2024年の賃上げ率は何%程度で、日経平均株価にどんな影響を与えるのか?
三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、同社チーフマーケットストラテジストの市川雅浩氏がその時々の市場動向を解説する「市川レポート」の最新版として、「日本株上昇のカギを握る2024年の賃上げ動向を探る」と題したマーケットレポートを公開した。レポートの詳細は以下の通り。
2023年春闘で平均賃上げ率は30年ぶりの高水準となり新年度入り後の日本株上昇の一因に
労働団体の「連合」は7月5日、2023春季生活闘争(春闘)の最終集計結果を公表した。それによると、基本給を底上げする「ベースアップ(ベア)」と、「定期昇給」を合わせた賃上げ率は、平均で3.58%と、前年比で1.51ポイント上昇した。1993年に記録した3.90%以来、30年ぶりの高い水準となり、新年度入り後に日本株を大きく押し上げた一因となった。
連合のデータに基づき、1989年から2023年までの賃上げ率の推移を示したものが図表1だ。1989年から1991年まで、賃上げ率は5%台だったが、バブル崩壊とともに低下の一途をたどり、2003年には1.63%の低水準となった。
賃上げ率の推移に日経平均株価の推移を重ねると、連動性の高い時期も多くみられることから、株高の持続性を考える上で、2024年の賃上げ動向は、極めて重要と思われる。
賃金上昇は家計や企業の行動などさまざまなルートを通じて株価を押し上げる方向に働きやすい
ここで、改めて賃金の上昇が株価の押し上げにつながる仕組みを考える。例えば、家計の賃金が上昇し、所得が増えれば、消費の増加につながる。家計の最終消費支出はGDPの構成項目なので、消費の増加はGDPを増加させ、株価の追い風になる。
また、家計の所得が増え、投資余力が生じれば、2024年1月から始まる新しい少額投資非課税制度(NISA)などを利用した、日本株の見直しも期待される。
なお、企業は、家計の消費が増えてモノがたくさん売れれば、収益が増えるため、より直接的な株高要因となる。収益が増えれば、企業はさらなる賃上げや設備投資にも対応しやすくなるが、設備投資の増加はGDPを増加させ(民間企業設備もGDPの構成項目)、これも株価にプラス材料となる。
さらに、企業が収益の増加を背景に、配当や自社株買いなどの株主還元を積極的に検討すれば、投資家の関心は一層高まると思われる。