立地や現在のライフスタイルに合った住まいへと意識が変化
――メリットは多いですね!狭小住宅に対する意識も変化しているようです。
森下さん まず、狭小住宅を選択する大半は、30代から40代の夫婦は共働きのDinksから3人家族です。
以前の様な、将来にわたっての「終の棲家」として住宅を取得するよりも、駅距離、通勤や通学に利便性、教育環境、町(例えば商店街)の雰囲気を重視した「立地」や、自分達の「現在のライフスタイル」に合った住まいとして狭小住宅を選択しているように思います。
代表的な6つのメリットと3つのデメリット
――なるほど!もう少し、狭小住宅のメリット・デメリットについて教えてください。
森下さん 前述した、注目されている理由とも重なりますが、
1)立地が良く、利便性が良い
2)各部屋は狭く、自然と家族はリビングに集まるため、コニュ二ケーションも増える
3)建物は小さくても耐震性、断熱性、気密性など住宅性能は通常の住宅と変わらない
4)駅から近いため、駐車場が不要。建物が狭いので、冷暖房などの光熱費も節約できて、固定費が掛かりにくい
5)集合住宅と異なり、家族の騒音、振動などで気に病む必要がない、また自由にDIYができる
6)家族構成が変わるなどライフスタイルの変化に依って、賃貸運用や売却がしやすい
こうした点は狭小住宅のメリットです。
逆にデメリットですが、
1)家族構成が急に変わると、部屋を増やせないため、売却する。部屋を増やすためにリフォームが必要となるといったケースが多い
2)隣の建物との間が狭いことが多く、外壁や屋根のメンテナンス時に隣地に足場などの資材が出るなど、メンテナンスがしにくい
3)設計に依っては採光、通風が悪く、湿気が溜まりやすく衛生上問題が出る場合がある
という3点です。
こうしたデメリットもあるということはぜひ、知っておいていただきたいと思います。
コトブキホームビルダー社による螺旋階段のついた狭小住宅の二階部分
資産価値が上がった都心6区の狭小住宅
――実際に森下さんが担当した 30 坪以下の住宅の事例があれば教えてください。
森下さん 今では希少ですが都心6区にて土地50㎡の狭小地の狭小住宅の相談を受けました。法規的には層3階を建てることができる土地で、北道路(4m)、その先は高層マンション、それ以外の3方は同じく住宅が近接している土地でした。オーナーは共働きのご夫婦、小学校、幼稚園のお子様4名のご家族でした。
ご要望は「採光が取れ、収納豊富で耐震性の高い住まい」ということで、私の今までの設計経験を活かし、1)北側でも天窓や吹き抜けを利用した明るいリビング、2)スキップフロアや勾配天井を利用して、収納率は高く、明るい居室、を実現しました。
・家族が長い時間を共有できるスタディコーナーや対面キッチンを取り入れたLDK
・耐震等級3を確保するとともに、制震装置を盛り込んだ構造体
などオーナー様の要望はしっかりと盛り込み、どこにも無駄が無い住まいを企画しました。
建築してから8年程経ちますが、家族のライフスタイルも変わらず、今でも完成した住まいのままご利用されていて、ご主人とはよく飲みにいく関係です(笑)。
現在では購入時よりも土地値段は各段に上がっており、資産性の高い物件になっています。