「難読人名」は案外多い?
「難読漢字が名前の人が届け出なかった場合」に関する措置は、今後変更が加えられる可能性もある。何かしらの理由で自分から行政手続きができない人もいるわけで、そのあたりの対応策は残念ながらまだ不透明な部分が多い。
たとえば、筆者の高校時代の先輩に「中嶋」という人がいた。これは何と読むのか? まぁ、彼を知らない人は「なかじま」と呼ぶだろう。しかしこの人の名は「なかしま」である。この中嶋先輩も、何もしなければ「なかじま」になってしまう可能性があるということだ。
こうしたことは、身近を振り返ると案外よくあるはずだ。NHKの連続テレビ小説『らんまん』に「日本語の表記を全てローマ字にする」という提案があったことが描写されている。それにはあまりに多様過ぎる漢字の読みの問題もあったはずで、言い換えれば明治の知識人も「この人名はどう読むのか?」で悩んでいたということだ。
では、なぜ今になってフリガナを戸籍に登録することが求められるようになったのか?
「他人の銀行口座」が紐付けられた原因
改正戸籍法は「行政のDX化と大きく関連する施策でもある」と上述したが、我々は銀行口座の名義をカタカナで表記している。しかし現状、戸籍にはフリガナという概念がないため「マイナンバーカードと紐付けした銀行口座は本当に本人のものか?」という照合作業を自動化できないのだ。
「マイナポータルを開いたらなぜか他人の銀行口座が紐付けられていた」という問題は、こういうチェック体制の不備にも原因がある。
だからこそのフリガナの義務化であるが、正直に書いてしまうと筆者は不安である。格闘技の全国大会に出場した時のように、「まさかず」とちゃんと書いたはずがなぜか「しんいち」とされてしまうミスも考えられるからだ。
このあたり、国や自治体がどのようなチェック体制を設けるかについてもまだ内容が固まっていない。
行政のDX化の「道筋」
行政のDX化は、まさに「システムの大改修」とも言うべき出来事でもある。
しかし現行法ではそれに対応し切れず、様々な不具合が発生している。「氏名の漢字とフリガナを照合させなければならない」という日本特有の現象を解決してこそ、行政のDX化の道筋がようやく見えてくる。
来年に向けて国がどのような具体的施策を打ち出すのか、今から注目する必要があるだろう。
【参考】
戸籍法等の改正に関する要綱案-法務省
https://www.moj.go.jp/shingi1/koseki20230202_00002.html
戸籍読み仮名、改正法成立 記載に一定基準 全国民が届け-産経新聞
https://www.sankei.com/article/20230602-RLHLZZSEGBO3RDHOA33UFB37NE/
取材・文/澤田真一