットを推奨する医師もいる。そのため、糖尿病の子どもを持つ保護者の中には、低炭水化物ダイエットに興味を持つ人も現れ始めている。ただし、子どもの食事スタイルは極端な内容ではなく、合理的でなければならない」と述べ、「できる限り甘い食べ物を減らすことだ。まずは加糖飲料を控えることから始めるとよい」とアドバイスをしている。
子どもの低炭水化物ダイエットには潜在的なリスクがある。潜在的なリスクとは、栄養不良、発育不良、および、摂食障害などにつながりかねない極端な食習慣が形成されやすいことなどが挙げられる。
それでも保護者が自分の子どもに低炭水化物ダイエットをさせてみたいと考える場合には、医療提供者と協力して行い子どもの成長や栄養状態などを注意深くモニタリングすることを、AAPは推奨している。
ただしHannon氏によると、子どもに対して至適の低炭水化物ダイエットを指導できる専門家は少ないという。
今回発表されたAAPのレポートは、4~18歳の糖尿病または前糖尿病の小児・未成年を対象とする内容。主な推奨事項は以下のとおり。
・1日のカロリーの約10~30%はタンパク質から摂取する必要がある。
・残りのカロリーのうち25~35%は脂質から摂取し、特に植物油やナッツなどの不飽和脂肪酸が中心となるようにする。
・残りの45~65%は炭水化物とし、主に果物、野菜、豆類、乳製品、食物繊維の多い穀物から摂取する必要がある。
Reed氏は、「食物繊維は消化吸収を遅延させるため、血糖コントロールに役立つ可能性がある。しかし、米国の多くの子どもたちは食物繊維が不足しており、低炭水化物ダイエットはその状況をさらに悪化させかねない」と述べている。
またHannon氏は、「子どもの食事に責任を持つのは保護者だけではない。米国の社会環境は、特に低所得世帯の人々の健康的な食事を妨げるものになってしまっている」と話している。(HealthDay News 2023年9月18日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://publications.aap.org/pediatrics/article/doi/10.1542/peds.2023-063755/193955/Low-Carbohydrate-Diets-in-Children-and-Adolescents
構成/DIME編集部