酒飲みならば胸に手を当てて思い返してみれば過去にお酒で“失敗”したのは1度や2度では済まないのではないだろうか。これはやはりアルコールで判断力が鈍っているということなのか――。
酔うと異性が普段よりも魅力的に見える?
スポーツやアウトドア活動をする人ならサングラスやゴーグルを使うことがあるかもしれない。スキーヤーやスノーボーダー、あるいは水泳選手などさまざまなアスリートの目を守っているゴーグルだが英語圏ではなんと、ビールを飲むと装着されるという想像上のゴーグルがある。
その奇妙なゴーグルは「ビアゴーグル(Beer Goggles)」と呼ばれ、ビールをはじめとするアルコール飲料を飲むと、ほろ酔いの影響もあってかまるで“色メガネ”をかけたかのように、周囲の人々(特に異性)が普段よりも魅力的に見えるということで、この現象は「ビアゴーグル効果」とも呼ばれている。
確かに雰囲気の良いバーなどでアルコールを嗜み、軽く酔って楽しい気分になれば近くにいる異性に思わず目を奪われることがあるかもしれない。その異性が必ずしも好みのタイプでなかったとしても、「ビアゴーグル効果」で評価の基礎点がアップしてしまうというわけだ。
つまりビールでほろ酔いになると良い意味では守備範囲が広がり、悪い意味で言えば審美眼が甘くなるのだ。
とすればお酒の場での出会いでは「ビアゴーグル効果」によって“盛られて”いることから、後になって後悔するケースも少なくないことになる。“酔った勢い”での間違いにも繋がるだろう。
外でお酒を飲む人ならこの「ビアゴーグル効果」にはじゅうぶん気をつけなければならないとも言えるわけだが、しかしそもそも本当にそんな謎のゴーグルが存在しているのだろうか。
スタンフォード大学とピッツバーグ大学の合同研究チームが2023年8月に「Journal of Studies on Alcohol and Drugs」で発表した研究では、実はこの「ビアゴーグル効果」は実際に存在しないことが示唆されている。実験を通じて、アルコールが身体的魅力に関する判断を歪めるという“通説”が否定されたのである。
20代前半の男性36人が参加した実験では、アルコール飲料とノンアルコール飲料を飲んだ状態で16人の女性の画像と短いビデオクリップが見せられ、その後、参加者はその女性の身体的魅力を評価した。
収集したデータを分析したところ、アルコールセッション(ほろ酔い状態)と非アルコールセッション(シラフ)の間で身体的魅力の評価に有意な差は見られなかったのだ。言い換えればお酒を飲んでも守備範囲は広がらず、審美眼は甘くならなかったのである。
今回の研究で“通説”と思われた「ビアゴーグル効果」は迷信であり、いかにもありそうな“俗説”ということになるのかもしれない。
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