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「この人はデキる」と思わせる人の話し方

2023.10.07

連載/山田美保子のデキる接客に学ぶ人心掌握術 <番外編>

「接客」というと、1対1のコミュニケーションのようなイメージがあるが、たとえばメディアの記者やリポーターを招いての発表会や会見のような席では、MCやプレゼンテーター一人が、何十人、何百人単位の顧客と対峙する場面がみられる。

そのとき重要となるのは「話し方」ではないか。筆者は学生時代、アナウンススクール(専門学校)で「滑舌」や「発声」、「アクセント」、「間」や「緩急」、「鼻濁音」「無声化」などを徹底的に叩きこまれた。その経験のせいで、それから約45年が経った今でも、自身の話し方はもちろん、他人の話し方についてもスクールで習ったことに反するものについて、気になって気になってしかたがないのである。

話す前に必要な準備

「滑舌」や「発声」については、トレーニングを積むしかないように思う。有名なのは、口を大きく開け、お腹から声を出すことを意識しながら言う「あ、え、い、う、え、お、あ、お」だろう。少し高度なものでは「た、て、ち、ちゅ、ちぇ、ちょ、ちゃ、ちょ」「ぱ、ぺ、ぴ、ぴゅ、ぺ、ぴょ、ぴゃ、ぴょ」というのもある。

一音ずつ発するのも効果的だが、切らずに「あえいうえおあお、あえいうえおあお」と何度か続けて言うのもいいと思う。起き抜けにこれをやるだけで、口の回りが抜群に良くなるし、表情筋も鍛えられる。いわゆるフェイササイズにもなるのだ。

私はテレビやラジオ出演の直前、いつもこれをやっている。やるとやらないでは大違いで、やれば、噛む回数が激減するからだ。

今年4月、昨夏から交際していた会社員男性と今年に入り結婚したことを発表した人気キャスターの新井恵理那さんの忙しい一日に『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)が密着している様子を見た。

早朝、メイク室からスタジオに続く暗めの廊下を歩きながら、新井さんが繰り返し言っていたのが「ちゃちぇちちゅちぇちょちゃちょ」だった。

その後の番組を担当する『羽鳥慎一モーニングショー』(同)の羽鳥キャスターも、新井さんのその様子に触れ、懸命にやっているから「話しかけたことがない」と言っていた。本番前、出役にとって、このトレーニングがいかに大切であるかという証拠だろう。

さらに高度なトレーニングを積もうと思ったら、アナウンススクールの教則本の中にも入っている『外郎売』(ういろううり)を覚えたらいい。

「拙者親方と申すは、お立合いの内に御存知のお方もござりましょうが」で始まり、途中、

「武具馬具、武具馬具、三武具馬具、合わせて武具馬具六武具馬具」「麦ごみ、麦ごみ、三麦ごみ、合わせて麦ごみ六麦ごみ」と早口言葉のような台詞もあり、トレーニングには最適だ。

少し前、八代目 市川新之助さん(市川勸玄さん)がこの『外郎売』をスラスラ話しているのをみて驚いたが、それもそのはず。これは享保3年(1718年)に市川團十郎が演じた『若緑勢曾我』という歌舞伎の演目の初演とされる台本を基にしているからである。

「アクセント」については『アクセント辞典』なるものがある。近年は多くの言葉が平板化しているが、正しいアクセントを学んだり知ろうとしたりすると、これがまた奥が深い。実はアナウンサーにとってはこの『アクセント辞典』が必須で、スタジオまで持参する者もいるほどだ。

「間」や「緩急」、「鼻濁音」「無声化」についてはまたの機会に解説したい。

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