ChatGPT、医師と同程度の正確性で救急患者を診断
医師は将来、救急外来患者の病気を迅速かつ正確に診断するために、ChatGPT(チャットGPT)などの人工知能(AI)プログラムの助けを借りるようになるかもしれない。
医師とChatGPTに同じ内容の臨床情報が提供された場合、ChatGPTが正確に診断する能力は医師と同程度であることがイェルーン・ボッシュ病院(オランダ)のSteef Kurstjens氏らによる研究で示された。この研究結果は欧州救急医学会(EUSEM 2023、2023年9月16~20日、スペイン・バルセロナ)で発表されるとともに、「Annals of Emergency Medicine」に2023年9月9日掲載された。
この研究では、2人の医師チームとAIプログラムが2022年3月に同病院の救急外来を受診した30人の患者の診療記録や検査値を評価した。
研究に用いられたAIプログラムは無料版と有料版のChatGPTだった。医師チームとChatGPTは、与えられた情報を基に、それぞれの患者で考えられる疾患をリストアップした。これらは過去の症例であるため、研究グループは実際の診断名を把握していた。
その結果、リストアップされた上位5つの疾患の中に実際の診断名が含まれていた確率は、医師チームで87%、無料版ChatGPTで97%、有料版ChatGPTで87%であった。
Kurstjens氏は、「最終的には、医師とChatGPTの診断精度は同程度だった。つまりAIは、救急外来での診断プロセスを迅速化し、診断可能な患者数を増加させるのに役立つ可能性があるということだ」と説明している。
また、今回の研究結果を踏まえ、今後はAIを救急部門での実際の診療に活用した場合の影響について評価するための臨床試験の実施が必要だと指摘している。
Kurstjens氏が今回の研究テーマを思いついたのは、複雑な健康問題を抱えている患者の診断が難しいと医師たちが話しているのを聞いたことがきっかけだった。
同氏は、「私がある患者の訴えと服用中の薬剤の情報をChatGPTに入力したところ、すぐに正確な診断名が出てきた。しかも、ChatGPTはその疾患の原因として、患者が服用していた2種類の薬剤の相互作用を挙げていた」と言う。
医師は、すでに統計プログラムやスクリーニング目的の検査結果のスコアリングシステムなど、さまざまな形のコンピューターソフトウェアによる支援を受けているが、AIも似たような役割を果たすことになるのではないかとKurstjens氏は予測。「AIが、医師の診断精度の向上や診断の迅速化を助ける新たなツールとなる可能性はあるはずだ」と話している。
米救急医学レジデント協会(Emergency Medicine Residents’ Association;EMRA)会長のJessica Adkins Murphy氏は、Kurstjens氏らの研究結果が、救急外来での診療がAIの導入により向上する可能性を示していることに同意する。
その一方で、複数の健康問題を抱え、複雑な既往歴を持つ患者も多いため、ChatGPTのようなAIプログラムには分析が難しい場合もあり得ることを指摘。また、心筋梗塞を原因とする腹痛など、深刻な疾患によって思いがけない症状が発生する場合も多いと付け加えている。
Kurstjens氏とMurphy氏はいずれも、AIを使用して医師の事務作業を減らすことが短期的にはAIのベストな活用法であるとの見方を示している。
Murphy氏は、「現時点ですぐにでも診療に活用できるAIの能力は、医師の業務の中で特に面倒なカルテ入力や記録作成などだろう。例えば現在、医師と患者の会話を聞きながら患者の既往歴や診察などを記録するAIアプリも存在する」と話す。
また、こうしたAIアプリでは可能性のある診断名を導き出すこともできるが、Murphy氏の同僚たちによると、AIがカルテの記録から導き出した診断には追加や削除が必ず必要な状況であるという。
Murphy氏は「実際に、われわれがこの種の業務にかける時間は減っているため、業務を効率化して診察できる患者の数を増やすAIの能力についてはかなり楽観視している。それでも、AIは複雑な症例に対する医師の判断の代わりにはならない」と話している。(HealthDay News 2023年9月18日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.annemergmed.com/article/S0196-0644(23)00642-X/fulltext
構成/DIME編集部