米国の成人の14人に1人がlong COVIDを経験
米国の成人の14人に1人程度が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のいわゆる後遺症である「long COVID」に罹患した経験のあることが、米国立衛生統計センター(NCHS)による2022年の国民健康調査(National Health Interview Survey;NHIS)のデータの分析から明らかになった。詳細は、「NCHS Data Brief」2023年9月号に発表された。
Long COVIDは、COVID-19後にも続くブレインフォグや慢性的な倦怠感、長引く咳、動悸、頭痛、睡眠困難、抑うつ、不安などの諸症状の総称である。
米ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターの上級研究員であるAmesh Adalja氏は、「long COVIDについては、症状の持続期間や罹患者の数も含め、不明点が多い。専門家もlong COVIDについては表面的なことを論じているに過ぎず、診断のためのきちんとしたツールや定義もないのが現状だ」と話す。
Long COVIDの症状は人によって大きく異なるが、これは新型コロナウイルスの与える影響が臓器により異なるためだと考えられている。
Adalja氏は、「long COVIDとは包括的な用語であり、いくつかの異なる状態を表すこともある。long COVIDが生じる原因については、複数の仮説が検証中であるが、未解明な部分が多い。リスクの高い人や特定の血液マーカーとの相関関係についてはある程度明らかにされてはいるが、科学と医学がこの非常に曖昧な病態を解明するには、まだ時間がかかるだろう」と話す。
今回の調査では、米国の成人2万7,651人を対象にしたNHISの2022年のデータを用いて、long COVIDの罹患率が調査された。long COVIDは、自己報告による、COVID-19罹患後に3カ月以上続く症状と定義されていた。
その結果、2022年には調査対象者の6.9%がlong COVIDの罹患歴を報告し、3.4%は調査時点でもlong COVIDに罹患していることが明らかになった。
また、女性の方が男性よりもlong COVIDを経験した人が多く(8.5%対5.2%)、調査時点でlong COVIDに罹患している人も多かった(4.4%対2.3%)。
年齢層別に検討すると、long COVIDの罹患歴がある人と調査時点で罹患している人の割合が最も高かったのはいずれも35〜49歳(それぞれ、8.9%と4.7%)であった(18〜34歳では6.9%と2.7%、50〜64歳では7.6%と3.8%、65歳以上では4.1%と2.3%)。
このほか、ヒスパニック系と白人はアジア系や黒人よりもlong COVIDを発症しやすく、また高所得世帯の人の方が中所得世帯や低所得世帯の人よりも、さらには、大都市圏に住む人の方が地方や小さな町に住む人よりも、long COVIDを発症しにくいことも明らかになった。
一方、7,464人の小児を対象にした同じ調査からは、12〜17歳の小児の方が、それよりも年少の小児よりもlong COVIDの罹患歴を報告する割合の高いことが示された(0〜5歳:1.0%、6〜11歳:0.8%、12〜17歳:2.0%)。
また、同割合は、成人と同様、小児でも女児の方が男児よりも高かった(1.6%対0.9%)。
Adalja氏は、「大都市圏とlong COVID発症との間に関連が認められたのは興味深い。この関連に影響を及ぼしているものが何なのかを知りたい」と話す。
Adalja氏は、新型コロナワクチン接種によりlong COVIDを予防できることは証明されているとし、「COVID-19に罹患した際に、ワクチン未接種者の方がlong COVIDを発症しやすいとするデータも存在する。たとえCOVID-19重症化のリスクがなくても、全ての人が新型コロナワクチンを接種すべきだとされるのは、これが理由だ」と述べている。(HealthDay News 2023年9月26日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.cdc.gov/nchs/products/databriefs/db480.htm
https://www.cdc.gov/nchs/products/databriefs/db479.htm
構成/DIME編集部