タッチ決済対応の人力車
VISAで現在進められている取り組みが「Tap to Phone」の普及である。
客のクレカをNFC対応スマホもしくはタブレットで読み取るという仕組みだ。これならば屋台のみならず、たとえば観光地の人力車もタッチ決済に対応できる。
次の登壇者は、Square株式会社ジャパンエグゼクティブディレクターの野村亮輔氏である。
Squareは9月から、日本の事業者向けに『Tap to Pay on Android』のサービスを開始した。これはAndroid 9以上、NFCチップ搭載のスマホを対象にしたもので、Squareの象徴でもあった従来型の小型端末を必要としない仕組みだ。
「観光人力車で有名な京都のえびす屋様が、すでにこの『Tap to Pay on Android』を導入しています」
人力車に大きな決済端末を持たせることは、まず不可能である。従来あった四角形の端末ですらもかさばってしまう。従って、スマホ1台で決済を完結できるシステムに対する強い要望があったのだ。
関連記事:SquareがAndroidスマホを決済端末として利用できる事業者向けサービス「Tap to Pay on Android」を提供開始
SquareがAndroidスマホを決済端末として利用できる事業者向けサービス「Tap to Pay on Android」を提供開始
Squareは、日本の事業者向けに、Androidスマホを決済端末として利用できる「Tap to Pay on Android」の提供を開始した。 「Tap t...
ビール売りのバイト
この『Tap to Pay on Android』の仕組みの説明を聞きつつ、筆者は昔のことを思い出していた。
10代の頃、筆者はとある総合格闘技の道場に通っていた。この時代、プロ修斗の選手を目指す若い練習生は大きな格闘技イベントでビール売りのバイトをよくしていた。プロ野球でもよく見る、背中に大きなタンクを背負うあの仕事だ。
このバイトにありつければ、タダどころか有給で試合観戦ができる。試合が盛り上がっている最中は誰もビールなど頼まないから、その間は世界一流の格闘家のパフォーマンスを間近で研究できるというわけだ。筆者自身はこの仕事に手を出さなかったが、道場の先輩から様々な話を聞かされた。
「ビール売りの仕事って、小銭落としたら本当に大変なんだよ」
今から20年以上前のことで、もちろんクレカ以外のキャッシュレス決済など存在しない。しかし、その苦労話もタッチ決済の普及で過去の笑い話になっていくだろう。
「タッチ決済非対応」の店は敬遠される?
キャッシュレス決済は、本質的に中小零細事業者の負担を軽減するコンセプトを含んだ仕組みである。
「小銭からの解放」という一点のみでも、そこに果てしない合理性の渦が発生していることは誰にでも想像できるはずだ。手間がかからず、手っ取り早く導入できるのがキャッシュレス決済のあるべき姿と言える。
そしてこれは筆者の邪推でもあるが、クレカ決済に対応しているにもかかわらずタッチ決済のできる端末を導入していない店舗は、そのせいで消費者から敬遠されてしまう……という現象も起こり得るのではないか。
タッチ決済対応端末自体が手軽なものになっているのだから、それすら導入を躊躇っている店には「なぜ、あの店ではタッチ決済ができないのか?」というネガティブな評判がついてしまう可能性もある。
だが、それも過去の話になっていくだろう。数年後は日本でも「クレカ決済=タッチ決済」という構図が常識になっているはずだ。
【参考】
Androidスマホでタッチ決済を受け付け可能に 「Tap to Pay on Android」提供開始-PR TIMES
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000067.000010583.html
取材・文/澤田真一