リクルートはSTEM領域(STEMはScience,Technology ,Engineering ,Mathematics ※)における女性エンジニアの転職動向について、転職支援サービス『リクルートエージェント』のデータを分析。その動向に関するリポートを発表したので、本稿ではその概要をお伝えしていく。
※ここでは具体的に電気、機械、化学、ITを示す
STEM領域への女性の転職者数はこの約10年で6.38倍と増加
女性転職者数は男性の2.94倍と比べても大きく増加しており、その背景には以下の理由が考えられる。
・ダイバーシティ経営(※)の加速により、女性活躍に力を入れる企業が増えた
※ 多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営
・労働市場の構造的な人材不足により企業が、新しいターゲットに間口を広げたことで、女性がより自分に合った企業に転職しやすくなったことなどがあると考えられる。
また、製造業に多く就業する電気・機械・化学の女性エンジニアの転職者数が7.61倍となっており、全業種やSTEM領域エンジニア全体と比較しても、増加の幅が大きい。
その背景には、「サステナビリティ」「GX」というビジネス上でも自然環境に配慮した動きを求める機運が高まるとともに、STEM領域でも女性の就学が多い傾向にある化学分野へのニーズが高まっており、企業が転職意向を高めるために働き方などの工夫をしていることなどが推察される。
調査結果解説
リクルート HR統括編集長 藤井 薫 氏
社会背景
ダイバーシティ経営の機運が高まる中で、政府は東証プライム市場に上場する企業を対象に女性役員の比率を2030年までに30%以上にする目標を設けるなど、より女性が活躍できる環境づくりを進めようとしています。STEM領域についても例外ではありませんが、日本は国際的に見て、STEM領域の女性比率が低いのが現状です。
転職動向
そのような中で、『リクルートエージェント』の転職者数の推移データを見ると、女性エンジニアの転職がこの約10年で6.38倍に増えていることがわかりました。
その背景には、人材不足や、女性の就学が多い傾向にある化学分野へのニーズの高まりなど社会の変化があります。加えて、多様性を大事にしている企業が、働き方やキャリア選択といったさまざまな面で、働く個人が思い描く生き方・働き方に寄り添うことを努力している姿も見えています。
今後の展望
女性エンジニアを増やしていくためには、女性一人ひとりが「学びたい」「働きたい」「働き続けたい(活躍したい)」という思いを持てるような社会や企業、育成環境の整備が求められます。
「女性は理系に向かない・苦手」という思い込みで選択肢を狭めないよう、社会的な障壁や固定観念を脱し、複線的なキャリアのイメージができるような「ロールモデル」を創出することが必要です。
学ぶの原義は、真似び。「あんなライフキャリアを真似てみたい」といった多様なロールの可視化こそが、「学び・働き・働き続けたい」といった内発的動機を触発します。マネジャー、エキスパート、クラフトマン、プロジェクトリーダー、ストーリーテラー、アドバイザー……。
管理職だけでない多様なロールモデルを示す。ライフステージごとに、仕事と暮らしの共振点をリデザインして活躍している先輩実例を示す。
そうしたイキイキと働く女性エンジニアのライフキャリアの解像度を上げることで、これから就学や就職を志す学生や転職を志す女性の皆さんの選択肢が広がり、希望につながるのではないでしょうか。
調査概要
調査方法/リクルートエージェントの求人データ、転職決定者
調査対象/リクルートエージェントの求人データ、リクルートエージェントを利用して転職した人
有効回答数/非公開
調査実施期間/2023年5月~2023年8月
調査機関/リクルート
関連情報
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20230926_hr_03.pdf
構成/清水眞希