日本の生産人口(15~64歳)における第2位の死因は自殺である。自殺者の多くはうつ病あるいはうつ状態にあったと考えられおり、早期に発見して適切なケアを行っていれば、自殺を予防できた可能性もある。
こうした働く人の心のケアに関して、労働省は今から20年以上も前から「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を発表して、対策を進めてきた。そして、指針に基づき「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を作成。事業者が「心の健康づくり計画」を策定し、計画に基づいて4つのケア(セルフケア・LINEによるケア・事業場内産業保健スタッフ等によるケア・事業場外資源によるケア)を推し進めている。
特にメンタルヘルスケアの具体的進め方としては、
1)メンタルヘルスケアを推進するための教育研修・情報提供
2)職場環境等の把握と改善
3)メンタルヘルス不調への気づきと対応
4)職場復帰における支援
の4項目が示され、働きやすい環境づくりが提唱されてきた。
職場でのメンタルヘルスケアに関しては、現在、産業医によるカウンセリングや、定期的な研修の場を設定しているところも多い。最悪、自殺に至る心の病をいかに予防するか、職場ぐるみで対策が進められている。
ストレスコーピングで心を健康に
こうしたメンタルヘルスケアに関連して、最近、よく耳にするのがコーピング、もしくはストレスコーピングという言葉である。ストレスを感じた時に生じるストレス反応への対処法のことで、英語のCoping(訳:対処する)からきている。
ストレスコーピングとは、ストレスのもとに上手く対処すること。米国の心理学者リチャード・S・ラザルス(1922-2002年)が提唱した理論を基につくられた。
ストレスコーピングにはいくつか種類があり、1)問題焦点型コーピング、2)情動焦点型コーピング、3)ストレス解消型(発散型)コーピング、などが代表的なものとなっている。
1)問題焦点型コーピングはストレスの原因に働きかけ、解決させること。例えば苦手な相手がプロジェクトチームに参加してきた時、相手と話し合いの時間をもち、互いの理解を高めることで、問題解決につながり、ストレスを解消することができる。
2)情動焦点型コーピングはストレスへの考え方や感じ方を変えてしまうやり方である。信頼できる人の意見を聞いて、別の角度からの視点に気付かせてもらう。また、「今は自分が成長できる良いチャンスを迎えている」と考えて、ストレスを軽減させることができる。
3)ストレス解消型(発散型)コーピングはストレスを感じた後に、そのストレスを発散・解消させること。普段、ストレスコーピングと意識はしていなくても、温泉に行ったり、アロマテラピーやマッサージなどでストレス解消をしている人は多いはず。
コーピングは上記の代表的な3つ以外にもいろいろある。1つではなく、組み合わせるなどして、上手にストレスに対処したい。特にコーピングリストの作成は、効果的と言われている。