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老人ホームで最後を迎える人々に寄り添う看取りの犬・文福の日常

2023.09.30PR

老人ホームで最期の時を迎える老人たちのベッドに寄り添い、身体を擦こすりつけ、顔を舐なめ、そして傍らで静かに、おくる。一緒に暮らして最期のときまで寄り添う犬猫たち。

『盲導犬クイールの一生』の著者・石黒謙吾氏が死を看取る犬・猫たちと人間との絆を描いた『犬が看取り、猫がおくる、しあわせのホーム』(光文社)より一部抜粋し、神奈川県・横須賀市にある特別養護老人ホーム「さくらの里 山科」とそこで一緒に暮らして最期のときまで寄り添う犬猫たちのエピソードを紹介していく。

看取りの犬・文福の日常は癒やしの犬として生きる

 この本の最初には、やはり「文福」のことを記さねばならないだろう。なぜならば、まず彼はこのホームの一期生として10年以上過ごしてきたベテランであり、これまで数々の逸話を残しメディアに登場してきた広報部長なのだから。加えて、僕がここを知ったのも、文福の看取り行動を扱ったテレビ番組だったわけなので。

 2022年9月29日、僕は初めて「さくらの里 山科」(以下「さくらの里」)の若山施設長のもとを訪れた。軽く話をしたあと、まずは文福にあいさつだと、犬たちが入居者と一緒に暮らす犬ユニットに案内して頂く。前に立つ若山施設長が入り口のドアを開けた時、廊下の向こう7メートルほどのリビングルームに「伏せ」の姿勢でいた文福が、4本の脚ですっと立ち上がる。そして、遠慮がちに室内を覗き込む僕から一瞬も目を逸らすことなく、キッと見据えてきた。

 文福のうしろには、車椅子に座りテーブルに向かってやすらぐ老人たち。文福はそんな〝家族〞を背に、不審な者が侵入してこないか見張っているのだ。こうして、1日のかなりの時間を、入り口のほうを見て過ごしているのだという。

 このホームでは、犬と猫がそれぞれ2つのユニットに暮らしている。犬猫は別棟になっていて合わせて4ユニット。1つのユニットの入居者は10人で、犬か猫は5匹まで。つまり、定員としては、人が40人、犬が10匹、猫が10匹。合計60のいのちが、心を通わせている。

 部屋に入る僕に用心深く近づいてくる文福。若山さんのうしろをついていったから、少しは警戒心を緩めているのだろう。見上げて匂いを嗅いでくる。僕は腰を落とし、にこやかに「こんちはー、文ちゃん。はじめましてー」と話しかけ、手の甲を鼻先へと控えめに近づける。数秒で、文福の尻尾がゆらりと動く。どうやら、不審者ではないと認めてもらえたようだ。まずは一次面接通過、ほっ。

 犬や猫がいるのは、入居者の個室内かリビングのどちらか。一緒に入ってきた入居者の部屋に籠もっている犬猫もいるが、文福は、日中はリビングで多くの時間を過ごす。そして、見張りをしながら、老人たちにかわいがってもらう。

 自分からも人の足元に寄り添い、尻尾を振り、膝に乗り、顔を舐め、みんなに愛情をたっぷり振りまく。特別な看取りのエピソードで知られるようになった文福だけど、日常のほとんどはこうした時間の中で、老人たちにとってかけがえのない存在、癒やしの犬となっている。

人の死期を感知できる「看取りの犬」文福。保健所から救い出されてこのホームに。

「犬が看取り、猫がおくる、しあわせのホーム」
石黒謙吾(著) 光文社

【特報】9/25 オンエア、10月2日(月) 午後2:30 〜 午後3:00に再放送あり!
NHK「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」

文/石黒謙吾

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